首の痛みケア(頚部痛)のエビデンス

首の痛み(頚部痛)に悩まされている方も少なくないです。日本でもそうですが、世界的にも女性の方が男性よりも有病率が高く、日本では女性の筋骨格系の痛みのトップになるのが首の痛みです。 

インターネットではさまざまな原因が見つけることができますが、実際にカイロプラクティックの臨床にあたっているカイロプラクターが臨床現場で抱く印象をデータを基に説明していきます。

首の痛み(頚部痛)について保存療法の立場でデータを基に解説

なかなか取れない首の痛み(頚部痛)がある方、このページの一部分でも参考になれば幸いです。

先ずは有病率を見ていきましょう。

首の痛み(頚部痛)の有病率

世界的にも女性の方が男性よりも有病率が高く、日本では女性の筋骨格系の痛みのトップになるのが首の痛みです。

研究にもよりバラつきが大きいですが、いくつか見ていきます。

首の痛みは一般的な筋骨格疾患であり、男性で約15%、女性で23%の有病率との報告の研究もありますが、最新の統計ではもっと少なくでています。

2020年に発表された195ケ国の情報による大規模な系統分析においても判った各国の首痛の有病率、年間発生率、首の痛みによる障害がある率は各国それぞれ。

平均的にみると人口10万人あたりの首の痛みの発生率は806人、人口10万人あたり首の障害がある人は352.0となっています。

詳しくはリンク先の図を参考になさるといいですが、日本は比較的少ない国になるようです。この研究でいくと首の痛みの有病率は3.6%ということになりましょうか。

(Safiri S, Kolahi AA, Hoy D, et al.  BMJ. Published 2020 Mar 26)
首を痛がる女性
首の痛みは日本では女性の訴えのトップ

首の痛みは、自然緩解する が半数以上が1~5年の間に再発する

現在の首の痛みがある人の半分から3/4の間で、1〜5年後に再び首の痛みが報告されるようです。

(Carroll LJ, Hogg-Johnson S, van der Velde G, et al. Spine (Phila Pa 1976). 2008)

これは臨床経験からすると、おそらくですが、首のリハビリテーションまでしっかり行わないと、同じように首に負荷がかかり続け、結果的に痛みが出る時期がやってくるのではないかと、私は推察しています。

実際、お金と時間をかけてリハビリテーションまで行う方は少ないです。だって痛みがもうない状態なので「治った」と考えるのが普通だからです。カイロプラクターとしては「リハビリテーションをしたほうがいいですよ」とは伝えますけどね。

危険因子が除外できれば、多くの場合は筋骨格系の痛みである。その場合は適切な保存療法(非手術)で75~90%は回復ていくことが2015年に統計的に分かっていることです。

(Woods BI, Hilibrand AS. Cervical radiculopathy:  J Spinal Disord Tech. 2015)

順を追ってみていきましょう。

手術は短期的な効果しか望めない

そのまんま
そのまんま

このページを読んでいるかたで、手術を検討している方は少ないと思いますが、参考までに、手術をお勧めしない根拠を記しておいきます。

長期的には、保存療法が望ましいのです。

2017年の研究によると、頸の手術は短期的には保存療法よりも効果的ですが、長期的には効果的ではなく、臨床観察は手術をする前の合理的な戦略として位置づけられています。

(Cohen SP, Hooten WM. Advances in the diagnosis and management of neck pain. BMJ. 2017)

首の痛みに関連する治療の臨床ガイドライン2016

neck pain–associated disorders (NADs) 首の痛みに関連する障害 って言うそうです。ここではむち打ちの部分は削ってあります。

首の痛みに関連する障害およびむち打ち症に関連する障害の治療:臨床診療ガイドライン
最近発症した(0〜3か月)首の痛みについては、マルチモデルケアを提供することをお勧めします。
首の脊椎矯正またはゆっくり関節を動かす; 関節可動域の在宅運動、またはマルチモデル手技療法(グレードI〜II 首の痛みに関連する障害の場合)。
監督された段階的な強化運動(グレードIII NAD
持続的な(> 3か月)首の痛みについては、マルチモデルケアまたはストレス自己管理を提供することをお勧めします。
軟部組織療法による操作; 高用量マッサージ; 監督されたグループ運動; 監督されたヨガ; 監督された強化運動または家庭運動(グレードI-II NAD); マルチモーダルケアまたは開業医のアドバイス(グレードI-III NAD
結論: 手技療法、自己管理アドバイス、および運動を含むマルチモーダルアプローチは、最近発症した首の痛みと持続的な首の痛みの両方に対する効果的な治療戦略です。

Bussières AE, Stewart G, Al-Zoubi F, Decina P, Descarreaux M, Hayden J, Hendrickson B, Hincapié C, Pagé I, Passmore S, Srbely J, Stupar M, Weisberg J, Ornelas J. The Treatment of Neck Pain-Associated Disorders and Whiplash-Associated Disorders: A Clinical Practice Guideline. J Manipulative Physiol Ther. 2016 Oct;39(8):523-564.e27. doi: 10.1016/j.jmpt.2016.08.007. PMID: 27836071.

慢性(3か月以上)と急性(4週以内)を分けて考える

このページでは私の臨床経験とエビデンスを基に、首の痛みについて考察してあるのですが、実は2017年の時点では質の高い頚部痛に特化した臨床研究は少ないのが現状です。

世界的にも医療費を圧迫する腰痛に関しては臨床研究が日々増えてきていますが、首の痛みに関してはこれから本格化してくるという気運です。

多くの首痛の研究は腰痛関連で推察されていて、おそらく腰痛と同じ筋骨格系障害でいいだろうという状況です。(ただご存じの通り腰痛患者自体が世界的に増えており、この枠組みが正しいのかどうかは別の話になります)

ですが幾つか質の高い頚部痛臨床研究がありますので、それらの文献を基に考察、解説していきます。

首の痛みは日本の女性では現在最も訴えの多い疾患となっています。さまざまな意見がインターネット上にありますが慢性的な首痛の多くは筋肉群、筋膜、首の関節の硬化が原因で起きていると私は思います。いわゆる硬くなってしまったということです。

急性期の首痛

急性期、つまり首が痛くなって1か月以内には筋弛緩薬と非ステロイド性抗炎症薬は効果的です。

2017年の研究です。急性期は筋弛緩薬、非ステロイド系抗炎症剤は効果的。補完代替的治療の中で、最も強い証拠は運動であり、弱い証拠は異なる状況でのマッサージ、鍼治療、ヨガ、および脊椎矯正が証拠として挙がっています。

(Cohen SP, Hooten WM. Advances in the diagnosis and management of neck pain. BMJ. 2017;358:j3221. Published 2017 Aug 14.)
そのまんま
そのまんま

BMJは臨床系のエビデンスが一番強い医学雑誌ですが、運動療法を推奨しています。カイロプラクティックでは、上記のマッサージ、脊椎矯正を行い、リハビリテーションとしてのマッケンジー体操などの運動を処方している治療院が多いと思います。

中には針治療を行うカイロプラクターもありますし、ヨガスタジオを併設しているオフィスもあります。

急性的なものは筋の硬化か、筋の軟化が部分に起きていたり、一時的な筋スパズム(攣縮=れんしゅく)が起きていることが原因のことが多いです。単純に痛みだけ何とかしたいと対処療法を行うならば上記のように非ステロイド系消炎鎮痛薬(ロキソニン等)や筋弛緩剤が強い証拠であります。

頭痛等の他の筋骨格系疾患でも見られるように、痛くなったら飲むということで少し痛みが和らぎます。2/3の方はこれで何とかなるらしいのですが、繰り返したり慢性化した頚部痛には他の方法も併用したほうが良いでしょう。

日常的にある首の痛みの原因は?

痛みを抑えるのは対症的なので、カイロプラクティックでは「なぜその筋が痛みを出したか?」について考えます。

頸部神経根障害(首が原因で腕や肩への痛みがある場合)は硬膜外ステロイド注射、椎間関節症(背骨の関節の不具合)については高周波除神経に弱い証拠があります。

首の筋肉の一部に起きていたり、深くて手や指での確認が困難な部分に何らかの異常があると予測されるときもあります。首の筋肉は5層6層になっていて深い所では5cm以上の深さになる部分もあるからです。

首の解剖
チャートブック骨格筋の解剖 川原 群大 (編集)~より

慢性的な首の痛みの場合は多くは5層、6層ある筋肉の全てが硬くなっていたり、表層の筋肉はふわふわしていても背骨近くの深い筋肉は硬くて関節がロックされた状態であることもあります。

例えば指圧的マッサージを年中受けている方は、押圧による筋弛緩作用は得意ですが、筋肉が本来もっている伸張作用は苦手な方が多い印象です。

臨床上よくあるのが、後頭部の部分(風池、天柱のツボあたり)がボコッと凹んでいる状態です。指圧の世界ではそのようなことなのかもしれませんが、カイロプラクティックの観点からすると背骨の機能性が向上していない、というようにも見えます。

寝違いのような急性首痛は1か月で自然消滅も約1/3が慢性化する

自然消滅すると書くと安易に考えたり、鑑別診断を怠ることになるのでキチンとした判断はクリアした時点でのお話しです。

ほとんどの急性の首の痛みは自然に解決しますが、影響を受ける人々の3分の1以上が低グレードの症状または再発を1年以上経っており、遺伝学および心理社会的要因が持続の危険因子です。

慢性の首の痛みを持つ人々のほぼ半分は、神経障害性侵害受容性の症状または神経障害性の症状を持っています

(Cohen SP, Hooten WM. Advances in the diagnosis and management of neck pain. BMJ. 2017;358:j3221. Published 2017 Aug 14.)

この心理社会的要因というのは、腰痛に同じく社会的なストレスを感じているとき、たとえば職場でパワハラがある、人間関係がこじれている、など社会的な要因になります。

これは認知行動療法を行っていると明らかで、人間というのは面白い生き物だなと感じます。

「もしかしたらあの病気かもしれない、この病気かも?」と不安でいることも、脳の扁桃体が活性化されて痛みを助長するので不要な心配は辞めましょう。意味のない画像診断も控えましょう。

痛みが出てから数日~2.3か月の状態ならば大げさに考える必要はなく普通の保存療法で効果が見込めます。逆に言うと通常は2日ほど経過すれば痛みは自然と治まってきて、1か月以内に自然消失するでしょう。

つぎのページは「急性期にカイロプラクティックのような保存療法を受ける場合、慢性の首痛で起きている事、統計データ」をご紹介します

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