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腰痛治療の新ガイドライン―(米国内科学会)

目次

広がる海外との差

ビシバシとエビデンスに基づく発表をしてくる欧米。たかが腰痛と考えがちだが、患者のその後の人生への意欲、前向きさを阻害される点を考えると国の損失は計りしれない。

アメリカの内科学会による腰痛治療の新ガイドラインについて解説していきます。

いつまで日本では腰痛に対してレントゲンを撮影して手術も考えるという対応をしていくのかは解らないが、さまざまな問題の根底が繋がっていると考えるならば、腰痛に対する患者教育は非常に大切な教育の一つであると私は考えます。

米国内科学会が更新した新ガイドラインは日本の現状の対応の2歩も3歩も先を言っている。
前回のガイドラインが米国でも守られていないと聞くが、今回のガイドラインで少しで対応の改善があれば幸いです。

腰痛はまず薬物療法以外を選択

米国内科学会(ACP)が先ごろ発行した新たなガイドラインによると、腰痛患者にはまず薬剤を用いない治療法を試すことが推奨される

オピオイド鎮痛薬は最終手段とすべきであり、アセトアミノフェンには効果が認められないため、今後は推奨しない。

明確な原因のない短期的な「非特異的」腰痛の多くは、加温や行動改善などの簡単な方法で改善する

これに対し「神経根性(radicular)=足の痺れ」がある腰痛は椎間板ヘルニアなどによる脊髄神経の圧迫に起因するもので、脚の放散痛や筋力低下、しびれなどの症状を伴う。

ガイドラインでは

一般に12週間未満の腰痛の場合は、温熱シート(あたためてください)、マッサージ、鍼治療、脊椎徒手整復(カイロ治療)により効果が得られる可能性がある

12週間以上続く場合でも、運動療法、鍼治療のほか、ヨガ、太極拳、マインドフルネスによるストレス軽減、ガイデッド・リラクゼーションなどの「心身」療法、認知行動療法が有効な場合がある

薬剤を用いる場合

イブプロフェン、ナプロキセンなどの非ステロイド性抗炎症薬(NSAID)または筋弛緩薬から開始し、効果がない場合はデュロキセチン、トラマドールなどが次の選択肢となる。

オピオイドは依存症や過量投与のリスクがあり、有効性を示すエビデンスも少ないため、やむを得ない場合のみ使用し、数日にとどめるべき。

今回の勧告は、腰痛治療に関するさまざまな研究のレビューに基づくものであるものの、薬物療法か否かを問わず、ほとんどの治療法は効果が「少ない」か「中程度」であることがわかった。

特に神経根性腰痛(脚に症状が出ている腰痛)については治療効果を示すエビデンスはほとんどなかったが、運動療法には有用性が認められた。(神経根症状は重篤な場合は時間がかかります。当院ではマイオセラピーをお勧めしています。)

付随論説を執筆した米ハーバード大学医学部准教授のSteven Atlas氏は、今回の勧告はプライマリケア医にとっては大きな変更であると指摘する。医師が患者に紹介すべき鍼師を知らない場合もあり、費用の問題もある。治療の決定は実用性の問題に大きく左右されると、Damle氏も認めている。(結局費用という現実的な問題がのしかかります。)

また、医師は複数の治療法を併用することも多く、もっと実際的な臨床試験が必要。慢性腰痛の患者は、治療に期待しすぎず、現実的に考えることも重要であるという。

なお、今回のガイドラインでは非侵襲的治療のみを取り上げており、薬剤注入や外科手術などの侵襲的治療については触れていない。(基本論外です)

Qaseem A, Wilt TJ, McLean RM, Forciea MA; Clinical Guidelines Committee of the American College of Physicians, Denberg TD, Barry MJ, Boyd C, Chow RD, Fitterman N, Harris RP, Humphrey LL, Vijan S. Noninvasive Treatments for Acute, Subacute, and Chronic Low Back Pain: A Clinical Practice Guideline From the American College of Physicians. Ann Intern Med. 2017 Apr 4;166(7):514-530. doi: 10.7326/M16-2367. Epub 2017 Feb 14. PMID: 28192789.

臨床現場からの腰痛治療の新ガイドラインを読んだ感想

かれこれカイロプラクティックを通して臨床に携わって10年以上になります。途中から各国のガイドラインを参考にしながら可能なかぎり効果のあがる腰痛治療を心がけてきたつもりです。

その経過でいろいろ見えてくるものがありましたので、私なりの意見を書いていきます。

現在の日本の医療ととても大きな隔たりがあるのが解かると思います。

さまざま理由があってそのような状態になっていると思いますので仕方がないのですが、患者さんの回復や医療費などを考えた場合はいつまでも流暢なことを言っていられないのではないかと思います。

具体的な意見:日常生活は続けたほうが良いが…

まず腰痛の時はよほどの痛みない限り安静にはしないほうがいいのです。強い痛みでも身体を動かしていくほうが(日常生活に近づける)早くよくなります。

しかし日本人の場合、サービス残業なんかで体力低下してヘトヘトになっている時は1日2日はグッスリ眠るいい機会になっている時もあります。

第一選択の保存療法について

温熱療法や、マッサージ、鍼治療、脊椎徒手整復により効果が得られる可能性があるとしているとありますが、この可能性があるというのがポイントかも知れません。

カイロプラクティックは確かに急性腰痛に効果が認められているのですが、イエローフラッグとよばれるストレス要因があまりにも大きいと効果がないこともあります。自律神経の働きで筋膜に痛みを出し続けている状態です。

これらのことは問診で確認したりやり取りの中で臨床家が感じ取っていきます。

このような場合は職場などでの人間関係や労使関係などを改善するように心がける必要があると思います。間違えていけないのは完璧なものを求めるのではなく、対話の機会を作り改善させていこうという方向性にしていくということです。

認知行動療法に取り組む方は人によっては大きな効果が出る可能性があるのですが、具体的に真剣に取り組めればご自身の腰痛の意味や環境との関わりを見出すことができます。

しかし先ほどのイエローフラッグの度合いや、さらに悲惨なブラックフラッグと呼ばれる労使間問題(ブラック企業など)が背景にありますと簡単ではなくなります。

基本的には笑うことが出来ない状態の方は抑鬱状態であると私は思います。そのような場合も回復に向かうのは遅いことがあります。

12週以上の慢性腰痛への運動療法

12週を超える慢性腰痛にヨガや太極拳が有効なことも勿論ありますが、私が気づいたのは腰に負担が掛かりすぎる使い方をしている人は効果が少ない傾向です。

そのような場合、腰の筋肉に負担のかからない使い方をリハビリで覚える必要があると思います。

一番多いのは腰の部分だけずーっと反ってる方、言い方を変えると反対に曲げる能力が落ちている方。

このような方は背骨のリハビリに着手しない限りヨガや太極拳をやっても有効でない可能性が高いと私は考えています。

認知行動療法に関しては、創始者のアーロン・ベックの言うとおり「活動記録表」を軽視している方。毎時間自身の活動記録をつけるという作業が、とても主体性を要求される作業なので本気で取り組む必要があります。

つまり「腰痛を治してもらおう」というスタンスの方は活動記録を付けることができないので、効果は全くありません。

痺れ・神経根症状

Googleで検索すると「神経根症状」と診断を出すお医者さまは5割くらいだそうです。

けど一般の方から神経根症状なんですが、と言われたことはないですが。皆さまは坐骨神経痛とか椎間板ヘルニアなどの症状で説明する方が多いです。

5年ほど前から痺れ症状はまとめて「神経根症状」と呼ぶように統一されたように聞いております。

基本的にはカイロプラクティックの脊椎操作は効果があるとは言えないです。ただし薄っすらとした痺れ感、何となく痺れてるという場合には効果は期待できます。

私自身は神経根症状は名前を変えただけで、的を得ていないことに変わりないと思っています。

筋膜がラインで繋がっているのですが、痺れがある部分はその部分自体の筋膜が症状を出していると考えています。筋膜をかなり強いアプローチでリリースしていくことで比較的早い段階で言わゆる神経根症状が減ってくることは望めると考えています。

最適化を考える慢性腰痛

症状を有している期間が長ければ長いほど、腰痛が当たりまえの生活になっています。

きれいさっぱり腰痛が無くなればいいのですが、現実的にはそのように考えると良い結果に繋がりづらいです。

方向性として最適化していく、常に最適化していくという方向性です。パソコンでもデフラグツールなどで「最適化」をしていい状態にしていくのと同じです。

貴方の腰は新品にはなりません。けれども使い方によっては随分快適に使えるようになってきます。そのために整理をして余分を排除して新しいライフスタイルを構築する、いまある部品をより良くしていく、というようなニュアンスです。

そうでなければ「まだここが痛い、ここがちょっと痛い」と痛みにこだわる生活になってしまいます。パソコンを例に出すと「初期化すれば?」という質問が飛んできそうですが、「初期化=記憶喪失」と一緒です。

パソコンは例えでが、人間は機械ではないというところが重要です。

腰痛へ本腰を入れる国々

腰痛へのガイドラインを最初に出したのはAHCPRだと伺っています。この中にカイロ治療の有効性も明記されているとか。これが10年間の調査の結果1991年の7月と11月に公表。正確にはカイロプラクティック治療というより、脊椎マニピュレーション いわゆる背骨の関節の調整ですね。

日本でも2012年に腰痛診療ガイドラインが発刊。ここに脊椎マニピュレーションの有効性が明記されています。

■AHCPR(アメリカ医療政策研究局)が『成人の急性腰痛診療ガイドライン』の作成に着手したのは、次の4つの理由があったからです。
【1】アメリカでは腰痛の罹患率が15~20%と高く、就業不能の原因として挙げられる第1位が腰痛で、就業年齢の50%が毎年腰痛を発症している。

The Adult Spine: Principles and Practice 

日本人が訴える症状のワースト3は腰痛・肩こり・関節痛ですから、腰痛を含む筋骨格系疾患はアメリカだけの問題ではありません。

ここから計算すると日本が腰痛診療ガイドラインを出したのが2012年末ですから、(正確には以前から存在したがエビデンスを基にしたものではない)20年ほど遅れをとっています。

本家のアメリカでさえガイドラインを臨床現場で遵守するのは難しいようで、腰痛患者は減っていないとも聞きます。それどころか腰痛患者に簡単に麻薬系鎮痛薬を処方していたので、ジャンキーが増えて社会問題化しています。

そう考えると日本では医療用麻薬を腰痛患者に処方しないから、一歩先に行っているのかもしれません。

これは経済的格差や病院経営にも関わる問題なので、何処の国でも一筋縄ではないようです。身体は正直ですから、いろいろ試してみると効果のある運動や施術に巡り合えると思います。

諦めずに前向きに腰痛対策をしましょう。

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