マイオセラピー®はどれくらい筋肉が緩むのか
「マイオセラピーでも緩まない筋肉」なんてキーワードで検索をかけている方もいらっしゃいます。
察するに業界関係者か、患者さんでマイオセラピーを数回受けてみて大きな変化がない、症状が改善しないという状況でいろいろと考えていらっしゃるのだと思います。
マイオセラピーを受けたての時期は、施術は刺激的ですし、マイオセラピーを受けても暫くすると症状が戻ってしまうので「このまま続けて大丈夫なのか?」と不安になる方もいらっしゃいます。
結論から言うと、続けていれば少しずつ緩んでくる、但し施術に慣れるに半年~1年はかかるります。
緩まない筋肉はあるのか?→コンクリート様になっている筋肉は期待しているほど緩まない
どれくらい緩むのか→マイオバイブによる施術に耐えれれば耐えるだけ緩んでくる
このことを施術側の立場から、受ける側の立場の両方でお伝えしていきます。何かのヒントになれば幸いです。
先ずは筋膜のイメージ
今までの医学ですと痛みを出しているのは「神経」とされています。マイオセラピー理論でも神経根の血流が減ることで痛みや痺れといった症状を出すとされています。
勿論神経根の血流回復は大切なことですが、近年の研究で筋肉を包んでいる「筋膜」自体が痛みを出すことが解かってきました。そのような研究から様々な角度から考える必要があると私は思います。
まず日本語で「筋膜」という言葉が独り歩きしてマーケティングワードになっていると思いますが、言葉の一人歩きのせいで、実際の身体の構造をイメージしづらくなっている方が多いです。
筋膜はタンパク質で構成されていますから、身体のいたるところにあります。
内臓にもあるし、骨の周りにも膜があります(骨膜)。それらは英語でいうと「Fascia」という単語になります。
オレンジの絵で考えてみましょう。
これは筋膜というより、もっと包括的なタンパク質の膜構造ととらえた方がよいと言われています。言えば身体中にあります。
この深みのある構造で、マイオバイブの先端が届く範囲であればその部分の筋肉は緩みます。深部になればなるほど施術者の力量も要りますし、患者さんに力が入りやすいです。
患者さんに力が入ってしまえば(むろん術者の熟練度にもよる)筋肉を固めてしまうので、力が抜けた状態に比べると緩みづらいです。
話を筋膜に戻しますと、昨今のブームで筋肉を包んでいる「サランラップのような膜」というイメージを受けやすいのですが、実際には身体中にある細かいメッシュのタンパク質だというころです。この構造は最終的には顕微鏡でしか確認できないほど微細で構造も最後は液状でネバネバしたもののようです。
注意1)筋膜は治療をしても戻ろう戻ろうとする(特に最初のうち)
人間の身体ですから、生体恒常性の観点からも、もともとあった状態で生活して安定していたわけで、その状態に戻ろうとします。(痛みがあろうがなかろうが)
硬い筋膜の状態に戻ろう、戻ろうとします。ですから来院のスパンで次回来た時に「まだ残っています」とか「1週間位良かったですけど、やっぱり痛い状態に戻ってきました」というのは正常です。(身体にとっては正常)
イメージ的には形状記憶シャツの様に元の線維の状態に戻ります。
なるべく戻らないようにしたいのですが、それにはストレッチ等の運動が必要不可欠です。
数十年かけて硬くなったタンパク質ですから、2.3回マイオセラピーを受けたところで大きな変化は望めません。
勿論施術後には随分と緩みますし血流もよくなります。
背骨の周りの筋肉が少しずつ緩んで、ある程度緩みが出てくるのに半年から1年は必要です。開発者の辻井博士によるところの「先ずは焦らず1年」というのはそのような意味の言葉です。
症状が10年以上ある方
勿論年齢や発症してから数か月のような症状の場合、すぐある程度の症状が消えて、維持できることもありますが、「マイオセラピーでも緩まない筋肉」のような単語で検索している方は、おそらくもっと長い時間症状を持っている方だと思います、10年、20年と…。
そして様々な治療法を試みた後にマイオセラピーを選択された方だと思います。
まずマイオセラピー自体は画期的な治療法であることは間違いないのですが、数回受けても大きな変化はないと思います。各治療院のホームページをしっかり読まれると良いのですが、「3~5年かけて根治を目指す」スタンスです。
受ける立場として、3年以上毎月マイオを受けている私の感想
私の場合、受けはじめはカイロ治療もさほど受けていない状態だったので、相当良くない背中でした。ガチガチの背中です。
マイオセラピーを受けた時、最初は痛くて痛くて「これは人間の受けるものではない」ような気さえしていました。
それでも施術後は驚くほど身体が軽くなるので続けてみました。最初の治療の後は16時間ほど眠ったことをよく覚えています。それだけ背中が緊張していたのでしょう。
月一で2時間の治療を受けているのですが、半年ほど受けたあたとに大きな瞑眩反応がありました。
私の瞑眩反応
身体がダルクてダルクて仕方ないような状態です。瞑眩反応は何回も何回もあると教えて頂いたのですが、その後も忘れた頃に瞑眩反応が幾度とありました。
瞑眩反応は漢方では「根本的に体質が変わる大切な反応」と言われています。個人的な感想なので人によって全然意見は違うのですが、筋肉の緊張によって精神も緊張しやすいし逆もあるのでしょう。私の場合はダルさが出たときは大いに睡眠をとり、回復するまで待ちました。
身体が緩んでますから、日常生活で無理をしないようになり結果心も体も緊張するシーンが減ってきたように感じています。自分の気持ちに素直になるというか…。押し付けられてきた価値観を筋肉(身体)が覚えていて、そこから解放されるような感覚です。(あくまでも私個人の感想です)
瞑眩反応は東洋医学の考え方でエビデンスはないのですが、昔から言われていることなので何かしらあると考えたほうが良いと私は考えています。
私の場合は半年置きくらいにダルさがありました。去年は瞑眩反応なのか無理をしすぎたのか解らないですが、咳が止まらなくなることがありました。
結果基本的な体調管理をよりしっかり行うことで、今年の春は13歳の時から苦しんでいた花粉症の症状もほぼありません。(追記:アレルギーに関しては一時的な改善でした。)
奥が深い根本治療
身体や気持ちはマイオセラピーを受ける回数が増えるとに楽になってきます。
最悪の時は腕に痺れがあったのですが今は全くありません。私はもともと痛がりなので、マイオバイブの刺激は毎回痛いですし、深い部分にアプローチしてもらうときや、運動不足の時、風邪気味の時などはそれぞれの理由によりかなり施術が痛いと感じます。
私が受けている個人的な感覚では、昔で言う所の「灸をすえる」という要素も含まれているように感じます。受けている時に省みる、ということの繰り返しである気持ちもあります。
3年以上受けて、3年以上提供していると、少しずつ創始者の辻井洋一郎先生のおっしゃっていたことが理解できてきます。そう簡単に筋肉は柔らかくならないのですが、確実に言えることは毎月受けている方と、そうでない方の背中の状態は全然違ってきます。
文字通りマイオセラピーでも緩まない筋肉はある が…
そして文字通りの「マイオセラピーでも緩まない筋肉」というのはあります。例えば数十年にわたる筋収縮、筋拘縮でコチコチにコンクリートのようになっている場合です。全く柔らかくならない訳ではないのですが、筋組織が線維化してしまっているので、殆ど緩みようのない部位です。
言葉を変えるとその部位は実際に解剖しないと解からないですが、推察すると皆さんが考えているような赤い筋肉ではなくなっていると言い換えてもいいでしょう。白くなって線維化しているものと考えられます。
そのような部位(範囲は人によります、数㎜から数センチ)は3年受けていても緩まない部位(箇所)です。少しは緩みますよ、少しは。その少しの緩みでも主観的には、もの凄く楽になります。
緩まない筋肉がある=絶望 ではない
注意したいのは、「緩まない≠症状が取れない」ということです。コンクリートのようになった部位は少し緩みます、その周りからコンクリ状になっている部位の周りを緩めることで背骨の可動域が増加します。
また他の部位との関連、動かし方の見直しをしていくことで何故その部位が硬くなったのかが見えてくると更に改善する余地が増えます。
ちなみに線維化してしまっている部位にマイオバイブを当ててもらっても感覚が無いのに近いような感じがします。その場合は痛覚線維が無くなっているとのことです。(血流不足が続いて)
私の場合は他の部位がかなり痛いので硬い部分を当ててもらうと物凄く気持ちが良い。温泉に浸かった時に「お~」と声が出てしまう、あの気持ち良さを感じます。私の場合20代でむち打ち症を経験していて左の首の付け根から左背中がコチコチになってます。これも人によって感覚は異なります。
背中の筋肉が緩んでくると、日常生活で背骨が動くようになるので、マイオセラピーの目的である脊椎神経根の血流を回復させられる=神経根症状から解放されるのです。
筋膜で考えるならば背骨の可動域が増すことでポンピング作用により筋膜に滞りやすい組織液(リンパ液など)に流動性が出て、痛み物質等が流れやすくなるので痛みが取れてくると言えるでしょう。
完璧を求めない
そして勘違いしていけないのは、多くの代替医療にいえることなのですが、「完璧を求めない」という立ち位置です。マイオセラピーを受けていても細胞が赤ちゃんのように若返るわけではありません。特に慢性症状があった場合は完璧を目指さず、「最適化を目指す」ということが大切です。
このことは医学的観点からかなり研究が進んでいます。
以下2015年の記事引用です(ちょい長いですが興味のある方はお読みください)当院で慢性痛の患者さんにお渡ししているプリントです。
慈恵会医大教授 加藤総夫氏の言葉
■慢性痛は脳が作り出す防御機構 気にならなくすることが治療のゴール
東京慈恵会医科大学神経科学研究部教授 加藤総夫氏に聞く
東京慈恵会医科大学は昨年4月、文部科学省の支援を受け「痛み脳科学センター」を創設。全学を挙げて痛みの機構解明や治療法開発に取り組んでいる。センター長の加藤氏に、最新の脳科学研究から分かってきた慢性痛の脳内機構と治療の方向性を聞いた。
──「痛み脳科学センター」とは興味深いネーミングです。設立の経緯は?
痛みは、ほとんど全ての臨床領域において患者さんの主要な訴えです。傷害や炎症は強い急性痛を引き起こし、警告信号として働きますが、慢性化した痛みは警告信号としての役割を果たさないばかりか、患者さんを苦しめ続けます。
近年の研究から、この痛みの苦痛は脳の神経回路の働きによって生み出されることが明らかになってきました。痛みの苦痛に関わる脳内の神経回路が痛みの慢性化に伴って可塑的に変化し、苦痛を持続的に生じやすくすることがその本質的原因であることが分かってきました。
私たちは脳科学の最新技術を用い、こうした痛みの脳内機構の解明と緩和方法の開発に取り組んできました。苦痛の緩和は本学が目指す全人的医療にとっても重要な課題であることから、先端医学推進拠点群の1つとして「痛みの苦痛緩和を目指した集学的脳医科学研究拠点」をつくることを決めました。
それが文部科学省私立大学戦略的基盤形成支援事業に採択されたため、その支援を受けた研究を推進すべく立ち上げたのが「痛み脳科学センター」です。基礎・臨床医学講座の兼任メンバーからなる仮想的研究センターですが、私たち神経科学研究部が中核となり多岐にわたる分野の研究者が参画して多面的な痛み研究を推し進め、「痛みのわかる慈恵」として成果を痛みに苦しむ患者さんに還元できればと考えています。
──痛みが続くのは傷害や炎症が治らないからと考えがちですが、そうではないことが脳科学で分かってきた?
組織が傷害されたり炎症を起こしたことを神経が知ることを「侵害受容」といいますが、侵害受容から中枢に信号が伝達されることと、脳が痛みを感じることは全く違うことが疼痛モデル動物やヒト脳機能画像化研究で明らかになってきました。動物実験では、扁桃体、前帯状回、一次体性感覚野、側坐核、前頭前皮質などで、慢性痛の成立に伴いシナプスが可塑的変化を起こすことが証明されています。
また、腰痛患者群を1年以上追跡してfMRI撮像を続けた研究によれば、急性痛・亜急性痛では島皮質と視床、前帯状回の活動が亢進しましたが、慢性化に伴いこれらの活動は消失し、逆に扁桃体や前頭前皮質といった負の情動関連領域の活動が亢進することが報告されています。
これらの結果から、慢性痛は「長く続く急性痛」ではなく、急性痛とは別の独立した固有神経系の活動状態に起因するものと考えられ、侵害受容系から情動系へのシフトが痛みの慢性化の本態である可能性が提唱されています。
──先生は特に慢性痛に伴う扁桃体の可塑性変化に注目されていますね。
扁桃体は、恐怖学習、他者の恐怖表情の判断、他者との距離・視線判定などに関わっており、自分に及ぶかもしれない危機を判断する部位です。また、この部位を切除した症例では痛みをあまり感じない、痛みに危機意識を持たないことが報告されています。
痛みの慢性化に伴い扁桃体が可塑性変化を起こすことは、個体が生存可能性を高めるための防御的恒常性維持機構でもあるわけです。慢性痛モデルでは扁桃体以外にも、分界条床核や前帯状回、側坐核など認知機能や情動に広く関与する脳内部位の関与が明らかにされています。
──個体にとっては生存危機の回避が何より重要ですから、痛みは脳内の様々な領域に影響を与えて各機能に優先してその回避を図ろうとする?
そうですね。生物進化の過程を考えると、環境に適応して生存確率を上げた種が生き残ってきたわけです。高い優先度を持って痛みを処理し、適切な応答を引き起こすことにより個体の生命維持に貢献する神経回路は、進化の比較的早い段階で成立した機構と想像されます。
一方、それは高い優先度で痛みが意識や情動に割り込むことによって日常生活の中での「苦しみ」を生じる、という機構でもあります。慢性痛の成立は、体全体が将来の有害性回避に備えた「警戒態勢」に入ったままの状態ともいえます。
慢性痛の患者さんが「毎日普通に生活していても痛みのことばかり考えてしまう」と語るのはそういう理由からでしょう。逆に理学療法や薬物療法などで良くなった患者さんがよく口にする言葉が「痛みが気にならなくなりました」というものです。
慢性痛の本態が脳の可塑的変化である以上、治療のゴールは痛みをなくすことではなく、痛みを「気にならなくする」ことではないでしょうか。「気にならなくする」とは言い換えると、日常生活の意識の最上位に割り込んでいる痛みの優先度を下げることです。その手段として、運動や理学療法、心理療法があるでしょうし、扁桃体をはじめ痛みの情報に関係するシナプス伝達の増強を弱める薬物治療も考えられるでしょう。既存薬でも例えば、扁桃体にはプレガバリン(薬品名:リリカ)の結合部位が豊富にあることが知られています。
また、痛みによる脳の可塑性変化をできるだけ進行させないためにも痛みの早期治療がより重要になるでしょう。このような「痛みの苦痛」生成機構の理解に基づき、慢性痛患者の「痛みの割り込み優先度を下げる」ことを目指した治療を期待したいですね。
このような事も勿論考慮した上で、マイオセラピーは非常に効果的です。マイオセラピーでも緩まない筋肉(部位)はありますが、症状は減ってきます。数回の治療で諦めるのは早すぎるとおもいます。
上記の気にならなくするという部分では、マイオセラピーを受けていると治療自体が刺激が多いので、脳内でエンドルフィンが出やすくなります。このことも大切な治療効果と言われています。
時間を掛けても症状を軽減させていく本当の価値
慢性痛は他の疾患の発生を助長することが統計的に解っています。今ある腰、頚の痛みが癌などのリスクを上げるのです。これは一端大きな病にかかってしまってからでは費用も時間も膨大なものになりますし、そうなってしまってからでは手遅れになることもあります。
毎日使う身体だからこを日ごろからなるべく良い状態いしておきたいもの。マイオセラピーはそれを実現してくれる素晴らしい治療法です。
しかし繰り返しますが10年単位であるような、そして年齢とともに悪化してきているということは、そのライフスタイルでは悪化する=筋肉に負担が掛かっているので、ライフスタイルも変化させつつ、少しずつ症状が減ってくると考えてください。
まずは焦らず1年、受けてみましょう。