慢性疼痛のある人は無い人より死亡率が2倍近く高い
腰痛や首痛などが出たときに順調に回復すればいいのですが、何もせずすんなり回復して、その後再発もしていない方は少ないとおもいます。
実際に定期的に腰痛になる方は多くいらっしゃいますし、慢性的な腰痛が時に痛みを爆発させる方もあります。
それはそれで単に痛みの問題として考えれば良いのか?と言われれば実はもっと自体は申告です。痛みや、朝から腰が重いなどの状態になると寿命を縮めることが研究で解ってきたからです。
ですから寝違えやぎっくり腰というのは軽度のものでも、しっかり診てくれるところを受診した方が生涯的には得策です。
しっかり診てくれるのは心理的な要因の説明をして、初診でストレスチェックなどを行い1時間かけて診てくれる所です。
いま日本の医療費だけで税収の2/3を毎年使っています。社会システムなので一概に悪いわけではありませんが、腰痛や肩こりといった慢性症状になっている方が多く、結果的に他の疾患が増えていることも原因の一つと言えます。
腰痛は一旦慢性化してしまうと、痛みをコントロールするためのコストが高つきます。ですから豪州ではぎっくり腰の初診は1時間かけて、丁寧な診療をして、その後に慢性化に移行する人数を減らす作戦に出ています。
広範に痛みがある人は、痛みがない人に比べ約2倍死亡率が高い
■25~74歳の一般住民1,609名を最長14年間追跡調査した結果、広範囲にわたる慢性疼痛を持つ被験者は、疼痛のない被験者より死亡率が高いことが確認された(1.95倍)。
その死亡率上昇は、喫煙、睡眠障害、身体活動低下と関連していた。
痛みはあれば、当然身体活動は低下します。「痛みが取れたら運動しよう」と考えるのですが、動きださないと痛みは取れていかないというパラドックスになっているので、活動性が落ちます。
また痛みに考えが占拠されると夜眠れなくなる、睡眠の質が低下するリスクが高まります。
慢性痛は死亡率が確実にあがる
慢性痛は命を縮めることが10年以上前から言われています。この記事は2021年に加筆修正しています。
18~75歳の一般住民6,569名を9年間追跡調査した結果、慢性疼痛および広範囲の疼痛を持つ被験者は、疼痛のない被験者より死亡率が20~30%高かった。
慢性疼痛に苦しんでいる患者は痛みのない人より寿命が短くなる傾向があります。痛みによる活動量の低下が一因のようです。痛みを取るということもそうですが、死亡率を下げるという意味においても慢性疼痛には運動療法が必要不可欠です。
週に150分以上の運動でリスクはなくなる
局所疼痛があるひとは 死亡率1.21倍。痛みを報告しない人に比べて広範囲の痛みのある人は癌による死亡が1.31倍。
慢性痛がある人
①1カ所
②広範に痛い人は痛みが無い人にくらべ、すべての死亡率が高い
①は1.26倍
②は1.41倍ただしフィジカルアクティビティが150分以上の方は、慢性痛に関係なく死亡リスク低下と関連。
Kim Y, Umeda M. Chronic Pain, Physical Activity, and All-Cause Mortality in the US Adults: The NHANES 1999-2004 Follow-Up Study. Am J Health Promot. 2019 Nov;33(8):1182-1186. doi: 10.1177/0890117119854041. Epub 2019 May 30. PMID: 31146537.
中長期的な広範囲の痛みと癌による死亡に関連性があると結論しています。少しずつでもいいので、痛みを減らす工夫を取り入れ、運動習慣を身に着けていきましょう。
なにしろ運動時間を増やすのが、病気、死亡率低下に関連しています。私もGooglefitを使って150分は運動するように意識しています。
痛みは急性期1か月以内に何とかしておこう
慢性疼痛は長期にわたると寿命を縮めてしまいますから、何が何でも急性期のうちに治してしまいたいものです。
そのためには、正確な情報と、根拠に基づく医療によるオーダーメイド・メディスンが重要になります。
そうは言っても既に慢性痛がある方も少なくなく、かくいう私も左肩が何年も痛いです。痛くて活動できないわけではありませんので、なるべく動くようにしています。
仕事柄どうやったらこの部分がほぐれるのか?というのをいつも考えています。なにしろ人間の身体の痛みは複雑で、まだはっきりと解明されていない事も多いです。
ですから皆でいろいろ意見を出し合って解決していかなくてはならない社会問題の一つと言えます。
現時点では慢性痛は完全に無くすことは難しいので、運動療法、認知行動療法などさまざまなことをして痛みをコントロールできるようにして「気にならない時間を増やしていく」という方向性で考えることが大切です。
最近では「リエゾン外来」という病院の外来部門があり、ありとあらゆるアプローチで各個人に合う治療法を探すアプローチも行われているようです。