腕の痺れ、頸椎ヘルニアと診断を受けて2年

腕に痺れあり、3か所の頚部椎間板ヘルニアを整形で指摘された30代男性

腕に痺れあり、3か所の頚部椎間板ヘルニアを整形で指摘された30代男性。

この男性の症状は首まわりの症状と左手の親指から中指にかけてつながった痺れです。俗にいう神経根症状です。

頚椎の椎間板変性は実に多くあり、無症候性(痛みなどの症状がない)椎間板変性も多くあります。半分の頚椎椎間板ヘルニアは無症候性であるといわれており、首、腕の症状と関連しているかどうかを判断するにはディスコグラフィー(椎間板造影)が有効です。(Baogan Peng , Michael J DePalma )

2015年の頚椎椎間板ヘルニアの治療指針では、少なくとも6週間は手術以外の保存療法をおこなう必要があると断言しています。この保存療法期間中に75-90%の患者さんが回復します。この論文では保存的治療は、固定化(コルセット?)、抗炎症薬、理学療法、頸部牽引、硬膜外ステロイド注射となっています。(Woods BI, Hilibrand AS)
※硬膜外ステロイド注射は役立つかもしれませんが、深刻な合併症のリスクが高くなります(2016,Childress MA, Becker BA)

カイロプラクティックは理学療法の一部になりますので、カイロプラクターによる神経根症状の管理で症状が改善するという例です。

腕の症状は一般的で約20%の方にあり、身体の他の部分にも症状ある

なんらかの腕の慢性的な症状は、2003年の無作為による調査では20%の人が持っているそうです。

ですから多くの方が何等かの腕の症状があります。(Gummesson C、Atroshi I、Ekdahl C et.al)

ちなみにこの論文では、腕に症状のある方のうち84%の方は、身体の他の部位にも痛みがあると報告しています。

この症例の男性は、病院で3か所のヘルニアを指摘され、2年経過しても大きな変化がないということで、カイロプラクティックを訪ねてくださいました。

慢性的な腕の痺れを整理して考える

先ず腕の症状ですが、上記の通り多くの方が抱えている身体症状の一つです。診断名、治療法はいくつもあります。

この症例では整形外科で3か所のヘルニアの診断がでています。しかし具体的な外科的手法は取られていません。

いろいろな考え方がありますが、手術が高額なのに効果は手技療法以下という論文もあります。もちろん手術が効果的な場合もあるでしょう。

世界初の腕の痺れがある方への比較対照試験 1997年

3か月以上持続する腕の症状(慢性頚部根性痛)患者81名を対象に4グループに分けて追跡調査

①頚部椎間板切除術
②背骨の固定術群
③各種理学療法群(カイロプラクティック、マッサージなど)
④頚椎カラー群

を比較した世界初のRCT(ランダム化比較試験)の結果、手術には保存療法を上回る効果がほとんどないことが判明。

2018年だったでしょうか、X-JapanのYoshikiさんが、頸椎椎弓切除・頸椎椎間孔切除の後にアメリカで椎間板C5-C6間の椎間板を人工椎間板置換する手術を受けたのですが、その後のインタビューで痛みは取れていないといっていたが印象的です。

頚部神経根症状への手術に関してはYosikiさんが行った人工椎間板置換術もふくめ概ね満足度は高いようですが、今のところどれくらい症状の緩和が持続するかは不明とされています。(2018,Gutman G, Rosenzweig DH, Golan JD)

ちなみにですがYosikiさんが行った人工椎間板置換術と頚椎前方除圧固定術の2018年に発表された5年追跡調査では、症状の推移で5年後に差はないそうです。(MacDowall A, Skeppholm M, Lindhagen L,et al)

代替医療が考える腕の痺れ

われわれカイロプラクターもレントゲン検査学やMRI所見の見かたを大学で勉強します。法制化された国のカイロプラクターはレントゲンやMRI所見を参考にすることが日本のカイロプラクターより多いでしょう。ですから画像所見も参考にしますが、一つの参考所見になります。

例えばカイロプラクターやオステオパス(オステオパシーの施術者)の論文では、T4症候群という考え方があります。T4シンドロームとは胸椎4番付近が腕の痺れと関連しているというものです。

無作為比較対照試験による48-72時間以内であれば首の症状と可動域、腕の症状の軽減の可能性が高いというエビデンスまでは報告されています。(Young IA, Pozzi F, Dunning J et al)
ただし今のところ母数が少ないため確定的とは言えません。

トリガーポイントの連鎖

筋膜の連鎖で痺れが出ているという観点からも、神経根症状を考えたほうが良いと思います。

この筋膜という言葉が独り歩きしていますが、ファシアというタンパク質構造の連続体として考える必要があると思います。

6か月以上続く慢性症状の考え方基本

6か月以上ある症状を慢性痛といいますが、この方のように2年あると慢性痛になります。慢性痛の治療として意識しなければならないのはヘルニアという生物学的な損傷モデル+心理社会的なモデルとして「痛み」を考える必要があります。(Hylands-White N, Duarte RV, Raphael JH)

そして痛みを完全に取り去ることは置いておき、「痛みをコントロールする」という方向性で考えていく必要があります。

痺れや首の症状があってヘルニアを指摘された方も少なくありませんが、6カ月以上症状が続いていれば慢性症状だと認識してください。

非手術による管理はどれくらい費用が必要なのか?

国によって健康保険制度が違うので患者さんが実質負担する費用は別になりますが、2019年の報告によると実質費用はカイロプラクティックには$193となっています。(2019,Barton C, Kalakoti P, Bedard NA et al)

この論文によると椎間板切除術および固定術を翌年に受けた方が前年に非手術においてどれくらいの支出があったかが報告されています。MRIが、1人あたり:489ドルで最も高く、次にCT、606ドル)、X線が76ドル、およびEMG / NCS:467ドル)。注射費用が相対的に最も高い支出1人当たり988ドルだそうです。

これを見る限り、もう少しカイロプラクティックを利用したほうがいいのでは?と感じますが、アメリカのカイロプラクターはあまり時間をかけて筋操作しないので効果的ではないのかもしれません。

ちなみにこの症例の30代男性は8回の来院である程度満足されていますので、400ドルと考えていいでしょうか。もちろんその前にMRIやレントゲン撮影を行われているので、非手術にかかっている費用は健康保険を含めると何倍にもなっています。

カイロプラクティックで順調に回復した30代男性会社員の症例

  • 頸部痛と左手の親指から中指にかけての痺れ
  • 発症は2年前
  • MRI検査で医師は頸椎ヘルニアが3か所あると指摘
    頚椎

    頚椎のヘルニアの診断が2年前

解剖学的には上部頚椎、中部頚椎の後縦靭帯(PLL)の部分に交感神経線維が密に分布していて、椎間板ヘルニアの膨隆が後縦靭帯(PLL)部分を押すために交感神経系に刺激を与えるのではないかと言われています。手術ベースの論文(Xin-Wei Wang , Tao Gu, Wen Yuan)

カイロプラクティック時の痛みと状態(自律神経症状有り)

  • 2年間痛み止めの薬と牽引治療を続けるが、全く改善しない
  • 生活に影響が出ている状態
  • 湿布薬の無い生活は考えられない
  • 冷や汗が出やすい
  • 寝つきが悪い
  • MRIの画像では確かに頸椎の3番4番5番6番の間の椎間板膨隆を確認したものの、臨床検査所見ではヘルニアの影響からでると考えられる筋力低下、感覚異常などの神経学的な所見はない

頸部の症状は自律神経症状が出やすいのが特徴です。蓄積されてくるとより厳しい状況になりQOLの低下を招いていまいます。常態化する前に来院なさるといいでしょう。勿論ストレッチなど、こまめにして下さることも大切です。

2016年のコクランレビューにおいては、神経根症状がある、無しに関わらず肩甲骨周りの安定性やストレッチなどのエクササイズは有効であるといいます。具体的な運動量はこれからの研究で明らかにされてくるようです。(2016;A R Gross , J P Paquin , G Dupont , S Blanchette , P Lalonde , T Cristie , N Graham , T M Kay)

検査では緊張と脊椎機能の低下が目立つ、chronic mechanical neck disorders (MND) 慢性頚椎の機能不全と判断

  • 緊張が非常に激しい
  • 首の筋肉のトーンが高い。頚椎を含めた脊柱全体に機能不全があるので、カイロプラクティックの背骨矯正により可動性の向上を試みる
  • 腕にも筋緊張がみられたので緩和操作。ここは筋膜緊張が連鎖していたと考えられます。近年流行の「筋膜」の連鎖による上肢症状の可能性
  • ヘルニアを解剖学的、統計学的に説明して症例と頚椎椎間板ヘルニアとの関連は低いことを説明
  • 運動していく必要性をお伝えする。頚部マッケンジー体操を含む運動療法を定期的に宿題として行ってもらう

ご感想

  • 来院を重ねるたびに症状が引いてくるので、そのたびに信用できるようになった
  • 初めての来院時に来院回数の目安を伝えて頂けるので安心できました

短期的には運動習慣のある方は回復がはやい

カイロテーブル

カイロプラクティックのテーブル

週に1回スポーツクラブへ行く運動習慣のある方でしたから、比較的早期に回復しました(8回の来院)。2年ある症状ですともう少し時間がかかる方が多いです。

これは運動習慣がある方は、リハビリとしてお伝えした運動を真面目に取り組む傾向があるからです。短期的には低品質、中程度の品質の証拠がありますが、結論としては運動教育を支持していないので、これからの研究を待ちたいところです。(Anita Gross , Mario Forget, Kerry St George, Michelle M H Fraser, Nadine Graham, Lenora Perry)

カイロプラクターは運動器の機能障害を取り除きます。その上でリハビリの指導をすることで脊椎矯正単体よりも効果が期待できるとコクランレビューで確認できます。ですから単体で背骨の矯正を行っても頚椎機能不全は改善の期待ができないとも言えます。(Anita R Gross , Jan L Hoving, Ted A Haines, Charles H Goldsmith, T Kay, Peter Aker)

首の反り

首のエクササイズが必須です

また基本的に運動習慣がある方のほうが筋骨格系の機能低下が少ないですし、心肺機能はしっかりしているのでリハビリを行う上で基礎体力があると考えてよいと思います。

首の痛みは生活の質を著しく低下させ、コストも多大なものになります。効果的な保存療法でよりよい生活を取り戻すお手伝いが出来たらと考えています。(2016;A R Gross , J P Paquin , G Dupont , S Blanchette , P Lalonde , T Cristie , N Graham , T M Kay)

現在この症例の方は快調にお仕事、育児をされているようです。

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