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伊藤孝英
院長
ロイヤルメルボルン工科大学健康科学部カイロプラクティック学科日本校卒業。B.C.Sc(カイロプラクティック学士), B.App.Sc.(応用理学士)。従来の筋骨格系障害としての腰背部痛から生物社会心理的要因としての腰背部痛へとシフトチェンジ。鬱や不安障害にも着目したマルチモデルでヒューマンケアしています。
新年度キャンペーン 初回問診カルテ作成料通常¥2500をいまなら¥1000

腰背部痛と他疾患(精神疾患も含む)の関連性エビデンス

アーチーボール ド・コクラン氏の当初の発想から、「医療は重要だけれども、人間の回復していく力とくらべると、実はたいしたことはないのかもしれない。医療介入というのは本当に科学的根拠 があって、どうしてもやらなければならない時だけにするようにしないと人間の回復していく力を妨げてしまうだろう」という観点で書いていきます。

背中や腰の痛みと、何らかの精神症状が混在するのは珍しいことではありません。

医療は○○科と細分化されているので医学的には分けて考えがちですが、人間の身体は相互に関連しあっていますので多くの場合で何らかの関連があるものです。

3カ月以上続く腰背部痛を慢性痛とした時、1年以上続く腰背部痛を持つ方は人口の19%前後。

目次

慢性的な腰背部痛があると約9割は別の症状がある

医療介入をどうしてもやらなければならない状況というのは、各個人に言わせれば人それぞれ意見が違うと思います。どんなに痛くても「我慢しなさい」で終わらせる人も居れば、少しの痛みもあってはならないと考える人も居ます。

一般的に言えば「社会生活をまともに営めない状態」と言いかえてもいいでしょう。

各個人の精神力にも依るとおもいますが、腰背部痛がひどくなれば、それだけでも社会生活を営むのが困難になります。さらに別の症状があれば社会生活を維持するのが困難になりやすいと言えます。

慢性腰背部痛があると9割は何らかの別症状があるのですが(この表現、腰背部痛がある人にとっては当たり前)、この状況は「どうしても医療介入をしなければならないのか?」と考えた時に、どこでライン引きするかにもよりますが、社会全体を考えた時に「医療介入した方が良いだろう」と言えるかもしれません。

米国の成人5692人にインタビュー。米国人における慢性腰痛・頸部痛と他の身体・精神疾患との併存性を調査し、慢性脊椎痛と併存疾患がどのような役割を及ぼすか評価

慢性的な脊椎の痛み、他の慢性的な痛みの状態、および選択された慢性的な身体的状態は、自己報告によって確認。

気分、不安および薬物使用障害は、複合国際診断面接(CIDI)で確認。

役割障害は、役割がなくなった日数と役割の機能障害についての質問で評価されました。

慢性脊椎痛の1年間の有病率は19.0%。慢性脊椎痛のある人の大多数(87.1%)は、少なくとも1つの他の併存疾患を報告。

他の慢性的な痛みの状態(68.6%)、慢性的な身体的状態(55.3%)、および精神障害(35.0%)。

不安障害は、気分障害と同様に慢性脊椎痛との強い関連。

慢性脊髄痛と有意に併存しない一般的な状態は、糖尿病、心臓病、癌、および薬物乱用でした。

慢性脊髄性疼痛は他の疼痛状態、慢性疾患、精神障害と高度に併存しており、慢性脊髄性疼痛に伴う役割障害には併存疾患が重要な役割を果たしていると結論づけられた。慢性脊髄性疼痛の社会的負担は、併存する疾患との関連で理解され管理される必要がある。

Von Korff M, Crane P, Lane M, Miglioretti DL, Simon G, Saunders K, Stang P, Brandenburg N, Kessler R. Chronic spinal pain and physical-mental comorbidity in the United States: results from the national comorbidity survey replication. Pain. 2005 Feb;113(3):331-339. doi: 10.1016/j.pain.2004.11.010. PMID: 15661441.

新しい用語などを考えながら訳していくと、先ず慢性腰痛が1年以上続く人は19%。

  1. 3か月以上続く背中の痛みがある方は9割近く、他の何らかの疾患を持っている
  2. 3カ月以上続く背部痛がある方の約7割は、別の慢性的な痛みがある
  3. 3カ月以上続く背部痛がある方の55%は、何らかの慢性的な身体的コンディション
  4. 3カ月以上続く背部痛がある方の35%は精神障害がある
慢性痛の方が持っている他の疾患
慢性的な背中の痛みがあると87%は何らかの病態が併存している
慢性背部痛のみ 23%
例えば首など 別の慢性的な痛みが併存68%
慢性背部痛のみ32%
何らかの身体的慢性コンディション55%
慢性背部痛のみ45%
精神障害が併存している35%
65%

以上のように腰や首、背中といった背骨関連の痛みがあると、別の部分の慢性痛が7割の方があり、精神疾患が3割5分併存しています。糖尿病、癌、心臓病、薬物乱用以外の何らかの慢性的身体コンディションが5割5分の方が併存しています。
足すと100%を超えるのは、これらの要素をいくつか持ち合わせている状態も多いということです。

男性医師

ですから、「慢性腰痛があって、肩こりもあります」とか「肩こりがあって頭痛もあります」「腰痛でお腹の調子が悪い」「腰痛で不安、抑うつがつづいています」というのは多数派だと言えます。
論文では社会的役割が果たせない状態は、これらの症状の「関連」で理解される必要があると言っています。

中国での調査、慢性腰痛、首痛と併存疾患

2万8千人規模の調査で見えてきた、慢性腰痛、慢性首痛との関連疾患。

背景: 中国人集団における慢性的な腰痛または首の痛みとの精神的および肉体的健康の併存症を調査し、慢性的な腰痛または首の痛みに関連する障害のレベルを評価。

方法: データは、中国の精神障害に関する成人を対象に、大規模な調査から得られました(n = 28,140)。

慢性的な背中または首の痛み、他の慢性的な痛みの状態および慢性的な身体的状態は、自己報告によって評価。

精神障害は、複合国際診断面接(CIDI)によって評価。

過去30日間の役割障害は、世界保健機関の障害評価スケジュール(WHO-DAS-II)で評価。

結果: 慢性的な背中または首の痛みの12か月の有病率は10.8%。

慢性的な背中または首の痛みを伴う回答者の71.2%は、他の慢性的な痛みの状態(53.4%)、慢性的な身体的状態(37.9%)、および精神障害(23.9%)を含む少なくとも1つの他の併存疾患を報告。

ロジスティック回帰により、気分障害(OR = 3.7)は、不安障害や物質障害よりも慢性的な背中や首の痛みとの強い関連を示したことが分った。

最も一般的な慢性的な痛みと体調は、慢性的な腰痛または首の痛みと有意に関連。

慢性的な背中または首の痛みは、人口統計および併存疾患を管理した後の役割障害と関連していた。

身体的および精神的併存疾患は、慢性的な背中または首の痛みと役割障害との関連の0.7%を説明。

結論: 慢性的な背中または首の痛みと身体的精神的併存症は中国で非常に一般的であり、慢性的な背中または首の痛みは他の身体的および精神的疾患の可能性を高めるかもしれない。

これは、臨床治療と公衆衛生教育の両方にとって大きな課題です。併存疾患の診断および管理スキルを向上させるために、さらなる研究を実施する必要がある。

Xu Y, Wang Y, Chen J, He Y, Zeng Q, Huang Y, Xu X, Lu J, Wang Z, Sun X, Chen J, Yan F, Li T, Guo W, Xu G, Tian H, Xu X, Ma Y, Wang L, Zhang M, Yan Y, Wang B, Xiao S, Zhou L, Li L, Zhang Y, Chen H, Zhang T, Yan J, Ding H, Yu Y, Kou C, Jia F, Liu J, Chen Z, Zhang N, Du X, Du X, Wu Y, Li G. The comorbidity of mental and physical disorders with self-reported chronic back or neck pain: Results from the China Mental Health Survey. J Affect Disord. 2020 Jan 1;260:334-341. doi: 10.1016/j.jad.2019.08.089. Epub 2019 Aug 29. PMID: 31521871.

この研究でも1年以上続く腰背部痛の方はここでは約11%。

  1. 3カ月以上の腰背部痛がある方の71%が何らかの他の疾患が併存
  2. 3カ月以上の腰背部痛がある方の53.4%は首痛、肩こりなど他の慢性的な痛みが併存
  3. 3カ月以上の腰背部痛がある方の約38%は慢性的な身体的状態(例:腹痛、めまいなど)
  4. 3カ月以上の腰背部痛がある方の約24%は精神障害が併存
慢性腰背部痛に併存する症状
71.2%は何らかの何らかの他の疾患が併存
慢性腰背部痛だけ訴える方
53.4%は腰背部痛以外の他の慢性的な痛みが併存
37.9%は慢性的な身体的状態(頭痛、めまいなど)
23.9%は精神障害が併存

こちらも似たような結果になっています。

ですから慢性腰背部痛がある方は、それが単独で存在するケースは少数派だと言い切れます。そして気分障害(抑うつ)は強い関連があります。

世界メンタルヘルス調査(8万5千人)慢性腰背部痛との関連

国際的なメンタルヘルスでの調査においては、腰背部痛とメンタルヘルスの関連はどうであろうか?

17ヵ国8万5千人を対象にした研究です。

慢性的な背中や首の痛みを持つ人の精神障害:世界のメンタルヘルス調査の結果

この論文は、精神障害と背中または首の痛みの併存症に関する国際的なデータの報告。

(a)慢性的な背中/首の痛みの有病率
(b)慢性的な背中/首の痛みを持つ人々の精神障害の有病率
(c)どの精神障害が慢性的な背中/首の痛みと最も強い関連があるか?
および(d )これらの関連が国全体で一貫しているかどうか?

地域在住の成人の人口調査は、ヨーロッパ、南北アメリカ、中東、アフリカ、アジア、および南太平洋の17か国で実施(N = 85,088)。

精神障害は、Composite International Diagnostic Interview、第3版(CIDI 3.0)で評価:

不安障害(全般性不安障害、パニック障害/広場恐怖症、心的外傷後ストレス障害、および社会不安障害)、気分障害(大うつ病および気分変調)、およびアルコール乱用または依存。

背中/首の痛みは自己申告によって確認。10%から42%が、過去12か月間に慢性的な背中/首の痛みを報告。

【結果】年齢と性別を調整した後、精神障害は背中/首の痛みのある人で、そうでない人よりも一般的でした。

オッズ比で気分障害で2.3 、不安障害で2.2 、アルコール乱用/依存症で1.6 でした。

慢性的な背中/首の痛みの有病率は一般的に以前の報告よりも低かったが、精神障害は慢性的な背中/首の痛みと関連していた。関連の強さはアルコール乱用/依存よりも気分障害や不安障害の方が強かった。

Demyttenaere K, Bruffaerts R, Lee S, Posada-Villa J, Kovess V, Angermeyer MC, Levinson D, de Girolamo G, Nakane H, Mneimneh Z, Lara C, de Graaf R, Scott KM, Gureje O, Stein DJ, Haro JM, Bromet EJ, Kessler RC, Alonso J, Von Korff M. Mental disorders among persons with chronic back or neck pain: results from the World Mental Health Surveys. Pain. 2007 Jun;129(3):332-342. doi: 10.1016/j.pain.2007.01.022. Epub 2007 Mar 9. PMID: 17350169.

国によってさまざまだが精神的問題がある人では、10~42%の人が過去1年間に3か月以上続く腰背部痛を報告している。

  1. 3カ月以上の慢性腰背部痛がある人はない人に比べ、大うつ病、気分変調などの気分障害のオッズ比2.3
  2. 3カ月以上の慢性腰背部痛がある人はない人に比べ、不安障害、パニック障害/広場恐怖症、PTSD、社会不安障害のオッズ比:2.2
  3. 3カ月以上の腰背部痛がある人はない人に比べ、アルコール乱用や依存症がオッズ比:1.6
女性医師

いずれもオッズ比なので一瞬を切り取った場合となり、ちょっとだけリスクが上がるというような意味になります。2倍という意味ではないです。

大うつ病、気分変調
不安障害、パニック障害、PTSD、社会不安障害、広場恐怖症
  • 慢性腰背部痛があると少し発生しやすい
  • 慢性腰背部痛があると少し発生しやすい

以前よりは慢性腰背部痛の訴えは減ったが、精神障害は3カ月以上の続く腰背部痛と関連、不安障害と不安障害と関連していると結論しています。

女性医師

不安障害や鬱に苦しんでいる方のきっかけが、もしかしたら腰痛や首痛である可能性もあるかもしれません。

慢性腰背部痛、首痛と精神障害の今後の方向性

これまで読んでこられた方は、慢性腰背部痛と精神障害の関連性が専門家の間で確定していることは理解できたと思います。ここからは、その方向性を考えていきます。

まだ世界でだれも確実的な方向を見出していませんし、当事者のあなたも一緒に考えていく必要があることです。

以前の精神障害とその後の慢性的な背中または首の痛みの発症:19カ国からの調査結果

うつ病/不安と痛みとの関連は十分に確立されていますが、その方向性は明確ではない。

時間軸でみて、以前の精神障害とその後の自己申告による慢性的な背中/首の痛みの発症との関連を調査。人生の中での精神障害イベント発症のタイミングと性別による関連の強さの変化も調査。

データは、19か国で実施された人口ベースの世帯調査(N = 52,095)。

精神障害の診断および統計マニュアル第4版による、16の精神障害の生涯有病率と発症年齢、および背中/首の痛みの発生と発症年齢はComposite International DiagnosticInterviewを使用して評価。

生存分析により、精神障害の初回発症とその後の腰痛・頸部痛の発症との関連を推定した。

【結果】二変量解析では、すべての精神障害が腰痛・頸部痛と正の相関を示し、精神疾患の併存率を調整してもそのほとんど(16項目中12項目)が正の相関を示し、精神障害の数が増えるとその後の痛みも明確に増える(用量反応関係)。

早期発症の障害は痛みの強い予測因子であった。精神医学的合併症で調整しても、うつ病/気分変調症ではこの傾向は変わらなかった。

性差は観察されなかった。

【結論】うつ病や不安神経症以外の精神障害を持つ人は、その後の腰痛・頸部痛を発症するリスクが高く、精神障害の早期発見の重要性を強調し、精神医療の臨床現場において腰痛・頸部痛を評価する必要性を浮き彫りにしている。

展望: 精神障害の診断統計マニュアル第4版による精神障害の既往は、その後の腰痛/頸部痛の発症と正の相関があり、精神障害の数とその後の痛みの間には明確な用量反応関係がある。早期に発症した精神障害は、後に発症した精神障害と比較して、その後の疼痛発症のより強い予測因子である。

Viana MC, Lim CCW, Garcia Pereira F, Aguilar-Gaxiola S, Alonso J, Bruffaerts R, de Jonge P, Caldas-de-Almeida JM, O’Neill S, Stein DJ, Al-Hamzawi A, Benjet C, Cardoso G, Florescu S, de Girolamo G, Haro JM, Hu C, Kovess-Masfety V, Levinson D, Piazza M, Posada-Villa J, Rabczenko D, Kessler RC, Scott KM. Previous Mental Disorders and Subsequent Onset of Chronic Back or Neck Pain: Findings From 19 Countries. J Pain. 2018 Jan;19(1):99-110. doi: 10.1016/j.jpain.2017.08.011. Epub 2017 Oct 12. Erratum in: J Pain. 2018 Apr;19(4):454. PMID: 29031785; PMCID: PMC6839827.

すべての精神障害の初回発症は、その後の腰痛、頚部痛の発症と関連している。とくにうつ病、気分変調症で。

このことに男女差はない。

早期発症の精神障害は後に身体の痛みを発症しやすいので、そのことをメンタルヘルスの現場でフォローしていく必要があります。筋骨格系症状のケアの為にも精神障害の早期発見が重要です。

男性医師

精神科、心療内科の現場で腰部痛、頚部痛を評価する必要性があります。

慢性筋骨格系症状の1次予防、2次予防にメンタルヘルス

腰痛や首痛の発症自体を予防するのもメンタルヘルスが大切なようです。

精神障害とその後の慢性的な体調との関連:17カ国からの世界のメンタルヘルス調査

【背景】治療環境における精神障害は慢性的な身体的状態の発生率が高いことと関連していることは明らかですが、これが地域社会の精神障害に当てはまるかどうか、およびこれらの関連が(さまざまな身体的健康の結果にわたって)どのように一般化されているか、あまり明確ではない。

この情報は、メンタルヘルスケアと慢性身体疾患の一次予防に重要な意味がある。

【目的】 16の以前のDSM-IV精神障害と、その後の10の慢性身体状態の発症または診断との関連を調査する

【方法】 身体的状態の生涯の履歴は、医師の診断と発症または診断の年の自己報告によって確認。生存分析は、精神障害の時間的に前の最初の精神障害発症とその後の身体的症状の発症または診断との関連を推定。

【結果】 16の精神障害とその後の10の身体的状態の発症または診断との間のほとんどの関連は統計的に有意。

オッズ比は1.2~3.6の範囲。(ほんの少しリスクがあがる意)

精神障害の併存疾患を調整した後の関連性は弱まったが、不機嫌、不安、物質使用、衝動調節障害は、7から10のすべての身体的状態の発症と有意に関連したままでした。

オッズ比 1.2 から2.0 (ちょっとリスクがあがる)

人生を通じて経験する精神障害の数の増加は、1.3~1.8倍の範囲で、その後の10種類すべての身体的状態の発症または診断のオッズの増加と有意に関連。

オッズ比1.9から4.0の範囲の5つ以上の精神障害。

集団寄与リスク推定では、特定の精神障害は、体調の発症の1.5%から13.3%に関連。

【結論】 これらの調査結果は、あらゆる種類の精神障害が、広範囲の慢性的な身体的状態の発症リスクの増加と関連していることを示唆。

精神障害のある個人の身体的健康を改善するための現在の取り組みは、最も重度の精神障害のある小グループにあまりにも狭く焦点を合わせている可能性がある。

慢性身体疾患の一次予防を目的とした精神的アプローチ介入は、障害の初期から一次および二次ケアにおけるすべての精神障害の治療に最適に統合されるべきだろう。

Scott KM, Lim C, Al-Hamzawi A, Alonso J, Bruffaerts R, Caldas-de-Almeida JM, Florescu S, de Girolamo G, Hu C, de Jonge P, Kawakami N, Medina-Mora ME, Moskalewicz J, Navarro-Mateu F, O’Neill S, Piazza M, Posada-Villa J, Torres Y, Kessler RC. Association of Mental Disorders With Subsequent Chronic Physical Conditions: World Mental Health Surveys From 17 Countries. JAMA Psychiatry. 2016 Feb;73(2):150-8. doi: 10.1001/jamapsychiatry.2015.2688. PMID: 26719969; PMCID: PMC5333921.

もっとも重度の精神障害があるグループの治療では、あまりに狭い枠の中で治療が行われている可能性があります。

また慢性の身体の痛みの予防は、精神障害の治療にも焦点を合わせる必要があります。

スペインでの慢性腰背部痛と心身症の併存率

[スペインにおける慢性的な背中と首の痛みの有病率と心身の併存症:ESEMeD研究の結果]

【背景と目的】慢性腰痛(CBP)と慢性首痛(CNP)は、成人人口の間で非常に蔓延している。ただし、他の疾患との併存症や社会的機能への影響についてはあまり知られていない。

研究目的はスペインの人口における慢性腰痛と慢性首痛の有病率、他の身体的および精神的状態との併存症、およびグローバル機能への影響を推定すること。

【対象と方法】 18歳以上のスペインの人口の代表的なサンプル横断的世帯調査。サンプルサイズは5,473人

慢性首痛と慢性腰痛と併存疾患は、自己申告によって確認。精神障害は、複合国際診断面接で、グローバル機能はWHO障害評価スケジュールで確認。回答率は78.6%

【結果】慢性腰痛、首痛の1年間の有病率は14.7%でした。

慢性腰痛首痛患者の65.7%は、他の慢性疼痛状態(49.4%)、慢性身体状態(40.7%)、気分障害(7.9%)、パニック障害(1.3%)を含む、少なくとも1つの他の併存疾患を報告。

心的外傷後ストレス障害(1.5%)または全般性不安障害(1.4%)。さらに、CBP-CNPはグローバル機能に悪影響を及ぼす。併存疾患は、CBP-CNPとグローバル機能との関連の約3分の1を説明した。

【結論】 CBP-CNPは非常に蔓延しており、他の身体的および精神的状態と併存しています。併存症は、個人のグローバルな機能に悪影響を及ぼす。

Pinto-Meza A, Serrano-Blanco A, Codony M, Reneses B, von Korff M, Haro JM, Alonso J. Prevalencia y comorbilidad física y mental del dolor dorsal y cervical crónicos en España: resultados del estudio ESEMeD [Prevalence and physical-mental comorbidity of chronic back and neck pain in Spain: results from the ESEMeD Study]. Med Clin (Barc). 2006 Sep 9;127(9):325-30. Spanish. doi: 10.1157/13092313. PMID: 16987451.

まずスペインでの慢性腰背部痛の1年間有病率は約15%

  1. 3カ月以上つづく慢性腰痛首痛患者の約65%は他の慢性痛疾患を持っていた
  2. 3カ月以上つづく慢性腰痛首痛患者の約40%は何らかの慢性身体状態だった
  3. 3カ月以上つづく慢性腰痛首痛患者の約8%は気分障害がありました
  4. 3カ月以上つづく慢性腰痛首痛患者の1.3%はパニック障害がありました
  5. 3カ月以上つづく慢性腰痛首痛患者の約1.5%はPTSD,全般性不安障害だった

ここでは他の研究との違いは、不安障害の併存が少ないことです。そして慢性腰痛首痛があって、併存症があるとグローバル機能に悪影響を及ぼすと言っています。

インドでの慢性腰背部痛と併存疾患は?

印度

【結果】 合計1831人(27%)の患者が慢性的な痛みを報告。

慢性疼痛のある人のうち35.3%が慢性的な精神的または肉体的疾患の同時発生1つを報告し、36.3%が複数の病的状態を報告した。28.3%は同慢性疼痛のみを報告。

多変量解析では、慢性疼痛のある患者は、そうでない患者と比較して、高齢、女性、教育水準が低い、家族と同居していない、障害が大きい、生活に対する満足度が低いというオッズが高かった。

慢性疼痛は、医学的(高血圧、糖尿病、結核、関節炎、およびその他の医学的疾患)と精神的健康状態(うつ病性障害、不安障害、およびタバコ依存症)の両方と独立して関連していた。

それは、同時発生する身体的および精神的病気の数の増加に伴い、さまざまな関連の強さを示した。

Desai G, T S J, G SK, L M, G R G, Bajaj A, K T, Chaturvedi SK. Disentangling comorbidity in chronic pain: A study in primary health care settings from India. PLoS One. 2020 Nov 30;15(11):e0242865. doi: 10.1371/journal.pone.0242865. PMID: 33253251; PMCID: PMC7703899.

まずこの研究では27%の方が3カ月以上つづく慢性痛があると報告しています。

  1. 3カ月以上続く慢性痛患者の約28%は、他の疾患の同時発生を報告していない
  2. 3カ月以上続く慢性痛患者の35%は1カ所の別症状を訴えた
  3. 3カ月以上続く慢性痛患者の約36%は複数の症状を訴えた
  4. 3カ月以上続く慢性痛患者は、高齢、女性、低教育水準、独居、障害が大きい、低い生活満足度が多い
  5. 3カ月以上続く慢性疼痛は高血圧、糖尿病、結核、関節炎、その他の疾患と関連
  6. 3カ月以上続く慢性疼痛はうつ病、不安障害、ニコチン依存症と関連
慢性痛患者の36%は併存疾患があった
慢性痛患者の72%は何等かの別症状がある
慢性痛のみ約28%
うち36%は複数の別症状
慢性痛患者の約35%は1カ所他の症状もある
関連する併存疾患
社会的背景
  • 高血圧
  • 糖尿病
  • 結核
  • 関節炎
  • その他の医学的疾患
  • うつ病
  • 不安障害
  • ニコチン依存
  • 高齢
  • 女性
  • 教育水準が低い
  • 一人暮らし
  • 痛みの度合いが強い
  • 生活の満足度が低い

他の研究、地域と同様、慢性痛患者は約7割の方が何等かの併存症状があります。

アラブ首長国連邦での慢性痛と精神疾患併存は?

ここまで来たら、世界のいろいろな地域の状況をみていきましょう。

一般的な精神状態(不安、うつ病、身体化=体の痛み)と身体的病気の併存症に関する研究です。

1046人の回答者のうち、442人(42.3%)に少なくとも1つの精神状態があり、670人(64.1%)に身体的疾患の診断があった。

糖尿病(248/670 = 37.0%)、高血圧(229/670 = 34.2%)です。 、喘息(82/670 = 12.2%)、非慢性の身体的疾患(63/670 = 9.4%)、心臓病(48/670 = 7.2%)、精神的および身体的併存疾患有り34.4%(360/1046)

670人の被験者の男性:女性の比率は287:383でした。身体的な病気のある人とない人の精神状態の未調整オッズ比(OR)は4.16(95%CI = 3.12、5.55)でした。

併存症は、高齢、離婚または寡婦化、教育レベルの低下、および生活環境の悪化と関連。身体的な病気に関係なく、最も頻繁に併存する精神障害は身体化でした。

【結論】世界の他の地域で報告されているように、身体化、不安、およびうつ病は、クウェートのプライマリケで非常に蔓延しており、通常、身体的病気と併存している。

それらの予防と治療のための戦略は、身体的病気と社会的不利益との関連を考慮に入れる必要がある。

Alkhadhari S, Alsabrrie AO, Ohaeri JU, Varghese R, Zahid MA, Mulsant BH. Mental and physical comorbidity in an Arab primary health care setting. BMC Psychiatry. 2018 Sep 27;18(1):313. doi: 10.1186/s12888-018-1903-8. PMID: 30261859; PMCID: PMC6161391.

社会的不利益と病気の関連という書き方が特徴的です。精神症状の身体化といのは「心の痛みを身体の痛みとして表す」つまり身体の痛みということです。

  1. 約42%は何らかの精神症状がある
  2. 約65%は身体疾患の診断があった
  3. 約34%は精神的疾患、身体疾患の併存がある
  4. 身体的病気がある人はない人にくらべ精神状態悪化は約4倍あった
全体の65%が疾患あり
併存症の背景
  • 糖尿病37%
  • 高血圧34%
  • 喘息12%
  • 急性の身体疾患
  • 心臓病7%
  • 精神疾患34%
  • 高齢
  • 離婚または寡婦化(離婚、死別、)
  • 教育レベルの低下
  • 活環境の悪化

身体化(体の痛み)、不安、およびうつ病は、身体的病気と併存している。これらの精神症状の予防と治療のための戦略は、身体的病気と社会的不利益との関連を考慮に入れる必要がある。

同じくアラブの研究 かかりつけ医 精神疾患の状況

【目的】プライマリケア患者における身体化、不安、うつ、ストレスの有病率を明らかにし、心理社会的ストレス因子との関連を探り、これら4つの精神疾患の診断上の重複を明らかにすること。

前向き横断的研究で2,150人の代表的な患者を対象にした。うち1,762人が参加に同意し、質問票に回答した(81.9%)。

不安は全般性不安障害尺度(GAD-7)。うつ病はPatients Health Questionnaire-8のうつ病モジュール。身体化は身体症状モジュールPHQ-15。ストレス症例の特定は知覚的ストレス尺度(PSS)をそれぞれ使用。

【結果】 研究サンプルのうち、全症例の23.8%が可能性のある症例(probable case)。

身体化、うつ病、不安およびストレスの有病率は、それぞれ11.7%、11.3%、8.3%および18.6%でした。

これら4つの精神疾患の男女別の有病率:うつ病(11.3%対11.3%)、不安障害(7.7%対8.9%)身体化(12.5%対10.7%)、ストレス障害(19.3%対17.8%)で男女で非常に似ている。

うつ病と不安症については、国籍と配偶者の有無で有意差が認められた(P < 0.05)

年齢別有病率は、45〜54歳の年齢層でより高い有病率を示した
:うつ病(13.3%)、不安(9.5%)、身体化(12.8%)およびストレス(20.4%)、悩みをコントロールできない(69.2%)は、不安障害の最悪の症状でした。

うつ病では「自分を傷つけたい」(71.9%)が大半を占めた。身体障害では「胃痛」(46.1%)が最も多い症状。ストレスを感じている患者の多くは、日常業務に対処できない(65.9%)。

うつ病、不安神経症、身体化、ストレスの高い併存率が観察された(9.3%)

Bener A, Al-Kazaz M, Ftouni D, Al-Harthy M, Dafeeah EE. Diagnostic overlap of depressive, anxiety, stress and somatoform disorders in primary care. Asia Pac Psychiatry. 2013 Mar;5(1):E29-38. doi: 10.1111/j.1758-5872.2012.00215.x. Epub 2012 Jul 23. PMID: 23857793.

結論 身体化およびうつ病の有病率はほぼ同じであったが、ストレスの有病率は入院患者において高かった。身体化、うつ病、不安障害、ストレス障害は、調査対象者において高い割合で併発していた。

  1. 45歳~54歳で高い有病率
  2. うつ病約13%、不安9.5%、身体化約13%、ストレス約20%、悩みをコントロールできない約70%
  3. うつ病の7割は自傷願望
  4. 46%は胃痛
  5. ストレスを感じている人の66%は日常業務はできない

45歳から54歳では7割の方が悩みをコントロールできない。約10%は鬱、不安、身体化、ストレスの4つが併存している。

中国では

中国人における慢性的な腰背部痛、首の痛みと精神的および身体的健康の併存疾患を調査し、慢性的な背中や首の痛みに関連する障害のレベルを評価。

【方法】 データは中国のメンタルヘルス障害に関する成人回答者を対象とした大規模で全国的に代表的なコミュニティ調査から得た(n = 28,140)。

慢性腰痛または頸部痛、その他の慢性疼痛状態および慢性身体状態は、自己申告により評価。

精神障害は、複合国際診断面接(CIDI)によって評価。過去30日間の役割障害(Roll disability)は、世界保健機関の障害評価スケジュール(WHO-DAS-II)で評価。

【結果】 慢性的な腰背部痛または首の痛みの12か月の有病率は10.8%でした。

慢性的な腰背部や首の痛み(71.2%)の回答者のほとんどは、他の慢性疼痛状態(53.4%)、慢性的な身体状態(37.9%)、精神障害(23.9%)など、少なくとも3つの他の併存疾患を報告

ロジスティック回帰により、気分障害(ある程度の期間にわたって持続する気分の変調により、苦痛を感じたり、日常生活に著しい支障をきたしたりする状態のこと。うつ病と双極性障害など広範囲な精神的疾病がこの名称にあてはまる。)(OR = 7.95、2%CI:8.4-8.0)は、不安障害や物質障害よりも慢性的な腰痛または頸部痛との関連が強いことがわかりました。

最も一般的な慢性疼痛および身体状態は、慢性的な背中または首の痛みと有意に関連していた。慢性的な腰痛または頸部痛は、人口統計および併存疾患を制御した後の役割障害と関連していた。身体的および精神的な併存疾患は、慢性的な背中または首の痛みと役割障害との関連0.7%を説明しました。

【結論】慢性的な背中や首の痛み、心身の併存疾患は中国では非常に一般的であり、慢性的な背中や首の痛みは他の身体的および精神的疾患の発症を高める可能性がある。これは、臨床治療と公衆衛生教育の両方にとって大きな課題を提示する。併存疾患の診断・管理スキルを向上させるためには更なる研究が必要。

Xu Y, Wang Y, Chen J, He Y, Zeng Q, Huang Y, Xu X, Lu J, Wang Z, Sun X, Chen J, Yan F, Li T, Guo W, Xu G, Tian H, Xu X, Ma Y, Wang L, Zhang M, Yan Y, Wang B, Xiao S, Zhou L, Li L, Zhang Y, Chen H, Zhang T, Yan J, Ding H, Yu Y, Kou C, Jia F, Liu J, Chen Z, Zhang N, Du X, Du X, Wu Y, Li G. The comorbidity of mental and physical disorders with self-reported chronic back or neck pain: Results from the China Mental Health Survey. J Affect Disord. 2020 Jan 1;260:334-341. doi: 10.1016/j.jad.2019.08.089. Epub 2019 Aug 29. PMID: 31521871.
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