日本人の伝統的な習慣である「おふろ(入浴)」。近年、その健康効果や大切さが改めて見直されています。しかし、日々の忙しさからシャワーだけで済ませてしまったり、「身体を温めること」の本当の意味を深く考えたことがなかったりする方も多いのではないでしょうか。
当院には、足のしびれを主訴として来院される方のうち、約8割の方が普段シャワーだけで湯船に浸からないライフスタイルを送られているという臨床的な傾向があります。もちろん、しびれの原因はヘルニアのような物理的損傷だけではなく、筋膜や神経根など多様ですが、血流不足が大きな要因であることは間違いありません。毎日湯船に浸かる習慣があるかどうかで、こうした不調のリスクは大きく変わってきます。
ヒート・ショック・プロテイン(HSP)と免疫力
身体を温めることの健康上のメリットとして、近年よく耳にするのが「ヒート・ショック・プロテイン(HSP)」というタンパク質の一種です。
人間の身体はタンパク質で出来ていますが、温熱刺激によってHSPが生成されると、タンパク質の再合成能力や修復能力が活性化します。疲労した細胞や傷ついた組織の修復が早まるだけでなく、自然免疫系が高まることも研究で分かっています。
実際の研究では、毎日の入浴習慣とHSPの上昇に関するデータも報告されています。
健常男性11名を日常の入浴法として40℃10分の全身入浴群とシャワー浴群に分け、5日間の日常入浴後に試験入浴として40℃15分の全身入浴と保温を実施し、体温(舌下温度)を測定した。中略。
全身入浴またはシャワー浴の入浴習慣がその後のHSP入浴法に及ぼす影響
全身入浴群において、試験入浴中の体温はシャワー浴群に比し有意に上昇し、HSP70は試験入浴前に比し有意に上昇。全身入浴を継続することで、温熱刺激に対する感受性が高まり、HSP70の有意な上昇、疲労感の軽減、気分状態を良好にし、心身の健康に良い影響を及ぼすることが示唆された
効果的な入浴方法の目安
このメカニズムを日常に取り入れるための目安として、週に2〜3回、以下のポイントを意識してみると良いでしょう。
- お湯の温度や調整に合わせて、計15分〜20分ほど湯船に浸かる
- 入浴中は体温が38度以上になるように工夫する(お風呂上りに37度以上の体温を約10分キープするイメージです)
- 普段シャワー中心の方は、まずは37度以上を目指し、段階的に体を慣らしていく
体温がしっかり上がることで循環器系にも良い刺激となり、深いリラックス効果も得られます。
ただ私の経験上、舌下温が38以上になるのは、なかなか忍耐力を要します。無理せず少しずつトライしてみてください。具体的にどれくらい体温が上昇しているか知るには、体温計を口にくわえて入浴なさるといいです。

入浴習慣の無い人は取り敢えず37度以上を目指し、段階を追って38度を目指すと良いと思います。
40度のお風呂に毎日しっかり浸かる習慣がある人と、シャワーだけで済ませる人を比較した研究です。お湯に浸かる習慣を続けた人の方が、温熱刺激によるHSP70という細胞を守るタンパク質がしっかり増え、疲労感の軽減や気分の向上など、心身により良い効果が現れることが分かっています。
全身入浴またはシャワー浴の入浴習慣がその後のHSP入浴法に及ぼす影https://www.jstage.jst.go.jp/article/jjhr/42/0/42_202142G03/_article/-char/ja
この部分、カイロプラクティック臨床で確認しています。症状がある状態から、快適な状態を取り戻すには、身体の細胞が痛みを出しやすい状態から、出さない細胞に変化を促すようなイメージです。
冒頭書いたように、身体症状を慢性的に抱えている方の中に一定割合で湯舟に使っていない方がおります。
免疫系にも明らかに関与
HSPは分子サイズによって複数のファミリー(Hsp90、Hsp70、Hsp40など)に分類され、タンパク質の正常な働きを保つ中心的な役割を担っています。例えばHsp70などは免疫細胞に働きかけて生体防御に必要な物質の分泌を促すなど、無数の免疫調節機能に関与していることが分かっています。
Zininga T, et al. Heat Shock Proteins as Immunomodulants. Molecules. 2018.
※HSPの働きには多面的な側面があり、現在も研究が進められています。
まだ未解明の部分もありますが、感染症や他の疾患からも熱ショックプロテインがガードしてくれている可能性があります。
おわりに
カイロプラクティックは背骨や構造の調整を通じて自然治癒力を引き出すケアを行いますが、日々の生活習慣におけるセルフケアも回復を支える重要な要素です。
熱ショックタンパク質の研究などに見られるように、身体を温める工夫は日々の健康を維持するための心強い味方になります。ぜひ無理のない範囲で、毎日のライフスタイルに温かな習慣を取り入れてみてください。
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