ぎっくり腰の慢性腰痛化を招く因子は何か?
慢性腰痛はぎっくり腰と違うカテゴリーの疾患になります。
慢性化した腰痛は治るのに時間がかかり、思っているより大変になります。
加齢や加体重、肉体労働といった従来考えられていた因子の影響は少ないようで、最近では心理学的なことと、生活の障害度合が影響すると言われています。
変化しやすい職場の環境や、痛みの度合い、痺れの有無(神経根症状)は腰痛の慢性化の指標にはなりづらいようです。
1.最大要因は精神医学的領域の問題の併存
2010年の10842人を対象とした大規模研究
体系的レビューとメタ分析の結果、1年以上腰痛が続いている場合の大きな原因は精神医学領域の問題の併存。
この研究での5大要因は以下の通り
- 重大な腰痛の人の動きをコピーする
- 非器質的なサイン(社会心理的な要因=職場の環境などのストレス)
- 日常生活動作の不具合
- 不健康な生活
- 精神医学的問題の併存
が腰痛の慢性化を招きます。
腰痛になってもビビらない、日常生活動作の再獲得が重要
カウンセリングしましたか?
慢性腰痛も基本的には手術を必要としません。ぎっくり腰のような急性腰痛は自然治癒していくものですが、腰痛が慢性化してしまった腰痛にはコンサルティングが必要です。
最初の腰痛治療に失敗した時(まあ3か月から6か月経過しても良くならない時)はできるだけ早く、多学問領域にわたる対応ができる複合センターを利用したほうが良いでしょう。
腰痛のパラダイムシフトが必要!!
世界中の多くの研究者が腰痛に取り組んできたにもかかわらず、依然として医学的・社会的大問題でありつづけている。効果のない治療と見当違いの政策によりこの危機が雪だるま式に大きくなっていってる状況。
腰は壊れていないので、動かして治していく必要があります。腰は痛みを出しているだけで壊れてはいません。
「腰痛は20世紀の医学的大問題だったがその遺産は21世紀も拡大している」
1年以上ある慢性腰痛も手術前にリハビリを!!医療費の高騰を招きます
21世紀になっても、手術の前に集学的なリハビリテーションを勧める内容の論文は、出され続けています。素晴らしい学術的なことが社会的な問題で、すぐには活かされないことはよくあります。
ノルウェーOslo大学のChristian Hellum氏らは、2011年の3月に
「外科的治療のリスクを考えると、最初にリハビリ を実施し、改善が見られない患者に外科的治療を適用すべきではないか」と長期的なスパンで、高額の手術の選択は控えるべきとの考えを打ち出している
BMJ 2011; 342 doi: https://doi.org/10.1136/bmj.d2786 (Published 19 May 2011)
Cite this as: BMJ 2011;342:d2786
では慢性化した腰痛、首痛はどんな治療が必要?
1992年慢性腰痛、首痛に対する臨床比較対照試験
①医師による標準的治療群(レントゲンと安静など)
②偽薬による疑似治療群
③脊椎マニピュレーション群(矯正)
④物理療法群(エクササイズ、マッサージと温熱療法、電気療法、超音波、短波ジアテルミーなど)
一年後の結果は
これらを1年間にわたり追跡調査した研究です。
無作為による臨床比較対照試験の結果ですから信憑性も高いです。
最も成績が悪かったのは
①医師の標準的な治療群(レントゲンを撮って安静にして様子をみる)
②シャムトリートメント群です。(見せかけの治療)
比較的効果があったのは③と④
③の脊椎矯正は研究のために筋操作は最小限にしてあります。12ヶ月後になると脊椎操作の治療は、12ヵ月の後の物理療法よりわずかによいことが分かっています。
カイロ治療は基本的に③と④を組み合わせて行います。さらに運動療法もあるとより効果的でしょうね。
忘れていけないストレスの存在
私は医者ではありませんが、腰痛をみさせて頂く立場から初診時での心理・社会的な要因への配慮は欠かしません。当院では簡易質問をしたり、Bs-Popに記入してもらい抱えていらっしゃる問題が浮かび上がる事も少なくはありません。
腰が凝り固まって、ほぐして欲しい方への質問はほどほどにして施術しますが、思っているよりも大切な質問です。
【こんな研究もあります】
臨床医は心理学的問題と不適切な信念や態度に対して警戒を怠ってはならないが、その一方でプライマリケアの段階で心理・社会的因子(イエローフラッグ)を検出するための最善のスクリーニング方法と戦略を明らかにする必要がある。心理・社会的問題は、腰痛の慢性化および長期障害への移行において重要な因子であるという一般的な合意があります。しかし肝心の心理・社会的問題を抱えている患者を正確かつ効率的に同定できる手法や解決策はいまだに出現していません。
極めてシンプルな腰痛管理 答えは出ている!
腰痛管理は過去に何回も腰痛を経験したことのある人ほど、難しく考えがちです。こじらせてしまっているのです。毎月腰痛になる人もいれば、半年ごとに腰痛になる方もおります。
頻回になればなるほど、画像診断の数が増え、腰が故障していることを伝えられる確立があがっていきます。
実はまったっく逆の発想をすることが腰痛をなくすことも、明らかなのです。
以下のような事をすればよい。
■最も有効な腰痛管理は
Back Pain, Incapacity for Work And Social Security Benefits: An International Literature Review And Analysis ペーパーバック – 2002/10/1
1)危険信号の検出(ストレスや職場、学校での環境など)
2)重篤な疾患ではないことの保証(早期手術を要することの除外)
3)有効なセルフケアの助言
4)可能な限り日常生活や仕事を継続
5)心理社会的因子の発見と対応
6)不必要な画像検査と医療化の回避
Cochrane Collaborationの総監修を務めるAlf Nachemson博士は
と述べているように、世界各国の腰痛診療ガイドラインは同じ内容を伝えているのです。しかしこの理想像を医学界に受け入れさせるには、苛立たしいほど時間がかかることも判明しています。
腰痛なんて全く怖くありません。