妊婦の腰痛

お身体の変化、生活の変化、ホルモンバランスの変化、体調の変化、心境の変化等、大きな変化がある妊婦さん。

このページでは妊婦さんの腰痛の原因と対処法を、医学的な見地、統計情報をもとに考えていきます。1部分でも参考になれば幸いです。エビデンスベースを積み上げて、ページ作成している性質上、重複する箇所もございます。

出産前後から起こる腰痛

出産前後から慢性的に骨盤周りに起こる腰痛は世界的にも問題になっているようで、痛みの由来が筋筋膜性のも、内臓由来、腱や靭帯によるもの、骨格構造からなど、どこの組織に由来するものかを判断するのが難しいようです。そして関連痛として腰回り、骨盤まわりに痛みが出ていることを見逃していけません。

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC4368679/

出産によって様々な組織が引き延ばされますので当然かもしれませんし、上記の組織どれか一つということも考えづらいですね。医学的に考える場合「この組織が」と特定しなければならないので、表記が難しいところです。

いたみの分布においては、仙骨部、臀部、鼠径部および恥骨結合部に頻繁にみられ、比較的多いのが背中や腰といった背部、下部腹部ならびに脚部(腿、腿裏、フクラハギ、脚の裏)に見られます。(上記のリンク参照)

出産前後の妊婦の腰痛管理のポイント5つ

まずは妊婦さんの腰痛の、重症度と部位をしっかりと評価する。以下の5項目を中心に考えていきます。

お腹を支える妊婦

①どこが痛い?
→ 一般的には腰骨盤周りから股関節(多くは左)の痛みを訴える妊婦が多いようです。

②どのよう動作が制限を受けているのか?(腰痛のため日常生活でできなくなっていること)
→RDQというチェックシートで評価していきます。

(クリックで拡大、RDQ質問)表腰痛を全く無くすことは考えず、この日常生活動作でできることを増やしていきます。

③脚や股関節を含め、感覚が鈍くなったり痺れ、力が入りづらいといった神経の弱化や変化はあるか?→腰痛がひどいと、他の部位にも影響がでてきます

④ガイドラインの推奨は(あくまでも医師が作ったもの)主には理学療法による管理(カイロプラクティックも含む)、運動療法、人間工学、痛みの緩和、骨盤ベルト、骨盤ガードル、松葉づえ、車椅子が含まれます。
→ 人によって効果が違うので、どれか一つに頼るのではなく、いろいろと試してみるという理解が大切です。

⑤お医者さんでは、甲状腺ホルモンや、カルシウムレベル、マグネシウム、リン酸塩、骨アルカリホスフォターゼ、ビタミンDなどなど代謝テストを実行することも… 
→私はカイロプラクターなので代謝テストはできませんが、必要な方は医療機関でしらべサプリなりホルモン剤などで改善することも

腰痛のケアは危険ではない

腰痛の緩和にかんしては、硬膜外注射、背骨の調整(カイロプラクティック)、局所麻酔が危険だという証拠はありませんのでご安心ください

妊婦のお腹
骨盤の調整や局所麻酔の危険性は指摘されていない

運動、カイロプラクティック、針治療が有効、2015年のレビュー

システマティックレビューになりますので、質の高い研究です。

運動(陸上または水中でのあらゆる運動)が妊娠関連の腰痛を軽減する可能性があるという質の低いエビデンスがある。

あらゆる運動が機能障害を改善し、通常の出生前よりも病気の休暇を減らすことを示唆する中程度から低品質のエビデンスがあります。

単一の研究からの証拠は、鍼治療または頭蓋仙骨療法が妊娠関連の骨盤痛を改善することを示唆しており、脊椎マニピュレーションまたはマルモデル介入(手技療法、運動および教育)も有益である可能性があります。

Liddle SD, Pennick V. Interventions for preventing and treating low-back and pelvic pain during pregnancy. Cochrane Database Syst Rev. 2015 Sep 30;2015(9):CD001139. doi: 10.1002/14651858.CD001139.pub4. PMID: 26422811; PMCID: PMC7053516.
そのまんま
そのまんま

質の低い研究とありますが、この研究の求めているレベルが高すぎるレベルなので、そのような表現になっているとお考えください。

エビデンス三角

三角形の赤い部分の超信頼性の高い研究になりますので、微妙な表現になっていますが、それだけ厳密に表現しているということです。

妊婦の腰痛の原因と対策

それもそのはず、ホルモンバランス、体型、ライフスタイルまで全部変化がある訳ですので、腰痛になりやすい状況といえます。

さまざまな妊婦さん、産後の方の背骨を拝見すると出産前後で体力全体の低下がある中で、筋力の低下、筋の張りが無くなるといいましょうか、支える力が弱っているという印象です。

しっかりとした研究は始まったばかりという印象で、柔軟性や外腹斜筋がポイントになるようです。

リラキシンが腰痛の原因ではない

以前はこのリラキシンが妊婦の腰痛の原因と考えられてきましたが、2000年以降の研究で否定されています。諸説ありますが、今まではリラキシンが妊婦の腰痛の原因だと言われてきましたが、そうではないのかもしれません。

リラキシンは構造的にはインスリンに類似した、ポリペプチドホルモンで黄体から分泌され子宮収縮の抑制、恥骨間靭帯の伸長、子宮頸管の軟化という3つの生理学的作用がある。ここで関係しているのは恥骨間靭帯の伸張であるが、出産の直前までは影響がない可能性がある。

これまでリラキシンは妊婦の関節弛緩の原因だと考えれられ来た。私も大学でそのように学んだが、いくつかの研究で否定されている

リラキシンは妊娠中の恥骨結合の拡張や骨盤の痛みとも関連性が無かった

(blecher and Richemond 1998. Samuel 1996)(Bjorklund er al.2000)

妊婦の腰痛対策1. ストレッチや背骨安定化運動

当たり前のようなことですが、妊婦さんの腰痛へのストレッチや背骨の安定化運動に効果があると科学的に言えるようになってきたのはごく最近です。

いままでも経験的に効果があると言われていたのでしょうけれど、統計的に研究されていないとイワユル「科学的根拠」と言えないのです。パイロット無作為化臨床試験ではコントロール感が増えて、痛みが少し減り、日常生活動作が楽になるようです。

※【パイロット試験】単回実行試験で得られた結果に基づき、適正な用法・用量を推定するため、被験者数を増やして安全性・有効性を確認しながら実施する試験の事

日常生活活動障害、痛みがストレッチや背骨安定化運動を週二回6週間取り入れたグループの方が活動障害が少ないこと、痛みが減ったことが報告されています。

同時に筋電図を計測していて、多裂筋、腸腰筋、腰直筋および外腹斜筋(筋電図)の筋活性化レベルが計測された。

妊婦さんは2つのグループに無作為化され、50分のセッションを週2回、6週間行った。

1)腰部安定化運動プロトコル
2)ストレッチ運動プロトコル

1)2)の いずれの介入でも腰痛の有意な減少(p = 0.03)(VASで1.68)がありました。

日常生活動作の活動障害は変化はない。さらに、両方の介入は姿勢安定性の平均改善に匹敵し、介入後の外腹斜筋の活性化(p> 0.05)が大幅に増加しました。

(Fontana Carvalho AP, Dufresne SS, Rogerio de Oliveira M, et al. Eur J Phys Rehabil Med. 2020) Fontana Carvalho AP, Dufresne SS, Rogerio de Oliveira M, Couto Furlanetto K, Dubois M, Dallaire M, Ngomo S, da Silva RA. Effects of lumbar stabilization and muscular stretching on pain, disabilities, postural control and muscle activation in pregnant woman with low back pain. Eur J Phys Rehabil Med. 2020 Jun;56(3):297-306. doi: 10.23736/S1973-9087.20.06086-4. Epub 2020 Feb 18. PMID: 32072792.
そのまんま
そのまんま

これは痛みは1.6/10減ったということなので、たとえば6/10くらいの腰痛を訴えていた方は4.5/10くらいになったということです。

最初に書いたように腰痛を完全になくそうなんて考えていると、失敗しますから、少しでも楽になるものをどんどん取り入れると考えてね。

使えてない筋肉は主に外腹斜筋のようですね。この辺りは腰を前からコントロールするという意識が出てくると意味が分かってきます。

外腹斜筋はお腹の筋肉ですが、脇腹の筋肉と言ってもいいでしょう。斜めに走っている筋肉の一つです。ボクシングのボディーブローを打たれた時に、ガードする筋肉です(男性用の解説だから旦那さんに教えてもらってね)

臨床上、臀部や太ももの筋肉の張りが弱い気がしますが、この研究によるとお腹横の筋肉が使えなくなるようです。

妊婦さんですからお腹が大きくなってくるのが考えられますが、どうなんでしょうね?

妊婦の腰痛対策2. 水中体操

すこし古い論文になります。

妊婦の腰痛に関して2009年のレビューで解ってきたことは理学療法に確固たる効果はなく、見えて来たのは「水中での体操」が一番妊婦の腰痛に効果がありそうだということです。

(オスロ大学健康科学課のブリット・スチュージ 、ガンバー・ヒルデ&ニーナ・ヴォレスタッド)

妊婦へのアクアビクスのような取り組みは、都内であれば区でも実施されているようですし、検索して参加するのが一番費用対効果に優れているのかもしれません。

また単純な水泳が可能ならば、先述の外腹斜筋も鍛えられますし、全身運動になりますので体力維持にもつながると思いますので、泳いでみるのも選択肢の一つだと私は思います。

妊婦の腰痛には負担の少ないアクアビクスが科学的に最も効果があるようです

やる気がでない時はカイロプラクティックやマッサージを数回受けてみる

1997年の「妊婦へのマッサージとリラクゼーション療法を比較」した研究によると2回20分ずつのマッサージを受けたグループで腰痛の現象、睡眠の改善、不安の軽減、気分の改善が報告されておりますので、先ずは筋肉をほぐすという手段を用いてもいいのではないでしょうか。

(T. Field,  M Hemandez-reif  et al,1997)

カイロテーブルはうつ伏せも可能です

お腹がおおきくなってきている妊婦さんでもうつ伏せになりたいときはありあます。カイロプラクティック専用のテーブルはお腹の部分をくぼませることができますから妊婦さんも安心です。

カイロプラクティックテーブルのアブドミナルセクション
カイロプラクティック専用テーブルですので、お腹の部分に空間をつくります

リハビリが失敗した場合のみ整形外科的な意見を求めるべき

妊婦の腰痛の重症例では医療検査が必要になります。歩けないくらいの腰痛の時は、MRI,超音波スキャン、などで病的な骨折の有無を判断します。

骨粗しょう症の評価。骨壊死による股関節骨折を注意したいところです。股関節骨頭壊死は、抗うつ薬を服用されて、なおかつアルコールを飲んでいると発生リスクが高まります。妊婦さんでそのような方は少ないとおもいますが、中には止められない方もいるとおもいます。

快適な出産姿勢を維持できない重度の腰痛妊婦では産科医による徹底的な検討と評価、帝王切開が代替選択肢として上がるようです。

そうなる前にカイロプラクティックケアでなんとかしましょう。

理学療法に反応しない場合は、その時入院も検討します。

産後の腰痛管理のポイント10個

  1. 血栓予防を検討する必要があります。これは運動したり、必要ならワーファリンを処方してもらってください。
  2. 理学療法を継続し、治療に対する反応を評価する必要があります。
  3. 定期的な鎮痛を行い、NSAID(バファリンとかイブとか市販のでもOK)の使用を検討します。
  4. 女性が激しい痛みを抱えている場合は、骨盤へのX線および整形外科医への紹介を検討します。
  5. 自宅での授乳と追加サポートを奨励する。
  6. 出生後のうつ病の徴候に注意してください。
  7. 性交のさまざまな立場について助言する。
  8. 一部の女性は、出産後しばらくして腰痛症状が再発する場合があります。ほとんどの女性は2か月後に自然に解消しますが、一部の女性はサイクルごとに持続する場合があります。強度はかなり異なりますが、通常は深刻ではありません。
  9. 症状が大幅に改善するまで、重い物を持ち上げたり、スーパーマーケットのトロリーや乳母車を押したりしないでください。
  10. 症状が再発する場合は再評価され、理学療法士に紹介されるべきです。

以上カイロプラクターがエビデンスベースで妊婦の腰痛管理についてお伝えしました。不必要に整体やマッサージに通う必要はないですが、お気持ちの面も含めて支えになると思います。トコちゃんベルトなども試してみて、選択肢の一つとしてカイロプラクティックケアがあれば心強いのではないでしょうか。

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