頚部の神経根症状≒いわゆる腕の痺れ(Cervical radiculopathy )は比較的一般的な神経学的障害であり、これはしばしば椎間板などによる圧迫が原因とされています。
カイロプラクティックで腕の痺れのケアを考えている方の参考になれば幸いです。
目次
8週目までは保存療法
先ずは罹患率
実際どれくらいの割合の方が
頸部神経根障害の年間発生率は10万人あたり83・2人であり、一般人口の50年間で罹患率は増加しています。
Boyles R, Toy P, Mellon J Jr, Hayes M, Hammer B. Effectiveness of manual physical therapy in the treatment of cervical radiculopathy: a systematic review. J Man Manip Ther. 2011 Aug;19(3):135-42. doi: 10.1179/2042618611Y.0000000011. PMID: 22851876; PMCID: PMC3143012.
基本的に腕の症状が出てから最低でも6週間は保存療法(非手術)を進めることで世界的なコンセンサスが得られています。75%〜90%の患者が非手術的ケアで症状の改善を達成していることが報告されています。
Woods BI, Hilibrand AS. Cervical radiculopathy: epidemiology, etiology, diagnosis, and treatment. J Spinal Disord Tech. 2015 Jun;28(5):E251-9. doi: 10.1097/BSD.0000000000000284. PMID: 25985461.
頚部の神経根症状は50 ~ 54 歳の人に最も多く見られる。深部腱反射、特に上腕三頭筋の反射の低下は、最も一般的な神経学的所見です。
診断を確定するには、スパーリング テスト、肩外転テスト、上肢張力テストを使用できる。
4~6週間の治療後にレッドフラッグ症状または症状が持続する患者の場合、磁気共鳴画像法により、硬膜外ステロイド注射や手術が可能な病理を特定できる。
4~8週間の非手術での治療後に改善が見られない場合は、外科的処置または硬膜外ステロイド注射を検討する必要がある。
しかし、上肢の末梢神経障害が代替診断となる可能性が高い場合には臨床的に有用です。患者は、治療の種類に関係なく、ほとんどのケースは解決するので安心してください。
手術以外の治療には、筋力強化、ストレッチ、牽引などの理学療法のほか、非ステロイド性抗炎症薬、筋弛緩薬、マッサージなど が含まれます。
Childress MA, Becker BA. Nonoperative Management of Cervical Radiculopathy. Am Fam Physician. 2016 May 1;93(9):746-54. PMID: 27175952.
カイロプラクティックの、質の高い科学的根拠
2016年のシステマティックレビューになります。システマティックレビューは研究の中でも一番信頼度が高い研究となります。
この論文は世界中のデータベースにある頚椎神経根症状への※脊椎マニピュレーションの比較対象試験を専門家2人が批判的に吟味して結論を出しています。
結果:腕の痺れ(頸部神経根症)の人々の治療における、頚椎マニピュレーション(頸椎矯正)の即時の有効性を支持する中程度のレベルの証拠があると結論しました。
Zhu L, Wei X, Wang S. Does cervical spine manipulation reduce pain in people with degenerative cervical radiculopathy? A systematic review of the evidence, and a meta-analysis. Clin Rehabil. 2016 Feb;30(2):145-55. doi: 10.1177/0269215515570382. Epub 2015 Feb 13. PMID: 25681406.
※脊椎マニピュレーションはカイロプラクティック治療の醍醐味である、背骨や骨盤の矯正を意味します。
少し解説をすると、中等度レベルの証拠とは絶対的ではないけれどもある程度効果がある、ということです。つまり効果が全くなかったり、あまり効果がない人も居るということです。
体系的レビューです。信頼度の一番高い研究となります。
また即時効果はある、ということですので、中期的、長期的には不明ということです。
これは腰痛などへのマニピュレーションも同じなのですが、痛みによっては脳が無意識に痛みをつくり出しているケースも多く、脊椎マニピュレーションが絶対的ではないのは、受けての状態にもよるところが大きいと考えられています。
具体的には抑うつ気分や不安感が強すぎる方は、効果が出づらいと言われています。それらの検査も必要な場合は行う必要があります。不安や抑うつ気分が陽性の場合は、その不安や抑うつ気分を鎮めることが第一の治療目標となります。(現実的には不安と痛みは同時に減ってくることが多いです。)
徒手療法、運動、行動変容のアプローチに潜在的な利点
首と腕の痛み(神経根障害を含む)の治療に関する証拠は乏しいものの、頸肩腕痛への手術以外での治療に関する最近のレビューでは、痛みに対する治療の有効性について決定的ではないもののある程度の証拠を発見した。
徒手療法、運動、行動変容のアプローチに潜在的な利点があります。機能アップ治療の影響はさまざまなので、頸肩腕痛患者がどのサブグループがより良い反応するかを研究で調査することを推奨する。
神経の機械過敏性 が頸肩腕痛に関与していると仮定されている。
この研究では、頸肩腕痛と神経機械過敏症のある集団に対する神経動員の影響が調査されます。臨床的推論は、頸肩腕痛患者の神経構造を標的にすることが有益である可能性がある。
Basson CA, Stewart A, Mudzi W. The effect of neural mobilisation on cervico-brachial pain: design of a randomised controlled trial. BMC Musculoskelet Disord. 2014 Dec 10;15:419. doi: 10.1186/1471-2474-15-419. PMID: 25492697; PMCID: PMC4295331.
この研究では神経構造そのものの徒手操作が効果がある可能性があるが、どのタイプの患者に有効かをさらに研究する必要があるとしている。