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脊柱管狭窄症の手術を考えよう

脊柱管狭窄症は年齢を重ねると好発する、よくみられる状態です。みなさまの中には手術をするか判断するための基準が知りたい方もいらっしゃると思います。狭窄症が一番よくみられる年齢は60歳台または70歳台です。
患者はしばしば、立ったり歩いたりすると悪化する足の痛み、けいれん、脱力感を持っています。

この時期は2021年に加筆修正しています。10年前のデータと変化してきているものもあるので、整理しつつ、カイロプラクティックの仕事で得た経験を踏まえて解説していきます。

目次

脊柱管狭窄症の手術は必要か?考えてみよう

まず2010年頃のデータです。この頃ですと医療機関で手術を勧められている方も多いようです。
ネット情報を探せるのは若い世代です。親戚家族にそのような方がいたら、セカンドオピニオンとして情報提供してあげると良いでしょう。

エビデンスレベル
上へいくほど質の高い研究

‎2010年頃までは、充分な根拠のないまま、手術件数はうなぎ昇り

狭窄症への手術の根拠は実はないのです

65歳以上の脊柱管狭窄症による手術件数は1979年~1992年にかけて8倍に増加しており、地域によって5倍の差が生じている。
手術成績に関する十分な情報がないまま生死にかかわる治療を選択せざるを得ない状況は好ましくない。(J Am Geriatr Soc. 1996 Mar)

手術の有効性は証明できていなかった2000年まで

脊柱管狭窄症への減圧椎弓切除術に関する論文74件を厳密に検討した結果、優または良と評価できたのは平均64%だったが、論文によっては26%~100%もの開きがあり、研究デザインにも不備が多いためその有効性は証明できない
(1992 Jan.Turner JA, Ersek M et al)

長いスパンでみると手術が得策だとは言い切れない理由

いまは無いと思いますが、椎弓切除術という方法があります。この方法は特におススメできません。もしお医者様に何らかの理由でこの方法を勧められるようでしたら、やめておいたほうが良さそうです。

脊柱管狭窄症の自然経過は比較的良好です。脊柱管狭窄症と診断された腰下肢痛患者88名を対象に減圧椎弓切除術の成績を6年間追跡した結果、1年後の改善率は89%だったが6年後には57%に低下し17%は再手術を受けていたことから、これまで報告されていた成績よ

(1991 Jul.Katz JN, Lipson SJ, Larson MG et al)

椎弓切除手術を受けた場合の予後(10年後)

腰部脊柱管狭窄症による椎弓切除術を受けた患者88名を約10年間追跡調査した結果、75%が手術の結果に満足していたものの、23%が再手術を受け、33%が重度の腰痛を訴え、53%が2ブロック程度の距離も歩けないことが判明。

Katz JN, Lipson SJ, Chang LC, Levine SA, Fossel AH, Liang MH. Seven- to 10-year outcome of decompressive surgery for degenerative lumbar spinal stenosis. Spine (Phila Pa 1976). 1996 Jan 1;21(1):92-8. doi: 10.1097/00007632-199601010-00022. PMID: 9122770.

1991年と20年前の研究で、なおかつ椎弓切除術という背骨を切り取る手術なので、ちょっと古いやり方です。最近だと小さな穴をあけてドリルで穴を開ける手術なので手術成績も変わってきていると思います。

6年後には改善率57%になる減圧椎弓切除術

減圧椎弓切除術の術後を追跡すると、年数が経過するにつれて改善率は下がるようです。

言い換えると、手術の後は凄く改善したと感じるが、月日が経つとそうでもなくなると言えます。

脊柱管狭窄症と診断された腰下肢痛患者88名を対象に減圧椎弓切除術の成績を6年間追跡した結果
1年後の改善率は89%だったが6年後には57%に低下し17%は再手術を受けていたことから、これまで報告されていた成績より悪い。

脊柱管狭窄症の自然経過は比較的良好で、馬尾症候群の疑いがなければ手術を遅らせても問題ないことが明らかになっています。手術を決断する際、必ずしも全例が完治するわけではないことを知っておくべきです。長い目で見ると、手術はそれほど有益ではないようです。

脊柱管狭窄症はよく病態を表すことばで、文字通り脊柱管が狭くなっているという状態を表す言葉ではないと言われます。やむを得ない場合を除いて、手術という方法よりは、運動療法を中心に考えられた方が長い目で見た場合得策であはないでしょうか。

大掛かりな手術が良くないことは間違いなさそう

背中を開いて、この背骨をドリルで削って縫い合わせるわけですから身体に良いわけありません。インストゥルメンテーション手術(金属のネジとプレートを使用)によって固定力を向上させても、それが臨床転帰(治療成績)の改善に繋がらないことを明らかにした国際腰椎学会でボルボ賞を受賞した研究です。

脊柱管狭窄を伴う変性辷り症患者76名を対象に、器具固定群骨移植固定群の術後成績を2年間追跡したRCTによると、器具固定によって骨癒合率の向上は認められるものの、それが必ずしも臨床症状の改善に結びつかないことが判明

(1997 Dec,Fischgrund JS, Mackay M et al)

ご覧頂きましたように、脊柱管狭窄症の診断が出ていて手術を勧められている場合は、いろいろと考えて手術を選択する必要があります。エビデンスが示すものは必ずしも賢い選択ではないということです。

高齢者の狭窄症は

脊柱管狭窄のある高齢者であっても、日常生活に支障がなければ保存療法による管理が可能であり、症状が現れてから3ヶ月間は外科手術を考えるべきではない(確証度D)

脊柱管狭窄症に対する手術と保存療法のランダム化比較試験は存在しませんが、その症状は時間の経過に伴いまったく変わらないか、徐々に悪化するか、徐々に改善するかのいずれかです。

 

このあたり、2016年のシステマティックレビューで下肢症状がある場合

腰部脊柱管狭窄症の管理
腰部脊柱管狭窄症は、腰痛の有無にかかわらず、臀部または下肢の痛みの臨床症候群です。これは、腰椎の神経と血管スペースの減少に関連しています。
この状態は、立ったり、歩いたり、腰を伸ばしたりすることで悪化し、前屈、座り、または横臥によって緩和されることがよくあります。
腰部脊柱管狭窄症の臨床ケアと研究は、状態の不均一性、診断と研究への包含のための標準的な基準の欠如、および完全に症状がないけど、画像検査で狭窄箇所がある高齢者がかなりの率いること複雑になっています。
手術以外の理オプションには、薬物、理学療法、脊椎注射、ライフスタイルの変更、および学際的なリハビリテーションが含まれます。しかし、保守的な管理を検討した高品質のランダム化試験はほとんどありません。系統的レビューは、特定の種類の非外科的治療を推奨するには証拠が不十分であると結論付けました。
非手術療法で改善しない患者を治療するために、いくつかの異なる外科的処置が使用されます。
急速な悪化はまれであり、症状はしばしば衰弱するか徐々に改善することを考えると、手術はほとんど常に選択的であり、侵襲性の低い介入の試行にもかかわらず十分に厄介な症状が続く場合にのみ考慮されます。
脚の痛みと障害は、非手術的治療よりも手術の方が良いようです。

この作業は、NIAMS(P60-AR048094およびP60-AR062799)によって資金提供されています

Ciol MA, Deyo RA, Howell E, Kreif S. An assessment of surgery for spinal stenosis: time trends, geographic variations, complications, and reoperations. J Am Geriatr Soc. 1996 Mar;44(3):285-90. doi: 10.1111/j.1532-5415.1996.tb00915.x. PMID: 8600197.

この2016年のレビューでは過去の手術成績に関するデータが乏しいことから、手術以外が基本推奨されていたが、非手術による脊柱管狭窄症管理のデータも充分ではないから、良くならない時のみ、手術を検討しましょう。ということです。あたり前かもしれませんが、大事なことです。
ただヘルニア手術に関する会社から資金提供されていることも注意。

2017年のレビューでは

先述の椎弓切除術とX-stopという椎弓を固定して、背骨のあなを広げっぱなしにする器具固定と、非手術群の差をレポート。興味深いです。

腰部脊柱管狭窄症に対する手術と保存的治療の有効性:システムレビューとランダム化比較試験のメタアナリシス
腰部脊柱管狭窄症は機能と生活の質に影響を与える一般的な変性疾患で、手術と保存的治療の両方で治療できます。この研究は手術と保存的治療の有効性を比較した。

9件のRCT(14件の記事)と1658人の患者が含まれ、そのうち3件は質の高い研究だった。
①治療後最初の6か月では、2つの治療グループ間でODIスコアに有意差はありません
②手術グループは1年と2年で有意に高いODIスコア
③2つの研究では、3か月、6か月、12か月、24か月の時点で身体機能は椎弓切除術と保存療法の間に有意差はない
④2つの研究では患者が6時に移植されたX-STOPに満足していると報告
⑤数週間、6か月、1年。手術群と非手術群の間で、手術中または72時間以内の有害事象の統計的差異はありません
⑥サブグループ分析では、椎弓切除術と保存的治療、X-STOPと保存的治療の間に期間の初期段階で安全性の違いはないがフォローアップ期間中、手術群は非手術群よりも合併症の発生率が高

手術群は、治療後の最初の6か月で保存群と比較して有意差はなかったものの、1年後のより良い状況と2年間ではより高い合併症率を示しました。
しかし、腰部脊柱管狭窄症患者に決定的な方法がしっかりと推奨されるという証拠はありませんでした。高品質で信頼できる結果を達成するには、さらなる研究が必要

Ma XL, Zhao XW, Ma JX, Li F, Wang Y, Lu B. Effectiveness of surgery versus conservative treatment for lumbar spinal stenosis: A system review and meta-analysis of randomized controlled trials. Int J Surg. 2017 Aug;44:329-338. doi: 10.1016/j.ijsu.2017.07.032. Epub 2017 Jul 10. PMID: 28705591.

2年の追跡なので、先述の論文に比べると追跡期間が短いです。これが6年後10年後になると、悪化する可能性は充分にあります、なぜならページ上の論文でも1年後の改善率は89%と良好だったから。
あとX-stopなるものも器具固定の登録商標で、いくつか違う製品があるみたいです。
この研究は利益相反はありません。

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