1年以上続く慢性腰痛で、5分と座っていられない状態が続いていた30代男性の症例です。整体・マッサージ・鍼灸など、これまでに多くの療法を試しても改善を実感できず、「このまま一生腰痛と付き合うのではないか」という強い不安を抱えて来院されました。
検査では、深層筋の強い緊張と腰部の機能低下が背景にあり、通常の手技では届きにくい深い層の硬さが痛みを長引かせていることが分かりました。こうした深層筋の問題に対して、マイオセラピーは非常に有効なアプローチとなります。
マイオセラピーは、筋組織の異常が身体の不調を引き起こすという独自の考え方を持つ脊椎療法で、古くて新しい概念として再評価されています。伝統的な徒手療法誌 JMPT(Journal of Manipulative and Physiological Therapeutics)にも報告があり、深層筋の硬さに対するアプローチとして臨床的な価値が高い施術です。
長く続く腰痛に悩む方の参考になるよう、改善までの経過と施術のポイントを詳しく紹介します。長く続く腰痛の方は、西洋医療をはじめ、これまでにいろいろな療法を受けてこられたと思います。
このページは腰が固まってしまい極度の痛みが続いている30代男性が、マイオセラピーという施術を継続的に受けることで、腰痛から回復に向かった例をご紹介します。

1年以上続く腰痛で5分と座っていられない状態が続いていた
この方は、1年以上続く慢性的な腰痛に悩まされ、5分と座っていられないほどの強い痛みが続いていました。整体・マッサージ・鍼灸・整形外科など、さまざまな療法を試しても改善を実感できず、「もう何をしても良くならないのではないか」という強い不安を抱えていました。
仕事中も椅子に座ることが難しく、外出や趣味の時間も制限され、生活の質が大きく低下している状態でした。腰が固まってしまうような感覚と、動き始めの鋭い痛みが重なり、日常生活のあらゆる場面で支障が出ていました。
こうした背景から、深層筋の強い緊張と腰部の機能低下が疑われ、通常の手技では届きにくい深い層の硬さに対してマイオセラピーが必要と判断しました。
初診時の状況とこれまでの経過
34歳男性。1年前から徐々に腰痛が悪化し、現在では5分と座っていられないほどの強い痛みが続いていました。病院での画像診断では異常が見つからず、トリガーポイントブロック注射を4回、硬膜外ブロック注射を1回受けたものの、効果は一時的でした。
鍼治療も20〜30回、マッサージや整体にも通いましたが改善を実感できず、ここ2カ月は柔道整復師の先生に診てもらっていたものの大きな変化はありませんでした。施術後に痛みが10/10まで悪化した経験もあり、「また同じように悪化したらどうしよう」という強い恐怖心を抱えていました。
初診時の痛みは7/10。座ると腰からお尻にかけて突っ張るような鈍痛が出て、前かがみ・自転車・バイク・仰向けで寝る姿勢など、日常のあらゆる動作で痛みが走る状態でした。左を下にして寝ても痛みがあり、睡眠の質も低下していました。
車の運転、食事、電車で座ることも困難で、精神的にも追い込まれている様子が強く見られました。「回復したら子どもと外出したい。今は家で座って一緒に遊んであげることもできない」と話されていたのが印象的でした。
実際にご記入いただいた痛みの図からも、かなり追い詰められた状態であることが分かりました。
6時間くらいの睡眠時間はあるものの睡眠の質は低下している。

これまで試してきた療法
- 病院での画像診断上問題はない
- トリガーポイントブロック注射を4回
- 硬膜外ブロック注射1回行っている。硬膜外ブロック注射は比較的効果があったが一時的であった
- 針治療も20~30回は行った
- マッサージや整体も何回か通ったが変化を感じられなかった
- ここ2カ月間は柔道整復師の先生に診てもらっているが大きな変化はない
- 現在はVAS7/10
初診時に語られた不安と恐怖
これまでに多くの療法を試しても改善が見られなかったため、施術そのものへの不信感が強く、「また悪化したらどうしよう」という恐怖心を強く抱えていました。実際、柔道整復師の先生に診てもらった後に痛みが10/10まで悪化した経験があり、その影響で新しい施術に対しても強い猜疑心が生まれていました。
初診時の表情や言葉からも、長期間続く痛みと度重なる失望によって、精神的に大きく追い込まれている様子が伝わってきました。
痛みが長期間続くと、身体だけでなく心理面にも大きな影響が出ます。慢性腰痛では、痛みへの恐怖や不安が痛みをさらに増幅させることが知られており、この方もまさにその悪循環に陥っていました。1年前から気が付いたら徐々に腰痛になっており常態化している。
男性柔道整復師の先生に診てもらった後に、痛みが10/10になったこともあり、何かの施術の後にまた10/10の痛みになるかと思うと怖いんです。
座ると腰からお尻にかけて突っ張る感じが出てきて鈍痛がある。長期間続く痛みのため、日常生活のあらゆる場面で支障が出ていました。車の運転、食事、電車で座ることも困難で、精神的にも大きく追い込まれている状態でした。
「回復したら子どもと外出したい。今は家で座って一緒に遊んであげることもできない」と話されていたのが印象的でした。痛みが長期化すると、身体だけでなく心理面にも深い影響が出てきます。



車を運転する時、家で食事をするとき、電車に乗っても座れないくらい痛みを感じていたため、精神的にも大分追い込まれている。
回復したら子供と外出したい。今は家で座って一緒に遊んであげることもできない。
検査で分かった本当の原因
もともと柔軟性が高いタイプではなく、立位体前屈は+18cm。RDQ(ロールアンドモリス・ディサビリティスケール)は15/24で、日常生活が大きく障害されている状態でした。
座ると痛みが強いため、問診も立位で実施。落ち着きがなく、悲観的な様子が見られ、ご本人も精神的な影響を自覚していました。
触診では、腰仙部の多裂筋に強い筋硬結があり、これが痛みの主な原因と考えられました。また、股関節周囲の可動制限が著しく、開脚・合蹠・伸展・屈曲のすべてで制限がありました。視診では、上半身優位の身体の使い方が推測されました。
保存療法の観点からは、腰仙部の筋硬結が慢性的な痛みを生み、3カ月以上続くことで脳が「痛みがある状態」を通常と記憶してしまっている可能性が高いと考えられました。問診から抑うつ傾向も伺え、慢性腰痛と心理状態の関係は研究でも示されています(Love AW, 1988)。
検査所見のまとめ
初診時の検査では、以下の特徴が見られました。
- 柔軟性は高くなく、立位体前屈は+18cm
- RDQは15/24で、日常生活が大きく障害されている
- 座位が困難なため問診も立位で実施。落ち着きがなく悲観的な様子が見られた
- 触診では腰仙部の多裂筋に強い筋硬結を認め、痛みの主因と考えられた
- 股関節周囲の可動制限が著しく、開脚・合蹠・伸展・屈曲の全方向で制限
- 視診では上半身優位の身体の使い方が推測された
RDQ(ロールアンドモリス)による日常生活の障害度
RDQ(ロールアンドモリス・ディサビリティスケール)は、腰痛による日常生活の障害度を評価する国際的な指標です。この方は15/24と高い数値で、生活の多くの場面で支障が出ている状態でした。


施術の方針
検査から、痛みの中心には腰仙部の多裂筋の強い筋硬結があり、可動性の消失が慢性的な痛みを生み出している状態でした。さらに、関連する深層筋群にも強い緊張が広がり、腰部全体の動きが制限されていました。
初回は、まず手技による強めの筋操作を行い、施術に耐えられるかどうかを慎重に確認しました。深層筋の可動性が大きく失われていたため、通常の手技だけでは十分にアプローチできないと判断しました。
そのため、深層筋へ直接アプローチできるマイオセラピーを、2〜4週ごとに継続して受けていただく方針としました。腰仙部だけでなく、股関節や背面全体の動きを改善するリハビリテーションも併行して行う必要があります。
来院間隔が1カ月に1回と空くため、自宅でのセルフケアが非常に重要になります。毎回の施術で運動療法を確認し、必要に応じて修正しながら進めていくことが回復の鍵となります。



落ち込んだ気分に対しては認知行動療法を行っていく必要がありそうだなあ
長期間の痛みと度重なる失望によって心理的ストレスも強く、痛みを増幅させる悪循環が起きていました。必要に応じて認知行動療法(CBT)による心理的サポートも視野に入れながら、身体と心の両面から回復を支えていく方針としました。
施術後の変化と回復のプロセス
初回〜3回目の変化(ゆっくりとした改善期)
初回はカイロプラクティックを中心に、指での強い押圧とアジャストメントを行いました。自宅ではスウェーデン式リラクゼーションエクササイズ(吸気・止気・吐息)を実施していただき、気分的には少し楽になったとのことでした。
2週後の来院では、マイオセラピー(2時間枠)を実施。初回から強めの圧にも耐えられ、患部に直接触れられる感覚が得られるようになりました。
2回目の治療後は、ご本人の印象では「効果がない」と感じられていましたが、細かく確認すると朝の通勤時にバイクに乗っても痛みが出なくなっていました。これは回復過程でよくあることで、改善点をご自身で見つけられない時期です。1〜3回目の間はメールでのケアも行いましたが、反応は芳しくありませんでした。
- 初回はカイロプラクティックを受けて頂く。指での強い押圧を患部に加えて、カイロプラクティックアジャストメントを行う。自宅での運動はスウェーデン式リラクゼーションエクササイズ(吸気、止気、吐息)を行ってもらう。気分的には少し楽になった。
- 2週後に来院してもらいマイオセラピー2時間枠を受けてもらう。我慢強い方で初回から圧を高めに掛けられる。患部(患者の主観的腰痛部分)に直接触ってもらった感触が得られる。
- 2回目の治療で、印象的には効果がないように思われているが、細かく確認すると朝の通勤時にバイクに乗っていても痛みが出なくなった。その他は変化がない。
※回復過程で良くあることなのですが、良くなっている部分がご自身で見つけられない状況です。1~3回目の治療の間メールによるケアを行っていたが芳しい反応はない。
【改善の非認識(Unawareness of Improvement)について】
症状が強い方は、医学的に「改善の非認識(Unawareness of Improvement)」と呼ばれる状態になりやすく、良くなっている部分に注意が向きにくい傾向があります。脳が痛みの情報を優先的に拾ってしまうため、実際には改善している項目があっても自覚しづらいのです。
そのため、フォローアップで回復しているポイントを“見える形”で示すことが非常に重要になります。これは慢性痛の回復過程ではごく自然に起こる現象で、患者さんの努力不足ではありません。
4回目以降の変化(改善が加速する時期)
自宅で行っているストレッチを確認したところ、方法・時間ともに不十分であることが分かりました。正しい負荷の感覚を理解していただくため、合蹠の膝に体重をかけて強めに開脚を行い、「このくらいまで動かす必要がある」という基準を共有しました。
その後、ご自宅でも家族に手伝ってもらいながら柔軟体操を継続できるようになりました。
腰の柔軟性を取り戻すためには、股関節やバックラインの柔軟性が重要であることを理解され、マイオバイブを用いて股関節やバックラインの施術も追加しました。
- マイオセラピーに加え、自宅で行っているというストレッチを確認するが方法、時間ともに不十分ということが確認されたため、「これは方法論的には間違っているが、このようなところまで行うことが大事である」ということをお伝えするために合蹠の膝に私が体重をかけて強引に開脚を行う。本人も理解してくださったようで、ご自宅で家族に手伝ってもらって柔軟体操をして頂けるようになった。
- 腰の柔軟性を取り戻すために股関節やバックラインの柔軟性も関わってくることを相談者本人が知り、マイオバイブで股関節やバックラインも治療を行う。
前向きな変化とメンテナンス期
ご本人が前向きに生活できるようになるまでは、メールでのケアを継続しました。
4回目の治療以降は、痛みの不安が軽減し、日常生活は問題ないレベルまで回復。その後は1カ月に1回のメンテナンスケアを継続されています。
- ご本人が前向きに生活できるようになるまでは、メールケアを行いました。
- 4回目の治療以降、ご本人も前向きになられ、日常生活は問題ないところまで回復。その後は1か月に1回のメンテナンスケアを受けてくださっています。
相談者の感想



来院を重ねる度に、生活スタイルが変化していきました。
友人知人と飲みに行く回数が増えた。
腰痛があった時は、座ると腰が痛くていても立ってもいられなくなる為、自然と飲み会に行くことが減っていた。
外出すること自体が億劫になっていたので、腰痛からの回復とともに以前のように種々のことに興味が湧くようになり外出する機会も増えました。
回復の過程を一言で表すとなんですか?



「脳と考えました。」



どうゆうことですか?



「腰の痛みが先か、脳の状態が先かどっちが先か分かりませんが、腰痛の事を考えている時間が減ってきて今では殆ど考えません。」
今考えればですが、車を運転する時、家で食事をするとき、電車に乗っても座れないくらい痛みを感じていたため、精神的にも大分追い込まれていました。それを考えなくなったんです。


院長の見解
深刻な状況の相談者は皆さんそうですが、最初のうちは幾らか回復していても回復を実感しづらいものです。
問診で細かい部分を聞いたりRDQを使って、できるようになったことを逐一確認することが大切です。1年も座れないくらいの状況ですと日常生活動作の多くができなくなっていました。
1つ2つとできることが増えているはずなのですが、そのことに着目するのが最初は難しいです。
幸いなことに慢性腰痛によって委縮した脳の部位は、腰痛がとれてくると元の大きさにもどるそうです
この方は強引なストレッチによって4回目以降明らかに回復に向かっていることを実感できました。
来院の度、来院の間にメールや電話でアフターフォローをしています。
勿論最初は煙たがられますが大切なケアです。



かなりお身体に負担のかかる方法をとりましたが、ご本人がありとあらゆる療法を試みて結果が出ていなかったので、根性でくらいついて来てくれたのだと思っています。
心理社会的要因と痛みの関係
腰仙部の筋硬結による慢性的な痛みが3カ月以上続くと、脳が「痛みのある状態」を通常と記憶してしまい、痛みが長引きやすくなります。問診では抑うつ傾向も見られ、心理的ストレスが痛みを増幅させる悪循環が起きている可能性がありました。
慢性腰痛と心理状態の関連は研究でも示されており、どのような帰属属性の方が慢性腰痛で抑うつ状態になりやすいかを調べた報告もあります。

