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伊藤孝英
院長
ロイヤルメルボルン工科大学健康科学部カイロプラクティック学科日本校卒業。B.C.Sc(カイロプラクティック学士), B.App.Sc.(応用理学士)。従来の筋骨格系障害としての腰背部痛から生物社会心理的要因としての腰背部痛へとシフトチェンジ。鬱や不安障害にも着目したマルチモデルでヒューマンケアしています。
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身体を温めるのは免疫力を上げる基本

日本人の習慣として入浴があります。近年入浴の大切さが改めて認識されつつありますが、このページではさまざまな角度から身体を温めることの大切さを考えていきます。

目次

自然治癒力を高める

炎のイメージ画
身体を温めることは大切

カイロプラクティックでは、背骨を調整することで自然治癒力が高まるという表現をして、そのコンセプトでケアを実践しています。

カイロプラクティック治療とは、カイロプラクティック理論に基づいて行われる治療です。狭義には人体構造、特に脊柱、骨盤に対する徒手調整でありますが、広義には外科を除いた体操、食事、物理療法などを含む治療法となります。

ですから皆さんの生活習慣で改善した方が良さそうなところは、提案するのも仕事です。「身体を温めましょう、冷やさないようにしましょう」もその一つです。

身体を温めてあげる事はやはり大切

身体を温めてあげることの大切さは故安保徹先生が研究されていた冷えと癌との関係からも読み取れるように冷えは、やっぱり良くないですね。(この癌に関しては、賛否両論ですが…)

例えば当院で痺れを主訴として来院なさる方は8割くらいの方が湯船には浸からないライフスタイルです。

冷えは自然治癒力の大敵

当院で回復された方は体感的に良く分かるのですが、痺れはヘルニアのような物理的損傷では起きていません。基本的に原因は血流不足です。それが筋膜レベルなのか、神経根レベルなのか、はたまたその辺り一帯が、ということなのかは解りません。

一般的にはお風呂に浸かることで血流を良くする訳ですから、毎日の入浴がある方と無い方とでは、痺れのような症状が出るリスクが違ってきます。

昔から冷えは万病の元と言われますが、より良い健康を維持するという観点からも近年研究がなされています。

ヒート・ショック・プロテインで免疫力があがる

猿の温泉
体温38度を目指すといい

耳にした方も多いとおもいますが、ヒート・ショック・プロテイン(HSP)という考え方です。銭湯に行くとポスターが貼ってあります。

ヒート・ショック・プロテインをざっくり説明すると

「人間の身体はタンパク質で出来ている。そのタンパク質を温めてあげるとタンパク質の再合成能力が上がる」ということです。

身体を構成している細胞もタンパク質で出来ていますから、新しい細胞が沢山できるということです。

当然、疲労している細胞、痛んでいる細胞組織の修復も早いのですし、自然免疫系も活性化されることが研究で解かっているので、いわゆる病気になりづらいライフスタイルの一つと言えます。

入浴の方法

方法は週に2.3回、お湯の温度にもよりますが、計15分~20分湯船に浸かって、入浴中は体温を38度以上にして、お風呂上りに37度以上の体温を10分キープするという方法です。

体温が37何度とか言われても、昔から銭湯や温泉に浸かるのが好きな人でないかぎり、体感的に病気になりづらい状態というのは判りづらい。

体温計を使い38度まで上げる

日本の研究では湯舟に浸かることでHps70が上昇するとする研究がある。これにより自然免疫が活性化されることが予測されます。

またヒートショックプロテインは互いに影響をしあっているので、他のヒートショックプロテインを計測すれば何らかの変化があることも予測できます。

健常男性11名を日常の入浴法として40℃10分の全身入浴群とシャワー浴群に分け、5日間の日常入浴後に試験入浴として40℃15分の全身入浴と保温を実施し、体温(舌下温度)を測定した。また、試験入浴前、1日後、2日後にHSP70発現量、体力指数および気分プロフィール検査、気分・感覚状態のアンケートを実施。

全身入浴群において、試験入浴中の体温はシャワー浴群に比し有意に上昇し、HSP70は試験入浴前に比し有意に上昇。
全身入浴を継続することで、温熱刺激に対する感受性が高まり、HSP70の有意な上昇、疲労感の軽減、気分状態を良好にし、心身の健康に良い影響を及ぼすことが示唆された

全身入浴またはシャワー浴の入浴習慣がその後のHSP入浴法に及ぼす影響 https://www.jstage.jst.go.jp/article/jjhr/42/0/42_202142G03/_article/-char/ja

勿論小規模の研究ですから病気を減らすという確実なことは言えませんが、体内ではヒートショックプロテインの反応が起きているということは言えます。

具体的にどれくらい体温が上昇しているか知るには、体温計を口にくわえて入浴なさるといいです。

体温計
慣れると面白い体温計を加えてお風呂

入浴中は38度以上になるのが良いとされています。これが入浴習慣のない方にはかなりのハードルの高さ。熱めのお湯にしておかないと意外と体温が上がってきません。入浴習慣の無い人は取り敢えず37度以上を目指し、段階を追って38度を目指すと良いと思います。

自然とある程度の入浴時間が確保されますから、心臓などの循環器系にも良い影響があり、リラックスもできます。

湯船に出たり入ったりしてもいいので、38度まで体温が上がるように入浴を工夫してみてください。週に2.3回だったかな?このような時間を作ることでタンパク質の合成が活性化するようです。

免疫調節剤としての熱ショックタンパク質

さてこのヒートショックプロテインですが詳しく医学的に判っていることを検索してみました。いま判っているヒートショックプロテインを書いていきます。

先ず名前がヒートショックプロテイン(熱ショックたんぱく質)なので熱にだけ反応しそうなイメージですが、あらゆるストレスに反応するようです。

以下の論文は免疫反応に関係するヒートショックプロテインの反応の一部を掲載しました。一つ言えるのはヒートショックプロテインは種類が豊富にあります。数値によってわけられているのですが、それらが複雑に反応しあって免疫系と関係しているようで、全貌は解明できていません。

一部のヒートショックプロテイン(HSP)はストレス誘発性です。
 Hspは、タンパク質の折り畳み、タンパク質の輸送、タンパク質複合体の組み立て/分解など、いくつかのプロセスに関与しています。したがって、Hspはタンパク質恒常性において中心的な役割を果たします。

Hspの分類は、主に分子サイズに基づいています。それらは一般に、Hsp110、Hsp100、Hsp90、Hsp70、Hsp60、Hsp40、および小さなHsp(約15〜30 kDa)の7つの主要なファミリーに分類されます。

細胞外Hsp90は、フォールディングを促進し、ナチュラルキラー細胞やTリンパ球などの免疫細胞上の受容体の活性を促進すると考えられています。

免疫調節におけるHsp40の直接的な役割は十分に研究されていませんが、IL-6産生を刺激する能力を保持しており、Hsp40が免疫細胞を調節する可能性があることを示唆しています。

Hsp70を含む細胞外膜は、マクロファージによるTNF-α産生を最大260倍誘導することが見出されています。TNF-αはは腫瘍壊死因子とも呼ばれるサイトカインの一つです。 免疫機能が正常な人では、体内で細菌やウイルスなどによる感染を防いだり、腫瘍細胞が発生した場合に排除したりするはたらきをします。

Hsp70の炎症誘発性活性は、転写因子NF-κBの核への侵入に関連しており、遺伝子の転写を促進して、TNF-α、IFN-γ、IL-1β、I-L6、およびIL-の分泌を増加させます。一方、その抗炎症機能は、NF-κBの核への侵入を制限することによってIL-10産生を活性化する能力に関連。

結論:熱ショックタンパク質は、無数の免疫調節機能に関与しています。興味深いことに、免疫細胞の機能に対するいくつかの熱ショックタンパク質の影響は、矛盾した結果をもたらしました。さらに、熱ショックタンパク質のほぼすべての主要なファミリーがネットワークで機能していることに注目するのは興味深いことです。

Zininga T, Ramatsui L, Shonhai A. Heat Shock Proteins as Immunomodulants. Molecules. 2018 Nov 1;23(11):2846. doi: 10.3390/molecules23112846. PMID: 30388847; PMCID: PMC6278532.

ヒートショックプロテインに着目すればある種の運動でも産生される

ヒートショックプロテインは身体を温めることで産生されるが、オリンピック選手への研究から運動をすることでも産生されることが確認されている。温めることと組み合わせても自然治癒力が高まる。

一般社団法人 HSPプロジェクト研究所を設立して:ヒートショックプロテイン(HS70)と温泉 https://www.jstage.jst.go.jp/article/onki/80/3/80_121/_article/-char/ja

この温泉、銭湯、入浴関連の研究は伊藤要子先生が中心となって行われています。もしかしたら、日本人の寿命が長いことと入浴習慣の関係があるのかもしれませんし、今後も長寿社会を語る上で欠かせないキーワードになってくるかもしれません。

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