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エビデンスとは
現行の医療では「この治療がプラセボとくらべて効果がある」「この治療が他の治療より効果がある」という文脈で語られがちの「エビデンス」、つまりカナダのゴードン・ガイアットが提唱した「現時点でもっとも信頼のおける科学的根拠に基づいて診療する」という色彩が強いですが、ページ後半に述べるアーチーボール ド・コクラン氏の当初の発想を忘れてはならないと考えてえます。
「実はカイロプラクターができる事って大したことではないかも知れない」という発想も忘れずに記述していきたいと思います。
カイロプラクティックは「背骨を快適にすると最大限人間の回復力が発揮される」という発想の医療体系です。薬を使わず人の手で人間を診るカイロプラクティックは多くの方にとって魅力的ですが、幻想を捨てることも大切です。
ただし「カイロプラクティックとはなにか?」を考えた場合、そもそもがヘルスケアの専門職である為、何かを治すため(cure)に仕事をしている訳ではないこともお伝えする必要があります。
「病人をケアする」という立ち位置です。そのような意味においてはエビデンスを考える必要はないのかもしれませんが、何事においても数字を求められる社会ですし、代替医療といえども医療の一部であるがゆえに、判り得る数値を説明してきます。
脊椎マニピュレーションかカイロケア全体か
そして多く場合、この数値はカイロプラクティック・ケアにおける施術の一つ(主要な施術ではありますが)の’’脊椎マニピュレーション’’の効果単体について語られている事も皆様に留意しておいて頂きたい事です。つまりカイロプラクティックという代替医療の思想は「人の治癒力を引き出すために脊椎マニピュレーションだけを行っている訳ではないのですが、背骨ポキポキだけが科学的評価対象とされやすい」ということです。
問診から始まり、検査、筋肉操作や心理的介入、リハビリテーションなどいろいろな事をケアの手段で用いており、しかも治療院によってそのスタンスはさまざま」ということです。
そうは言っても始まりませんので、エビデンス書いていきます。
サブラクセーションをどう考える
当院ではエビデンス・ベースの立ち場からカイロプラクティックの特徴である「サブラクセーションの除去」という意味では広義の意味でのサブラクセーション、つまり「環境への適応障害」という意味で拘りを持って対応しています。
理由は狭義でのサブラクセーション、つまり「背骨の分節間における、解剖学的、生体力学的 神経生理学的の変調」には今の所はっきりとしたエビデンスが確立されていないからです。
勿論脊椎マニピュレーションを行う指標の一つには狭義のサブラクセーションの考え方を取り入れて施術を行っていますが、質の高いエビデンスは無いということは患者さんにもお伝えしています。
医学教育の基礎を築いたウイリアム・オスラーの「医療はサイエンスに支えられたアートである」という言葉を残しています。
どちらに傾くこともなく、常にサイエンス(エビデンス)とアート(患者の状況・患者の価値観・治療者の技量)のバランスをとることが大切です。
カイロプラクティックは更に「哲学」の要素が加わっています。
以下は各種症状への脊椎マニピュレーションなど代替医療としてのカイロプラクティックの効果を解説しているページです。
2023年の最新のコクランレビューの解説です。真面目に腰痛問題を解決したい方はご参考ください。
腰痛の固定観念を捨てたい方にはお勧めのブログ記事
カイロプラクティックを初めて利用する方は寝不足の方が多いです。
日本の整形外科学会も海外に10年以上遅れてストレスが腰痛に大きく関与していると発表。
腰痛予防にエビデンスと臨床経験から言えることをblogで説明。
器質的異常状態
手術と保存療法の比較研究をあれこれ書いています。
ヘルニア
過去に手術をした方、診断を受けて困っている方はお読みください。
パラダイムシフトが必要なのが良くわかるブログ記事です。理解できないと回復は難しいです。
首まわり
首の痛みは腰痛に次いで多い訴えです。カイロプラクティックケアが随分救けになります。
考えてみれば当たり前のことですがマーケッティング用語であることが解るページです。
頭
顎関節症も筋骨格系の問題で起きているケースがほとんどです。
精神関連
背中の症状はさまざまな疾患とも関連しています。まだまだこれからの研究分野ですがカイロプラクティックが元々訴えていたコンセプトに近づく道標だと私は考えてます。
鬱、不安
肩
西洋医療も含めたベストの方法論が書かれています。
痺れ
その他
blog記事です。膝の手術を考えているかたの参考になれば
EBMのはじまり
EBM(evidenced based medicine=証拠、根拠に基づく医療)という発想を作った父といえるのは、イギリス人疫学者、アーチーボール ド・コクランです。
かの有名なEBMデータベースであるコクラン・ライブラリー(chochrane)は彼の名を継いでいます。この考え方はコクラン医師の第二次世界大戦での経験が色濃く反映している。
コクラン先生は大戦中、二万人の捕虜キャンプで唯一の医者という経験をしました。戦争中ですから充分な食糧もなく、負傷した兵士が摂取できる栄養は1日に600k㌍、感染症は蔓延しているが、薬はないというそれは酷い状況でした。
そのような状況であったため、コクラン先生は「医者としてできることはほとんどないので、何百人もの死を覚悟した」そうです。
しかし結局キャンプが解散した時に、四人が亡くなっただけ。うち三人は銃撃で亡くなっており、病気で亡くなったのは一人だけでした。
コクラン先生はこの結果に大変驚き、こう考えます。
「自分は医者で、医者としてできることはほとんどない、と思っていたのにこのような結果となった。実は、医療ができることってたいしたことではないのかもしれない」。
「医療は重要だけれども、人間の回復していく力とくらべると、実はたいしたことはないのかもしれない。」
医療介入というのは本当に科学的根拠 があって、どうしてもやらなければならない時だけにするようにしないと人間の回復していく力を妨げてしまうだろうとコクラン先生は考えたのです。
現行の医療はすごいインフレ状態だとコクランさんは考えました。(身体知―カラダをちゃんと使うと幸せがやってくる 内田樹、三砂ちづる著より抜萃 講談社+α文庫)
生き死にがかかった状況とそうでない状況の’’医療’’の意味合いも変わってくるので一概には言えないところではありますが、重要な指摘だと思います。そしてカイロプラクティックの原点である「人間には回復力がある」という部分にも通じる考え方です。