ぎっくり腰、椎間板ヘルニア診断歴

過去に椎間板ヘルニアと診断された方は、ぎっくり腰になると「ヘルニアが再発したのでは…」と強い不安を抱きやすいことが統計的に分かっています。しかし、世界の腰痛ガイドラインでは“画像だけで痛みの原因を判断しない”ことが推奨されており、ヘルニア診断歴があっても多くは筋肉・筋膜の急性痛(ぎっくり腰)で説明できます。

このページでは、椎間板ヘルニアの診断歴がある30代男性が、強い痛みと睡眠障害を伴うぎっくり腰を起こしたケースを紹介します。ストレスとの関連、危険な腰痛との見分け方、回復の流れを科学的根拠に基づいて解説します。

目次

50歳男性 椎間板ヘルニア診断歴がある方のぎっくり腰のケース

痛みの図77
実際に記入してもらった痛みの図

過去のぎっくり腰で病院に行ったときに腰部椎間板ヘルニアと診断された50歳男性のケースです。

今回のぎっくり腰の背景

  • 過去の椎間板ヘルニア診断
  • ぎっくり腰を繰り返している
  • 痛みで眠れない状態
  • ストレスが強い時期だった

問診時の状況

4日前から腰痛が始まっており、ロキソニンを服用して過ごしてきたが効き目がなくなるとVAS 8/10の激烈な痛みが戻ってきてるのを繰り返し、生活に支障をきたしている。

  • 4日前に朝起きたときから急に腰に痛みを感じた
  • もともと椎間板ヘルニアの診断を過去にうけていて、たびたびぎっくり腰を起こしてきた
  • 職場でのストレスが大きい
  • この4日間はロキソニンを飲んでしのいできたが、薬が切れると8/10ほどの痛みが戻ってきて生活に支障
  • 腰からお尻、膝裏にかけてズキンとした痛みが出る。
  • 同じ姿勢でいると症状がわかりやすく出る。
  • 眠っていても痛みで2時間おきに起きてしまう
  • 妻の紹介で来院

危険な腰痛との見分け方

疼痛図では両側に痛みが描かれていましたが、実際には左側の痛みがより強い状態でした。直腸・膀胱障害はなく、腱反射も正常で、神経学的な異常所見は認めませんでした。これらを総合し、危険な腰痛(レッドフラッグ)は否定できると判断しました。

【補足】レッドフラッグとは?
発熱、膀胱直腸障害、急激な筋力低下、がんの既往など、危険な腰痛を疑うサインのことです。

職場でのストレスが関与?

問診では、職場での人間関係のストレスが強い時期であったことが分かりました。腰痛とストレスは互いに影響し合うことが知られており、心理社会的な負担が大きいと痛みが長引きやすいことが多くの研究で示されています。

特に今回のように「痛みで眠れない」「同じ姿勢で悪化する」といった状況では、身体的な要因だけでなく、ストレスによる筋緊張や睡眠障害が痛みを増幅している可能性があります。

人間関係のストレスは職場では非常に一般的で、腰痛の悪化要因としてもよく見られます。アドラー心理学でも“悩みの多くは対人関係に由来する”とされており、実際に臨床でも同様の傾向があります。

初期の段階で心理社会的苦痛がある場合や、痛みで活動障害が大きい時は痛みが長期化するリスクがある。

Golob AL, Wipf JE. Low back pain. Med Clin North Am. 2014 May;98(3):405-28. doi: 10.1016/j.mcna.2014.01.003. Epub 2014 Mar 22. PMID: 24758954.

今回のケースは、痛みの強さに加えて心理的ストレスも高い状況であり、長期化のリスクが高いタイプと判断しました。そのため、カイロプラクティックによる身体面のケアに加え、必要に応じてストレスマネジメントや認知行動療法的アプローチも併用する方針としました。

職場の人間関係のストレスは、少しの行動変容で改善することも多く、腰痛の回復にも良い影響を与えます。単に“腰の痛み”として捉えるのではなく、社会的背景も含めてケアすることが、再発予防にもつながります。

過去の画像診断に拘るべからず

【補足】画像と痛みは一致しない理由
40代以上では、症状がなくても椎間板の変性やヘルニア像が見られることが多く、画像だけで痛みの原因を判断することはできません。

過去に椎間板ヘルニアと診断されている方は、痛みが出るたびに「またヘルニアが悪化したのでは…」と不安になりやすい傾向があります。しかし、画像所見と現在の痛みは必ずしも一致しないことが多く、世界の腰痛ガイドラインでも“画像だけで痛みの原因を判断しない”ことが推奨されています。

今回のケースでも、神経学的な異常はなく、動作で痛みが変化する典型的なメカニカルペイン(動作時痛)で説明できる状態でした。これは椎間板の強い障害ではなく、筋肉・筋膜の張りやストレスによる緊張が背景にあるタイプです。

画像と痛みは一致しないことが多い

過去に椎間板ヘルニアが原因と指摘されている方は、身体的損傷モデルだけで痛みを捉えがちだが、痛みには心理的側面も関与することが疫学調査で示されている。

2007/Diagnosis and Treatment of Low Back Pain: A Joint Clinical Practice Guideline from the American College of Physicians and the American Pain Society— ACP/APS 腰痛ガイドライン(2007)

画像診断の“悪いイメージ”に引きずられすぎると、痛みを必要以上に強く感じたり、回復を妨げることがあります。大切なのは、「今の痛みが何によって起きているか」を正しく理解することです。腰痛の85%は画像所見では判断不能な非特異的腰痛と言われています。

画像診断機器上の男性
昔受けた画像診断の結果は忘れよう

当院では、必要な場合を除き、過去の画像所見にとらわれず、現在の症状・動作・神経学的評価をもとに腰痛を判断しています。今回も通常のカイロプラクティックケアで十分に改善が見込めるタイプであり、実際に回復もスムーズでした。
「ヘルニアについて詳しく」

今回の痛みは椎間板ヘルニアの強い圧迫ではないタイプの下肢痛

膝裏まである神経根症状ではあったものの、バルサルバサインは陰性で、座位時間が長くなると症状がでやすい。サスカチュワン脊椎ケアの流れの分類ではパターン3に近いが、持続的な下肢全体の痛みではないことから、椎間板ヘルニアによる下肢痛ではないと判断し、6週間以内ならカイロプラクティックによる保存療法が可能であるとしました。 

画過去に椎間板ヘルニアが原因であると指摘されている方は、身体的な損傷モデルだけで腰痛、ぎっくり腰を考えがちですが、痛みには心理的な側面も関わっていることが疫学調査で分かってきていること。

施術内容(カイロプラクティック × 心理社会的アプローチ)

通常のカイロプラクティックケアで十分に改善が見込めるタイプでしたが、背景にストレスがある場合は痛みが長引くことがあります。そのため、必要に応じてストレスマネジメントや認知行動療法的なアプローチも併用する方針で施術を進めました。

カイロプラクティックケアでの反応が良く、系統だった認知行動療法は行っていませんが、施術中の会話の中に認知行動療法的な会話の組み立て方を取り入れて、少しでもリラックスして職場の環境を説明してもらえるように努めました。

筋肉・筋膜へのアプローチ

全身の筋肉を緩め、腰部にある筋肉の固まりを指で押圧し部分的な血流を回復させ発痛物質の拡散をさせます。

脊椎マニピュレーション

脊椎マニピュレーション(背骨の矯正)はカイロプラクティックの手技の特徴で、高速低振幅のスラストテクニックを機能不全のある関節に行います。これにより腰の動きのスムースさの改善、痛みの低下、炎症メディエーターの低下が起こります。

ストレスマネジメント(必要時は認知行動療法)

今回は施術中の会話の中で、ストレスが痛みに影響しやすいことをご理解いただき、抱えていた不安や緊張を言語化してもらいました。これだけでも痛みの感じ方が和らぐことが多く、必要に応じて認知行動療法的な視点も取り入れながら進めました。宿題としてスウェーデン式リラクゼーションエクササイズを2.3/day行ってもらう約束をしました。

内部リンク:「マルチモデルで腰痛をケアする重要性」

回復の経過(5日で改善)

初日の施術後で8/10の痛みが4/10になり、1週間後に予約を取り帰られました。

5日後にお電話をいただき、翌日には痛みがスッキリ消えていたということで、「もう大丈夫」という言葉をいただきました。

「施術後、再発予防のエクササイズを継続していただいた結果、現在も良好な状態を維持されています。」

痛みの変化

カイロプラクティックケアの直後から痛みが半分ほどに軽減し、動きやすさも改善しました。急性腰痛では、このように早期に反応が出る場合は回復がスムーズに進むことが多いです。

また、痛みの原因や回復の見通しを理解できたことで不安が減り、安心感が回復を後押しした印象もありました。

説明と一致した回復パターン

心理社会的なストレスが過大でなければ、通常脊椎マニピュレーションを受けた後は痛みが5日以内に急速に下がることが解っています。

再発予防のポイント

現状100%腰痛を再発予防する方法は医学的に見つかっていませんが、適正体重につとめ、適度な運動をおこない禁煙をしていることがリスクを下げることまで分かっています。

内部リンク:「腰痛の再発予防」

健康の学校(当院のブログ記事)

予約・相談はこちら(強要はいたしません)

この記事が参考になったらシェアしていただけると嬉しいです。
目次