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伊藤孝英
院長
ロイヤルメルボルン工科大学健康科学部カイロプラクティック学科日本校卒業。B.C.Sc(カイロプラクティック学士), B.App.Sc.(応用理学士)。従来の筋骨格系障害としての腰背部痛から生物社会心理的要因としての腰背部痛へとシフトチェンジ。鬱や不安障害にも着目したマルチモデルで腰痛ケアを行っています。

自律神経症状の考え方

自律神経の状態が良くないという悩み、訴えは多いです。カイロプラクティックという人の身体を手でケアする仕事をしていると良くわかることがあります。

不眠や冷え、不眠、体調不良などで悩んでいる方の参考になれば幸いです。

目次

自律神経は自分で律動している神経

神経ニューロンのイメージ
自律神経の考え方

自律神経症状が併存する筋骨格系障害患者さんは少なくありません。

このような状態の方は長年、さまざまな症状で生活の質を落としています。この状態を薬だけで治すという捉え方をしている間は、きっと根本的な変化はないでしょう。

自律神経は自分で律動している神経です。

もし入力出力として考えるなら、何かの入力に対しての神経の自律的な反応の結果です。

例えば寒い環境にいくと鳥肌がたつ。これも自律神経の反応です。

カイロプラクティックでは脳と身体が情報を交換しあっていると考えます。これを安全ピンサイクルと言います。外界から何らかの入力があり、脳が反応して身体に情報を返す。または脳の指令で行動をして、その結果何らかの情報が脳に返されます。つねに情報は中枢神経と身体の組織、細胞を行き来しています

環境に適応している自律神経

1.「冷え」を例にして考える自律神経

人間の身体
全身は連帯しており、自律神経は環境に素直に反応する

例えば慢性的な「冷え」があってどうしようもないという女性がいるとしましょう。

勿論本人は自律神経が不具合を起こしていて冷えていると考えています。

生活習慣をお伺いすると

  • 「湯船に浸からなくてシャワーだけの生活」
  • 「運動習慣はほとんど無い」
  • 「夏でもエアコンをつけっぱなし」

など基本的に冷え続けるようなライフスタイルをとっている事は珍しくありません。

このようなライフスタイルの方の自律神経は、

  • 汗腺を開かなくてよい
  • 筋ポンプ運動がないので血流をあげなくてよい
  • 夏でも体温があがらず外気温と差(ストレス)に反応しない

と言ったような反応を自然にしています。

デスクワーク、テレワークでこれといって運動もしていない、買い物に行く時間もなくてデリバリーサービスが多いなど、地球上の動物としての活動をしていないわけで、自律神経の正常な反応であるとも言えます。※夏のエアコンに関しては熱中症にならない範囲でお考えください。

反応ができない、適応能力の低下

同じようにな生活をしていても、筋トレは定期的に行っているなら、そうでない人よりは冷えを感じないでしょう。

生活習慣が人間らしい機能を果たすための水準を満たしていない為、自律神経も機能を発揮できないと言えます。

2.「眠れない」を例にして考える自律神経

うつ向く少女
いろいろなことはセットになっている

同じように夜眠れないと言う方がおられます。最近では多いのが

  • スマホを眠ろうとする直前まで眺めている
  • 夕方までカフェインを取っている
  • 夕食を21時以降に摂ることが多い
  • 朝ごはんでたんぱく質をとっていない
  • 湯船で身体を温める意識がない

など特徴があります。

このような方の自律神経の反応は

  • 網膜が光刺激を受けて交感神経が優位に働いている
  • 覚醒作用のあるカフェインが血中に残っており覚醒しようとしている
  • 消化するために胃が活動している
  • 睡眠導入ホルモンのメラトニンの材料が少ないから作らなくていい
  • 深部体温下がらないので活動しつづけようとする

という自然な反応をしています。調子を失っているわけではありません。

3.「息苦しい」を例にして考える自律神経

息苦しい、胸が苦しいと言う方はどうか?

  • 運動をしていない
  • 姿勢が悪い
  • 腹式呼吸や胸式呼吸を意識できない

などといった特徴があります。

もうお判りですね。呼吸が浅いことが多いのです。

このようなライフスタイルの方の外界からの刺激に対する自律神経の反応としては

  • 有酸素運動、無酸素運動に限らず呼吸の負荷が少ないので呼吸中枢に刺激が入らない
  • 姿勢が悪いと胸郭が潰れてしまうので肺活量が少なくなり、その範囲で呼吸するのが習慣化
  • 呼吸を意識しない為、どんどん呼吸が浅くなってくる

思想家の内田樹先生は「人間は意識しないと深い呼吸をしない」と言います。

呼吸が浅いということは酸素の取り込みが少ないため、全身に行きわたるはずの酸素が足りません。自律神経どうのというより酸欠で本当に苦しいのです。

豊かで便利な都市生活で、人間が生きていく上で本来必要な呼吸の深さを忘れてしまっている。これは自律神経が失調した状態なのでしょうか?

いいえ違います。呼吸のしかた、肋骨の使い方が分からないのです。長年の浅い呼吸で身体が当たりまえになっているのだけれど、自分で気づいてないのです。

統合的に考える自律神経症状 科学的根拠

一般的に考えると、つまり西洋医学的に部分的な疾患として捉えると、自律神経の不具合が種々の症状を招くということになりますが、実際は症状は結果であって自律神経がそれを介しているという考え方が現実的だと私は思います。

カイロプラクティックの最大の特徴の一つである「全体性」。人間全体を診ることで判ることがあります。

例えば不眠を統合的に考えてみる

2015年 ブラジルでの研究
閉経後の女性の睡眠の質が下がる、閉経後に無呼吸低呼吸指数(AHI)が高く、SaO2(血中酸素濃度)が低いということでした。
調整された分析では、閉経後の初期段階の女性と後期段階の女性の間に差は見られませんでした。
この結果は、閉経自体が年齢に関係なく、特に無呼吸指数と血中酸素濃度と客観的な睡眠パターンに重要な影響を及ぼしていることを示しています。

Hachul H, Frange C, Bezerra AG, Hirotsu C, Pires GN, Andersen ML, Bittencourt L, Tufik S. The effect of menopause on objective sleep parameters: data from an epidemiologic study in São Paulo, Brazil. Maturitas. 2015 Feb;80(2):170-8. doi: 10.1016/j.maturitas.2014.11.002. Epub 2014 Nov 13. PMID: 25481384.

自律神経系とホルモンの関係は直接的に影響しあいます。

(神経系の詳細解説へ移動)

たとえばこの研究では睡眠の質が落ちるのは閉経後に呼吸の悪化が出てくることが原因だと言っています。

そうするとホルモン療法か?となりますが、ご存じの通り長期利用は癌のリスクを高めます。

女性の睡眠障害の統合的アプローチ

不眠症の研究では、2000年に非薬理学的方法、つまり薬でコントロールしない方法が一番安全でしかも治療成績が良いことが言われています。

Perlis ML, Youngstedt SD. The diagnosis of primary insomnia and treatment alternatives. Compr Ther. 2000 Winter;26(4):298-306. doi: 10.1007/s12019-000-0033-6. PMID: 11126102.

これは2021年現在、実際に日本で不眠に苦しんでいる人にとって理解できないかもしれませんが、睡眠障害の第一選択はもう薬ではなく、認知行動療法です。

2012年の研究ではマッサージは更年期女性の睡眠の質改善に効果的
マッサージ療法後の睡眠パターンと生活の質の改善を示しています。これらの発見は、閉経後の症状、特に不眠症の治療に対するマッサージ療法の有効性を示している。

Hachul H, Oliveira DS, Bittencourt LR, Andersen ML, Tufik S. The beneficial effects of massage therapy for insomnia in postmenopausal women. Sleep Sci. 2014 Jun;7(2):114-6. doi: 10.1016/j.slsci.2014.09.005. Epub 2014 Sep 16. PMID: 26483913; PMCID: PMC4521661.

研究となると対象を決める必要があるので、「閉経後の女性」ということになりますが、マッサージを受けたことがある人は年齢問わず睡眠の質があがることを体感的に知っています。

これは自律神経が調子が悪かったのではなく、筋肉が緊張していたのをほぐしたということです。

2017年の論文です。ブラジルでは統合医療の形で、女性の不眠をケアする施設があり、フラワーエッセンス、姿勢再教育、筋膜リリース、キネシオ療法、手技療法、カイロプティック、針、ヨガ、マインドフルネスなどで女性の不眠をケアし良い結果を得ている。

Frange C, Banzoli CV, Colombo AE, Siegler M, Coelho G, Bezerra AG, Csermak M, Naufel MF, Cesar-Netto C, Andersen ML, Girão MJBC, Tufik S, Hachul H. Women’s Sleep Disorders: Integrative Care. Sleep Sci. 2017 Oct-Dec;10(4):174-180. doi: 10.5935/1984-0063.20170030. PMID: 29410750; PMCID: PMC5760052.

日本の場合は病院で受けられるところは、まだ少ないでしょうが民間サービスでいろいろと安価に提供されています。薬を飲み続けている方は、副作用があることは知っていると思いますので、これらの情報を参考に行動を変えていきましょう。

どのような自律神経症状に脊椎マニピュレーションが効果的か

自律神経症状を主訴としてカイロプラクティックケア受ける場合、筋緩和操作、脊椎マニピュレーションは双方効果的であるのですが、上記のような生活習慣を改めていく健康指導も大切です。

日本の社会的認知ではカイロプラクティックは「ボキボキ背骨を矯正する人」ですが、カイロプラクティックは「ヘルスケアの専門職」です。

脊椎マニピュレーションはカイロプラクティックにおける特徴的な手技になります。

(世界カイロプラクティック連合のカイロプラクティックの定義へ移動)

単に筋骨格系が張っていて交感神経系優位の状態が数週間続ている結果、不眠傾向であったり、寝つきが悪い、イライラしやすいという症状はカイロプラクティックによる背骨の矯正は効果的です。

「冷え」でも実際に冷えていないのだけれど冷えを感じている「冷え感」の場合もカイロプラクティックによる背骨、骨盤の矯正は効果的であると言えます。

いわゆる自律神経症状が出て短期的なものなら効果が早期に現れますし、長期となると症状自体が生活習慣になっていますから、ライフスタイルの改善が必要となります。

(そういう意味では不眠傾向がある時に迂闊に睡眠薬を使用すると後々の代償は計り知れないと私は思います)

さていわゆる自律神経症状が長期化している場合、上記の例ですと「湯船に浸かり」「有酸素運動をして」「夜はエアコンを切って」という具合に生活習慣を少しずつ改めていくことが非常に大切になってきます。

次のページは、「自律神経の問題が広がっている場合」「具体的に自分で自律神経のバランスを調べる方法」です。

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