結論:首へのカイロプラクティックは “極めて稀にリスクがあるものの、正しい教育と手技で安全に運用できる施術” です。世界のガイドラインや研究では、頚椎マニピュレーションによる血管イベントは40万〜585万回に1回、死亡率は0.000000268%と報告されています。
一方で、自然発症の脳梗塞と区別が難しいことや、研究方法の違いによって数字がばらつくため、「危険」という印象だけが独り歩きしやすいテーマでもあります。
このページでは、世界の統計・論文・WHO基準をもとに、何が分かっていて、何が誤解されやすいのかを整理し、さらに当院がどのように安全性を確保しているか をわかりやすく解説します。
ガイドラインがある=基本的には安全に運用できる
カイロプラクティックの特徴である背骨の矯正は、専門用語で「脊椎マニピュレーション」と呼ばれます。皆さんが「首をひねるのが怖い」と感じるとき、多くの場合この手技のことを指しています。
※脊椎マニピュレーション:症状の緩和と関節機能の改善を目的に、梃子(てこ)の原理を利用して脊柱に瞬間的な力を加える手技療法。
では、この手技がどの程度のリスクを持つのか。ここからは、世界で用いられているガイドラインや統計をもとに、実際の事故の発生率を見ていきます。
カナダの首の痛みへのガイドラインでは100万回に1回
成人の為のエビデンスに基づく首の痛みの治療ガイドライン2005
椎骨動脈解離の理論的危害は報告されていませんが、分析によれば、100万回の頸椎操作の後に1つのVADが発生する可能性があります とされている。
Canadian Chiropractic Association; Canadian Federation of Chiropractic Regulatory Boards; J Can Chiropr Assoc. 2005 Sep;49(3):158-209. PMID: 17549134; PMCID: PMC1839918.
なぜ危険と言われるのか?
1. 自然発症の脳梗塞と区別がつかない
脳梗塞の前兆には「首痛・頭痛」が多く、その症状で医療機関やカイロを受診した後に発症するケースがあります。このため、施術が原因のように見えてしまう誤解が生まれます。
2. 研究方法の違いで数字が大きく変わる
世界の研究では「リスク上昇なし」から「6.91倍」まで幅があります。これは 自然発症の混入・母集団の違い・統計方法の違いによるもので、 数字のバラつきが “危険性の証拠” ではありません。
3. ニュースがレアケースだけを報道する
実際の発生率は 40万〜585万回に1回と極めて稀ですが、ニュースではレアケースだけが取り上げられるため、「危険」という印象が強く残りやすくなります。
4. 危険なのは “回転伸展スラスト” であり、国際基準の手技ではない
厚労省が危険とするのは 急激な回転+伸展を伴う手技です。国際基準のカイロプラクティックでは 直線的で伸展を伴わないスラストを用いるため、危険とされる手技とは異なります。
これまでの世界の研究まとめ(安全・危険の両方)
首への脊椎マニピュレーションをめぐっては「危険だ」とする研究と「危険性は確認できない」とする研究が長年にわたり並行して存在しています。数字が大きく異なるのは、研究方法や対象者、自然発症との区別の難しさが影響しているためです。ここからは、実際にどのようなデータがあり、なぜ結論が分かれるのかを順番に整理していきます。
先ず2010年Cassidyらの調査では問題ない
まず2010年にCassidyが首の脊椎マニピュレーションは特に脳卒中のリスクを上げるわけではないとの大規模調査の結果を出します。
この研究では、のべ1億人の入院患者のデータを調査。
- 入院前にカイロプラクティックを訪れていたか
- プライマリケア医を訪れていたかを比較
- 先ず分かったのは、脳卒中になって入院した方々は、入院前30日以内に頭痛や首痛などの症状を訴えて何らかの治療を受けている。
- 頭痛や首痛でプライマリケア医、もしくはカイロプラクティックを利用していた人は、脳卒中以外で入院した人の3倍多かった。
言い方を変えると、脳卒中を起こして入院した方は、頭痛や首痛を訴えて医者かカイロプラクティックのどちらかを受診していたケースが多い。
カナダのオンタリオ州の病院に入院した累計計1億人のデータを調べた。
脳卒中で入院してきた人たちの入院前の行動を比較します。先述のとおり彼らは頭痛や首痛でプライマリケア医やカイロプラクティックを受診しています。
プライマリケア医を受けたグループとカイロプラクティック受けたグループを比較しても、脳卒中を起こす率に差はなかった。
Cassidy JD, Boyle E, Côté P, He Y, Hogg-Johnson S, Silver FL, Bondy SJ. Risk of vertebrobasilar stroke and chiropractic care: results of a population-based case-control and case-crossover study. Spine (Phila Pa 1976). 2008 Feb 15;33(4 Suppl):S176-83. doi: 10.1097/BRS.0b013e3181644600. Erratum in: Spine (Phila Pa 1976). 2010 Mar 1;35(5):595. PMID: 18204390.
これが2010年に出された論文の主旨です。つまり首へのマニピュレーションが特別に脳卒中のリスクを上げているわけではない、という主張です。
ただし、すべての研究が安全性を示しているわけではなく、注意すべきデータも存在します。
次に2012年システマティックレビュー「脳梗塞と関連性がないわけではない」
システマティックレビューは最上級の研究方法です。
先にお伝えしたCassidyの論文から2年後に出されたものですが、このシステマティックレビューでは「脊椎マニピュレーションと脳梗塞には全く関連性がないわけではない」としています。
2012年のシステマティックレビュー
システマティックレビューの結論としては首のマニピュレーションと脳梗塞の強い関連性は見られない、しかし全く関連性がないわけではない。
Haynes MJ, Vincent K, Fischhoff C, Bremner AP, Lanlo O, Hankey GJ. Assessing the risk of stroke from neck manipulation: a systematic review. Int J Clin Pract. 2012 Oct;66(10):940-7. doi: 10.1111/j.1742-1241.2012.03004.x. PMID: 22994328; PMCID: PMC3506737.
将来的には交絡因子とバイアスの可能性を最小化して、理想的には十分な数のケースをサブグループとして設け、首へのマニピュレーションの種類や首の動きについて解析することが望まれる。
この調査ではCassidyの結論のように、「全く関連性が無い」とは言えないので、どのようなテクニック、首の動いた方向なども踏まえて、解析することが必要とのことです。
つぎに反対意見です。注意すべきデータも存在します。
2014年 メディカルDr.Xuemei Caiら 6.91倍リスクup
さてシステマティックレビューから更に2年後、先ほどの2010年のCassidy-Studyへの反論で、カイロプラクティックが危険だという趣旨の論文が、今度はメディカルドクター側から出されます。
現在日本で「カイロは危険だ」という論調の根拠はこの論文のようです。
45歳以下への首へのマニピュレーションは危険である可能性
2010年に出されたCassidy studyへの反論として、Cassidyの時と同じ1億人のデータを使って、統計方法を変えると、首への脊椎マニピュレーションは倍脳血管障害発生リスクがあがり危険である。
この研究は、具体的にはCassidyらの研究に、+αで①内頸動脈の解剖、②椎骨動脈の解剖、③他の動脈の解剖の分類を付け加えて、なおかつこれらの分類された人達が、母集団と同じだけ脊椎マニピュレーションを受けていたと仮定して計算した場合、45歳以下で頸椎マニピュレーションを受けると脳血管障害リスクが6.91倍上がる可能性がある。
Cai X, Razmara A, Paulus JK, et al. Case misclassification in studies of spinal manipulation and arterial dissection. J Stroke Cerebrovasc Dis. 2014;23(8):2031-2035. doi:10.1016/j.jstrokecerebrovasdis.2014.03.007
男性医師この論文は方法変えて統計をとると、2010年に出されたCassidy studyの安全性は覆る。Cassidyの統計の取り方がインチキだと主張したわけです。
この方法論でオンタリオ州のデータで統計をとっていけば、頚へのマニピュレーションは45歳以下では危険であるが、実際に臨床統計はとっていないので可能性があるという論文です。
さて、論争にはさらに続きがあります。
2015年Chadwick L R Chungら体系的レビュー「危険だと判断できる研究は見つからない」


「Xuemei Cai先生らの6.91倍危険論文」の1年後、別のシステマティックレビューが提出されます。
システマティックレビューとは、地球上に存在する質の高い論文を、専門家が批判的に読んで吟味するという、最高レベルの論文です。
頸椎操作と椎骨動脈乖離の発生率を測定した疫学研究は見つかりませんでした。
同様に、頸椎の操作が椎骨動脈解離に関連しているかどうかを判断する研究は見つかりませんでした。頸椎操作後の内頸動脈乖離の発生率は不明です。
首の痛み、腰痛、または頭痛に対する他の医療介入と比較した、頸椎操作後の椎骨動脈解離の相対リスクも不明です。
いくつかの症例報告と症例シリーズが頚椎の操作と、椎骨動脈解離の関連性の仮説を提起していますが、この仮説を検証する疫学研究は見つかりませんでした。
Chung CLR, Côté P, Stern P, L’Espérance G. The Association Between Cervical Spine Manipulation and Carotid Artery Dissection: A Systematic Review of the Literature. J Manipulative Physiol Ther. 2015 Nov-Dec;38(9):672-676. doi: 10.1016/j.jmpt.2013.09.005. Epub 2014 Jan 3. PMID: 24387889.
2015年の時点で、システマティックレビューにおいて危険であるとは判断できない、と言っているので、現時点で「危険」という事は非科学的だと言えます。
これ以降の疫学研究は今のところありません。
ネット上でも危険を煽る記事が散見されますが、引用論文がなく脊椎マニピュレーションをする技術が無い方が安全性を宣伝にするために書いた記事であると考えられます。
実際の発生率
死亡事故は”極めて稀”だが確率は?
頚椎への施術は日常的にお身体のメンテナンスでカイロプラクティックをご利用になっている方も気になるところだと思います。日本カイロプラクターズ協会のホームページからの引用になります。
頚椎アジャストで脳血管障害が起きる確率
http://www.jac-chiro.org/research_05.html
WHO指針に準拠した大学教育が公的に実施されている海外では、頚椎マニピュレーション(頚椎アジャストメントと同義)による脳血管障害の発生頻度は40万回に1回 、100万回に2~3回 、100万回に1.46回 、130万回に1回 、585万回に1回 などと報告されています
論文にもよりますが数十万から週百万回に1度の確率で脳血管障害の発生リスクがあります。
カイロプラクティックが法制化されている国々では日常的に頚椎のマニピュレーションが行われておりますので、このような統計が出されています。
最も批判的な論文から考える
本件に関して最も批判的な論文は、2011年にオーストラリアで調べられた論文で内頸動脈解離が起きたケースを医療記録から取り出した研究。
55歳以下への首へのアジャストメントは他の原因で起きる内頚動脈乖離による脳卒中より約23倍リスクを上げるという報告。
結論として1/958回、施術後3週間以内に動脈乖離による事故が起きる。
Thomas LC, Rivett DA, Attia JR, Parsons M, Levi C. Risk factors and clinical features of craniocervical arterial dissection. Man Ther. 2011 Aug;16(4):351-6. doi: 10.1016/j.math.2010.12.008. Epub 2011 Jan 20. PMID: 21256072.



この論文の確率だと日本でも毎日、カイロプラクティックや整体の矯正による脳卒中などの事故が起きているはずだけど、ニュースはありません。
死亡確率は0.000000268%
報告によりバラツキがあるようですが、日本カイロプラクターズ協会のホームページからは40万回から585万回に事故が1回起きうるという数値が出されています。
確率的には0.00025%~0.000017094%という事になります。
これは脳血管障害が起きる確率であって死亡確率ではないのですが、参考になる数値として挙げておきます。
the frequency of serious adverse events varied between 5 strokes/100,000 manipulations to 1.46 serious adverse events/10,000,000 manipulations and 2.68 deaths/10,000,000 manipulations.
Gouveia LO, Castanho P, Ferreira JJ. Safety of chiropractic interventions: a systematic review. Spine (Phila Pa 1976). 2009 May 15;34(11):E405-13. doi: 10.1097/BRS.0b013e3181a16d63. PMID: 19444054.
とあります。40年間分PubMedとCochrane Libraryのデータから研究方法に関わらず集められたデータからの計算によると
10万回に5件の脳卒中という報告から、1000万回に1.46件の重篤な事故、1000万回に2.68件の死亡例まで幅がある。
死亡する確率は0.000000268%
重篤な有害事象は動脈解離、骨髄症、椎間板押出、硬膜外血腫など。
死亡確率
余談になりますが、年末ジャンボ1等の当選確率が1,000万分の1という考え方があるそうです。
頚椎マニピュレーションによる死亡率は2.68 / 10,000,000(=約1/373万)と報告されています。
これは年末ジャンボ宝くじ1等(1/1,000万)と比較すると
- 数学的には「ジャンボの約2.68倍当たりやすい」数字だが
- 実際には人が1,000万回も施術を受けることはないため
- 現実世界ではジャンボの方が圧倒的に起きやすい
という位置づけになります。つまり、「1/373万」という極めて稀な確率で日常生活ではほぼ起こり得ないレベルのリスクです。
厚生労働省の意見は
この点で厚生労働省は何とコメントをしているのか。
一部の危険な手技の禁止
カイロプラクティック療法の手技には様々なものがあり、中には危険な手技が含まれているが、とりわけ頚椎に対する急激な回転伸展操作を加えるスラスト法は、患者の身体に損傷を加える危険が大きいため、こうした危険の高い行為は禁止する必要があること。
厚生労働省 医業類似行為に対する取扱いについて
青ラインの部分の「回転伸展操作」という表現です。国際基準教育の中で代表的なスラストは直線的で伸展を伴いません。やや専門的になるので解説しますと「標的になる関節は直線的に動かされ、伸展は危険である」という教育を受けています。
実際に大学教育での「頚椎スラストの単位テスト」は「回旋になっていないか、頚椎は伸展していないか?」という項目が最重要な項目になります。
事故の発生は頚椎が伸展して、回旋するときに起こりやすいからです。
当院の安全対策
当院では国際基準の教育に基づき、頚椎を伸展・回旋させる危険手技は一切行いません。問診・既往歴の確認を徹底し、必要に応じて安全な代替施術へ切り替えます。常に患者さんの状態を最優先に、安全性を確保しています。
カイロプラクティックの死亡リスクまとめ
カイロプラクティックの首への施術は全くの0リスクではありません。
しかし首の痛みも軽減する効果が認められ、世界中で法制化され有益であると判断されているカイロプラクティックですから一概に不安を煽るだけでは国民の利益になりません。
上記のような対比をして、本当にカイロプラクティックが危険であるかを、それぞれの方が考えてほしいです。
そのうえで「それでも首へのアジャストが怖い」という方は申し出てくだされば、他の施術方法で対応することができます。遠慮なく身近にいるWHO基準のカイロプラクターにお伝えいただければと思います。
また筋骨格系症状への施術もさまざまな方法があります。カイロプラクティックのスラスト法はとても効果的ですが、別の方法で首の症状を軽減させることも可能です。
▼ 医療行為との比較も知りたい方へ
手術・投薬・精神科医療とカイロプラクティックの安全性を、国内外の研究をもとに中立的に比較したページを公開しています。
👉 医療行為とカイロプラクティックのリスク比較(科学的な解説)
https://chirosonomanma.com/a-scientific-explanation-of-the-risks-of-medical-procedures-and-chiropractic-care/

