線維性筋痛症の原因は痛みの上行性神経の活性、脳からの下降性疼痛抑制の不活性、中枢性感作だと推察されていますが、未だにハッキリと判っていません。
先ずは原発性の線維性筋痛症の場合、組織学的には何が起きているのか?を考えていきましょう。
病理学的変化は、組織化学によるI型繊維の蛾に食われた外観です。電子顕微鏡によるグリコーゲンおよびミトコンドリア沈着を伴う筋原線維溶解; 光学顕微鏡では炎症性変化は見られません。
Yunus MB, Kalyan-Raman UP, Kalyan-Raman K. Primary fibromyalgia syndrome and myofascial pain syndrome: clinical features and muscle pathology. Archives of Physical Medicine and Rehabilitation. 1988 Jun;69(6):451-454. PMID: 3288173.
現在のところ西洋医学では線維性筋痛症は機能性身体症候群(functionalsomatic syndrome:FSS)に属する特異なリウマチ性疾患のひとつである」と定義している.
FSSは「適切な診察や検査を行っても,器質的疾患(病理学的に認められる疾患)の存在を明確に説明できない身体的訴えがあり,それを苦痛と感じて日常生活に支障をきたす病態」とされています。
2080ページ 日本内科学会雑誌 108 巻 10 号
「現代医学の検査では原因が特定できない」と言えますし「特定の原因があるわけでなく、単純に複数個所身体に痛みがある」とも言えます。
日本の文献においては、リウマチの一つとして心理的要因も大きい疾患として考えられていますが、海外の文献においては筋肉の病理、酸化ストレスなども原因として考えられているようです。
線維性筋痛症は【機能性疾患】と呼ばれ、意味合いとしては、生命に関わる症状ではなく、運動機能、感覚機能、疼痛などに関わる疾患の総称です。
線維性筋痛症の各疾患は他の線維性筋痛症疾患の診断基準を満たし,しばしば相互に合併する.
線維性筋痛症の患者は,几帳面,徹底性,完全性,強迫性ならびに神経質などの似た性格の特徴がある
線維性筋痛症の患者は,うつ,不安ならびに認知的問題等の多彩な精神症状をしばしば伴い,不安薬,抗うつ薬ならびに抗けいれん薬など,類似した薬物治療に反応しやすい.
カウンセリングや認知行動療法など心理療法の対象となる.
日本内科学会雑誌 108 巻 10 号 ページ2080
どうも疼痛感覚の機能に問題が生じていると考えているようですし、精神的な要素が少なからず関わっているみたいっすね。
全身性の痛みが起こると言われていますが、痛みの強さは様々です。
また線維性筋痛症は機能性身体症候群のひとつだと記述しましたが、さまざまな身体機能症候群が合併することも知られています。
目次
相互に合併しやすい身体性機能症候群(functional somatic syndrome)
線維性筋痛症、慢性疲労症候群、過敏性腸症候群、緊張型頭痛、片頭痛、月経困難症、うつ病、PTSD、化学物質過敏症、周期性四肢運動障害、むずむず脚症候群、顎関節症、筋・筋膜疼痛症候群
これらの病態が合併しやすい。では線維性筋痛症患者の合併症割合を見ていこう。
線維性筋痛症患者で合併している各疾患の割合
(グラフは最大値)
- 慢性疲労症候群も合併している線維性筋痛症患者は30-40%
- 線維性筋痛症のみ(以下FMS)
- むずむず脚症候群30-60%
- FMSのみ
- 片頭痛
- FMSのみ
- 緊張型頭痛
- FMSのみ
- 過敏性腸症候群60-70%
- FMSのみ
- 月経困難症90%
- FMSのみ
- 顎関節症~75%
- FMSのみ
- うつ病の既往歴が60-70%、1年以内は60%
- FMSのみ
- 双極性障害25%
- FMSのみ
カイロプラクティックが線維性筋痛症にどれほど効果を望めるのか?
2009年に行われた文献レビューを参考にして書いてきます。
線維筋痛症候群のカイロプラクティック管理:文献の系統的レビュー
線維性筋痛症はカイロプラクティックを含む筋骨格医学のすべての分野で「最も一般的に診断される、関節以外のやわらかい組織の状態の1つ」です。
この研究の目的は、線維性筋痛症へのカイロプラクティックで最も一般的に使用されるカイロプラクティック手順の文献を調べあげ、この治療法が良いといえる証拠があるかを提供することです。重要な点は保守的治療および非医薬品療法です。
結果: 8つの系統的レビュー、3つのメタ分析、5つの公開されたガイドライン、および1つのコンセンサスドキュメント。追加のランダム化試験のデータベースを検索したところ系統的レビュー/ガイドラインにはまだ含まれていない、カイロプラクティックのランダム化臨床試験は見つかりませんでした。
マニュアル、代替、および自然療法のインデックスシステムとカイロプラクティック文献データベースの調査により、カイロプラクティック、鍼灸、栄養/ハーブサプリメント、マッサージなどのさまざまな非薬理学的療法に関する38の記事があった。
FMSの非医薬品治療に関する以下の推奨事項がある。
強力な証拠は、有酸素運動と認知行動療法をサポートしています。
適度な証拠がマッサージをサポートし、筋力トレーニング、鍼灸、スパ療法(温泉療法)。
限られた証拠は、脊椎マニピュレーション、運動/体の認識、ビタミン、ハーブ、および食事の変更をサポートしています。
結論: いくつかの非薬理学的治療と手技治療は線維性筋痛症の治療において許容できる証拠のサポートを持っています。
Schneider M, Vernon H, Ko G, Lawson G, Perera J. Chiropractic management of fibromyalgia syndrome: a systematic review of the literature. J Manipulative Physiol Ther. 2009 Jan;32(1):25-40. doi: 10.1016/j.jmpt.2008.08.012. PMID: 19121462.
これによると、関節障害以外の診断で最も多く診断を受ける病態の一つだとか。
限られた証拠としてカイロプラクティックの脊椎マニピュレーションは許容できると言っています。
実際のカイロプラクティックの臨床では多くの場合、筋操作(マッサージ)や食事への言及、運動指示が行われると思いますので、時間をかけて対応してくれるカイロ治療院なら、ある程度の効果は期待しても良いのではないかと考えられます。
そのまんまサンシャインさんでは認知行動療法も行っているのでしょ?
ええ、認知行動療法で有酸素運動を行うよう合意が得られれば、さらに効果が期待できそうです。
これで身体を整え、生活習慣を見直すことで線維性筋痛症にもカイロプラクティックケアが効果があることが分ると思います。
西洋医療ではカバーしきれない部分は、代替医療で補完してあげる必要があります。
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