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伊藤孝英
院長
ロイヤルメルボルン工科大学健康科学部カイロプラクティック学科日本校卒業。B.C.Sc(カイロプラクティック学士), B.App.Sc.(応用理学士)。従来の筋骨格系障害としての腰背部痛から生物社会心理的要因としての腰背部痛へとシフトチェンジ。鬱や不安障害にも着目したマルチモデルでヒューマンケアしています。
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生物心理社会モデル

社会環境 心理状態も原因になる

まだ聞きなれない言葉かもしれませんが「生物心理社会モデル」は今までの医療モデルとは違う枠組みで患者さんの状態を捉えます。

例えば「腰が痛い」場合は患者さんは今までは骨の異常、椎間板の異常など生物学として判断できる部分だけで原因を探してきました。

しかし大規模な疫学調査で必ずしも生物の構造以上が腰痛の原因ではないことが分かってきたのです。

それは患者さんが置かれている社会環境(職場や家庭など)や、日々どのような心理状態で過ごしているかなども腰痛の大きな要因であることが分かったのです。

お身体そのものの要因だけでなく、年齢、その方の環境、どのような社会的立場かを含んだストレス要因を考え対応するモデルです。

専門的には「器質的異常(生物学的因子)と年齢や環境および社会的立場まで考慮したストレス環境(心理社会的因子)の療法を含まなければならない」ことを提唱する概念的モデルを言います。

外側の「苦悩」「痛み行動」が理解に重要

痛みの生物心理社会モデル
外側の2つ【苦悩】【痛み行動】がポイント

いままでは腰の故障として考えられていた腰痛が、心、環境、社会的問題も関わっていることが多くの研究でわかってきたので、新しく考え出されたモデルです。

慢性痛は「痛みがある部位に原因があり、その原因がなくなれば痛みも良くなる」という古い考え方では解決できない。

そのまんま

このモデルで腰痛対応して10年以上になりますが、腰痛を非常によく表しているモデルです。

集学的治療法の効果

図のように慢性痛の「痛みの程度の改善」には幾つかの要因が関わりあっています。

改善は

  1. 痛みによる「破局的な思考=もうだめだ、痛みの事ばかり考えている」が減ってくる
  2. 「この痛みは何かが壊れているのでは?」が「壊れているわけではない」になる
  3. 「何もやる気がしない、何も楽しく感じられない」といった心的状況が改善
  4. 筋持久力、関節機能、体力が向上

そして低下していた生活の質(QOL=Quality of life)が向上します。

これらはどれか一つが単体で存在するというより、複雑に絡みあっておりますし、患者さんの「信念」も考慮して向き合います。

医療全体の流れになってきている

このページは腰痛など身体の痛みを中心に書いてきましたが、さまざまな疾患のモデルとしても使われてきています。

これからの医療の主流になってくる概念であると言えます。