この記事を書いているカイロプラクターの私自身が咳症状が約3か月続いた経験からエビデンスを含め書いています。
読者の中には自然療法が好きで、カイロプラクティックや針治療など薬物治療以外の選択枝がどれくらい役にたつのか気になると思います。情報提供も含め代替医療に何ができるのか明確にして、喘息で苦しんでいる方の力になればと思います。
小児喘息の研究:代替医療のみ失敗リスク2倍
モントリオール大学で2010年の研究ですが、2000人の子供を対象にした8年間のアンケート調査です。
殆どが6歳以下で全体の13%が代替医療を続けていたようです。
Alternative therapies may leave asthmatics gasping 30-Nov-2010
針治療やホメオパシーも含め、カイロプラクティックのような補完代替医療だけを用いている小児喘息は、用いてないグループに比べると喘息コントロールに失敗している率が2倍になるようです。
喘息を管理する目的の為にカイロプラクティックだけで出来なくはないようなのですが、小児の場合失敗するリスクが2倍になるようです。
喘息 カイロだけで管理は西洋医療に干渉する恐れ
今のところ補完代替医療は喘息に効果があるとのエビデンスはないです。上記の論文では一般的な西洋医学の治療に干渉する可能性を問題視しています。
この研究はアンケートによるものなので、信ぴょう性においては信頼できない可能性は残される。
またアジア系が多いのは伝統的に針治療を用いることが多いから研究で干渉の指摘があるのだと考えられます。
さて、成人の喘息と小児喘息の違いはあるものの、今のところカイロプラクティック治療が喘息に効果があるという質の高いエビデンスはありません。
実際のところカイロプラクティック治療単体では喘息に効果がないというものの、プライマリヘルスケアの立場から何ができるのかを回りくどく提言してみます。(ゴッドハンドで治せると豪語するカイロプラクターが居るかもしれませんが)
豪州カイロプラクティックボードはエビデンス無し明言
日本のカイロプラクター(DCを含む)のウェブサイトを見ると、喘息への効能をうたっているサイトも少なくない。法制化されていない国なので仕方ないレベルなのかもしれないが、オセアニアの既法制化国でもカイロプラクティックの喘息への効用が誇大広告になっていることが懸念されている。
法制化されているオーストラリアやニュージーランドでは喘息治療高レベルのエビデンスが無いにもかかわらず喘息への効能への謳った誤解を招くカイロプラクティック広告があるとして懸念されている。
研究結果からすると、最大呼気量は増えるが1秒強制呼気量には変化がないと広告する必要があるかもしれません。
喘息にカイロを含めた代替医療に何ができるのか?提案
いづれにせよカイロプラクティックが目指しているのは、もう少し包括的な部分での健康や現代医療への提言だとおもいます。もともとカイロプラクティックは症状を治しているわけではない、という立場だからです。
このことはスイスが2016年にエビデンスが無いということで世界中で批判が殺到しているホメオパシーを医師に限り用いることができるように国民が選んだ、という方向性と同じことだ思います。スイス国民の2/3がホメオパシーの保険適応を希望したというのです。
ちなみにホメオパシーは2015年にオーストラリアの研究でほぼプラシーボであることが証明されています。
国立健康医学研究評議会(NHMRC)がこの代替「医薬品」ホメオパシーのレメディーの有効性を調べた1800の論文を評価した結果を発表。
対象とした研究のレビュー対象になった上質の研究は225だった。
結論として頭痛や喘息、不安、注意欠陥疾患、潰瘍などの病気を治療する効果はプラセボと同じだった。
NHMRCの会長であるWarwick Anderson教授は、医学的治療や介入は信頼できる根拠に基づくべきである、と述べている。このレビューはホメオパシーがプラセボより効果があるという主張には質の高い根拠がないことを示す。ホメオパシーを選択する人々は、安全性と有効性についての良い根拠がある治療法を拒否または遅らせるリスクを負う。
スイス国民が感情的な判断をしたのか?理由は判りませんが興味深い結果です。一つ言えることはホメオパスは患者に寄り添って話を聞いてくれる存在であることです。
以上のことから、代替医療は西洋医療で達成されづらい「寄り添ってケアをしてもらう」というスタンスでご利用されるのが一番良いのではないかと思います。
日本でも統合医療学会が開かれていますが、欧米では10年ほど前からどっちが優れているという議論はナンセンスで患者さんの状態や信念などを考慮して最適だと思われる医療を提供する「統合医療」という枠組みの重要性が説かれています。
アレルギー・喘息の分野からも2014年の1月に患者さんの為に統合医療による喘息ケアの必要性が説明されている。
従来の治療は効果的ではあるが、患者さんは喘息をコントロールする上で、従来型の治療で欠如している部分を補完代替医療で求める。
それは対話であったり、メディケーションのコスト(アメリカの医療制度)であったり。効能であったり、代替医療の副作用のないモデルを知りたかったりとさまざまです。
興味深いのは統合医療のビルの中で代替医療を行う施設が増えていて、時従来の治療と競合するようになってきていること。
補完代替医療は身体医療、マニピュレーションによるもの、心理的介入によるものなどいろいろある。患者の信念体系を取り入れ患者ケアへのアプローチが強い患者開業医の関係を構築するために重要です。
https://www.annallergy.org/article/S1081-1206(14)00054-4/fulltext
ただ単に強制1秒呼気量を増やせばいいという考え方ではなくて、中には副作用が少ないとはいえなるべくならステロイド吸入剤は極力使いたくないという立場の患者さんもいらっしゃると思いますし、統合的に代替医療も活用したほうが、患者さん自身が喘息をコントロールしていくうえで満足度が高いということです。
上記の論文ですと「信念」と書いてありましたが患者さんの生き方ですね。これは西洋医学だけで充分、他は無意味と排除する考え方はナンセンスだということです。
カイロプラクターが喘息に対して間違いなくできること
補完代替医療の立場でQOL,満足度を高める
カイロプラクターとして対応できることはいろいろあるとおもいますが、まず「カイロプラクティックだけで喘息が良くなります」とは考えずに補完的立場に立つことが大切です。そのうえでカイロプラクティックが得意とする運動器向上へのアプローチが可能です。
解りやすいのが呼吸という運動です。呼吸は胸郭や横隔膜の動きによって行われます。
肺によってガス交換が行われるのですが、実際肺まで空気を送り込んでいるのは胸郭と横隔膜です。この動きが低下している方は多いです。
これらの動きを改善していくことで最大呼気量が増大することは間違いないくあります。
そして背骨、背骨周囲の緊張を解く
具体的な体験として記述すると、オーソドックスなカイロプラクティック治療によって背中がとても楽になります。カイロの臨床をしていて過去に喘息だった方や喘息の方の背中は、往々にして硬いです。度重なる咳で筋が硬直してしまうのでしょうか。ここが改善されると呼吸は主観的には楽に感じられます。
私自身勉強も兼ねていろいろ試しながら考察しました。1秒呼吸を簡単にはかるピークフローメーターをAmazonで購入して日々計測しました。2000円前後で買えるので、まだ持っていない方は、購入して日々のピークフローを計測すると調子が判断しやすいと思います。残念ながらカイロプラクティック治療前後でこの数値の改善はありませんでしたが、喘息をコントロールするという観点で必要だと思います。
脚踏みマッサージの個人的な感想
先日私自身は背中を足踏みしてもらいました。元同僚に背中を踏んでもらったら「中下部胸椎がとても硬い。」と指摘されました。みっちり1時間踏んで貰った後はとても呼吸が楽でした(あくまでも主観的に)。本来なら一秒呼気も計測するべきですね。
咳喘息段階的に段階的に運動療法を増やしていく
運動誘発性喘息もウォームアップをしっかり行うことで喘息発作が起きにくくなるようですし、喘息全体をみても運動療法は有用です。
カイロ治療の中での対話を通じて、もしくは実際にピラティスや呼吸、ストレッチなど脊柱の機能性に関連する運動をカイロプラクティック治療の中で取り入れてもらうといいです。
患者さんはカイロプラクターにそのうような要望を出すことも大切です。インフォームドコンセントでお互いに納得のいく時間になることが大切です。
喘息にエクササイズは有効
定期的なエクササイズで成人の喘息は改善します。よく昔から小児喘息の方は水泳を勧められたように、喘息にエクササイズは有用です。
2013年の研究で成人の喘息は定期的なエクササイズで改善することが報告されている。単に気管支や肺に絞った考えよりは、身体全体から考えた方が良いといえる画期的な研究であると言えます。
この研究によると20~27歳の若年喘息患者152人を対象に、過去12カ月以内に起こった喘鳴、息切れ、咳、たんなどの症状の発生頻度に基づく喘息症状スコア(0~12)で評価した。
運動は、汗をうっすらとかく程度のエアロビック運動の時間数(1週間当たり)で評価。
運動時間数で四分し、時間の長さごとに喘息症状の発生の有無をみた
- 喘鳴、息切れなどの症状はいずれも運動時間の最小分位(1時間未満/週)で多く、運動量が多くなるにつれて喘息症状が減少する傾向が見られた。
- 「息切れ症状あり」は最小分チーム(週一時間未満)で39.0%に対し、最高分位(運動時間が5時間以上/週)では16.2%
- 「咳症状あり」は、最低分位で31.7%、最高分位では18.9%
- 喘息症状スコアもやはり運動量が少ないほど重症傾向が見られた。
著者は 怖がらずに適度な運動を続けるよう喘息患者に勧めることは、症状のコントロールにおいて有効ではないかと考えている。
運動は完璧ではないけれど、喘息コントロールには必要
私自身は咳が辛い時は動くのも億劫であったけれど、上記の記事を参考に先ずは散歩から初めました。
齋藤真嗣先生の著書にもあるように、雨の日も風の日も毎朝30分歩いて体温を上げるようにする心がけのんびり歩いていました。
これは副腎疲労の場合も考え方は同じで、運動すること自体が副腎疲労の回復を早めるそうです。皆さんも最初は億劫で息が上がるかもしれませんが、怖がらずに適度な運動をしていきましょう。
おまけ:ヨガに喘息を抑える効果はあるのか?
こちらも1秒強制呼気においては効果は認められないもののQOLの向上や、最大呼気量において有意に効果があり、重大副事象を認めないことから有用であることが伺える。呼吸を深めるという意味では有用です。
運動は重症の方にとっては大きな挑戦
何かあったら大変ですから、運動は重度喘息の場合は細心の注意を払って運動を始められるといいと思います。
米国スポーツ医学会(ACSM)は、次のようなアドバイスをしている。
代替医療を上手く活用して、よりよい喘息コントロールを
一番大切なのは患者さんがよりよい喘息コントロールが出来るようになることです。西洋医療と補完代替医療を上手く組み合わせて、本人の満足いくケアを模索していくことが大切です。
統合医療が実際に行われている米国では、どの療法を選択するか判断する専門のDr.がいるようです。初診時に「あなたは呼吸器科に行ってから、ヨガのレッスンを受けてください」というようなやりとりがあるのでしょうね。
つぎのページはプラシーボ効果の解説、ステロイド療法のデメリット、大人になってからの喘息の共通項を書いていきます。