サブラクセーションの説明

カイロプラクティックのアイデンティティともいえる用語に「サブラクセーション=subluxation」があります。

このサブラクセーションは日本語にすると亜脱臼と訳されます。

現在では非科学的であると医学会から標的にされていますが、1970年代の医学文献には腰痛、下肢痛の原因であると表記されている用語です。

またカイロ業界内でも当初から議論がずっと続いている用語でもあります。理由は難解でわかりづらいからです。

とはいえ、カイロプラクティックの臨床の中心にあるのがサブラクセーションです。なぜならカイロプラクティックという職業の基礎とは、徒手療法で治療される第一病変、すなわちサブラクセーションだとされているからです。

カイロプラクターは症状を治療するのではなく、サブラクセーションを取り除くのをコンセプトとしています。

このページでは

  1. 現状のサブラクセーションの定義(難解です)
  2. オーストラリア・脊椎財団を中心で協議中のサブラクセーションの定義が再考

を解説していきます。

先ずは非常に解りづらい、今現在の定義を説明していきます。

カイロプラクティックに関わりがある方以外は馴染みの無い単語ばかりですから、順を追って丁寧に解説していきますので、諦めないで読み通していただけると嬉しいです。

カイロプラクティック・サブラクセーションの定義

先ずサブラクセーションの定義ですが、世界保健機関が定めた「カイロプラクティックの基礎教育と安全性に関するWHOガイドライン」の中に出てくる定義をご紹介します。

「関節面間の接触は保たれているが、アライメント、動きの統一性、および(あるいは)生理学的機能が変化している、関節あるいは運動分節の障害もしくは機能不全。これは本質として機能的なものであり、生体力学的および神経学的な統合に影響しうる。」

公益社団法人 日本WHO協会 日本語で読めるWHO報告書 カイロプラクティックの基礎教育と安全性に関する WHOガイドライン(日本カイロプラクターズ協会 )

ちょっと、いや かなり解かりづらいです。私も学生の頃「?」がいくつも並んだのを覚えています。丁寧に解説しますね。

先ず肝になる部分は、太文字にした関節あるいは運動分節の障害もしくは機能不全 です。

原文ですと以下のようになります。


A lesion or dysfunction in a joint or motion segment in which alignment, movement
integrity and/or physiological function are altered, although contact between joint
surfaces remains intact. It is essentially a functional entity, which may influence
biomechanical and neural integrity.

https://apps.who.int/iris/handle/10665/43352

では一体どんな状態の 関節機能不全 を言っているのか? 最初の文言からみていきましょう。

順を追って言葉の解説

「関節面間の接触は保たれているが、アライメント、動きの統一性、および(あるいは)生理学的機能が変化している」

「関節面間の接触は保たれているが」

写真は背骨の関節を横から見たところですが、この関節は上下の2つの骨の関節突起と呼ばれる部分出来ています。この接触が保たれているということです。
これと違い、接触が保たれていない状態は脱臼=luxationです。
写真でで囲んである所が、関節面が接触している部分です。この関節面は接触しているということです。定義では背骨の関節に限ってはいません。肩だったり、膝の関節でも当てはまります。

つまり関節が外れていないのだけど、

アライメント、 動きの統一性が  変化している

アライメントとは:alignment=背骨1個1個を並べて構造上の列になっているもの。図の黄色いラインです。

いわゆる背骨をいくつかつなげて見た時の見た目、全体のラインが 変化している、通常出ない ということです。

日本では画像診断は行われないのが通常ですが、カイロプラクターは触診能力に長けていますので、アラインメントのどの部分に変化が起きているのかは直ぐに見当がつきます。

動きの統一性は、例えば図のように(頭頚部を後ろから見たところ)頭を左に倒した時に頚椎の棘突起は連続して矢印のように動きます。

サブラクセーションがあると、この連続した動きに変化がおこります。

その連動性がさまたげられていたり、背骨の動きがちぐはぐになっている状態を言っています。

図では頚椎ですが、胸椎でも腰椎でもおきますし、肩関節、股関節、足首の関節など、どこでも起きます。足首で有名なのはランナーの方なら聞いたことある「プロネーション」も動きの統一性 の一つです。

カイロプラクティック・テクニック総覧 Thomas F.Bergmann,David H.Peterson,Dana J.Lawrence 監訳 竹谷内宏明・仲野弥和 P218より抜粋

および(あるいは)生理学的機能が変化している

および は同格で 主に名詞相互をつなぎ、それらの指すものに一括して言及する意を表しますから
「ならびに。かつ。…も…もみな。」と同じ意味になります。

ですから、およびを選択した場合、
背骨の何らかの変化 かつ からだの働きの変化もみなある となります。

あるいは(或いは)は →同種の事柄のうちどれか一つを指す ので

或いはを選択した場合、
背骨のラインや動きの統一性 は保たれているが、からだの働きが変化している となります。

生理学は生体またはその器官、細胞などの機能を研究する学問。

広辞苑

生理学は範囲が広いです。からだの働きすべてを研究するものです。

からだの働きの変化は大きいものから小さいものまで様々です。大きなものでは眠れないとか、内臓の働きが良くない、痛みもそうですし、感覚異常や、力が入らないなどですし、小さなものですと目の瞳孔反射のスピードが遅い、筋肉反射の低下など、生理学で説明できることすべての変化です。

関節 あるいは 運動分節の障害 もしくは 機能不全。

肝の部分です。言葉の意味を明確にしてから、4つの文章をつくります。

関節は大丈夫ですね。

黄色の線に囲われた部分を、背骨の運動分節と言います。この場合は腰椎3番.4番で構成されています骨と椎間板と、模型にはない靭帯や、関節包、場合によっては多裂筋、脊髄硬膜、交感神経神経節などをも含みます

運動分節は運動の機能単位です。(脊椎モーション・セグメント:2つの隣接した椎体と、それをつなぐ結合組織からなる機能単位)

あるいは(或いは):同種の事柄のうちどれか一つを指す 
もしくは:または。あるいは。もしは。どちらか一つを選択する場合を表します
障害:①さわり、さまたげ。じゃま。②身体器官になんらかのさわりがあって、機能をはたさないこと。
機能不全:はたらきに欠ける所、弱い所などがあること。不完全なこと
障害:さわり、さまたげ、何らかのさわりがあって機能を果たさないこと

以上のことから、以下の4パターンが肝の部分の解説です。

  1. 関節に何らかのさわり、さまたげがあって機能を果たさないこと
  2. 運動分節に何らかのさわりがあって機能を果たさないこと
  3. 関節のはたらきに欠ける所、弱い所などがあること
  4. 運動分節のはたらきに欠ける所、弱い所などがあること

何で関節だけでなく、もしくは運動分節と分けて書いているかというと、ひとつは運動分節だけだと背骨だけになってしまうから。

また症状や生理学的変化をおこしうる背骨の構造は当然関節だけでなく、周囲の構造も含むからです。背骨の中にも血管がありますし細かい神経の走行もあります。

これは本質として 機能的なものであり

本質はあるものを成り立たせているそのものの独自の性質。サブラクセーションはそのものとして成り立たせているものが 「役割、はたらき」 であると言っているわけです。

機能的の対義語は形態上(形、ありさま=解剖学上)になります。

機能は、はたらき、相互に関連しあって全体を構成している各要素や部分がゆうする固有な役割。また、その役割を果たすこと

だからサブラクセーションを主語にした場合、サブラクセーションの働きは自律神経症状を出すことです、痛みをだすことです、など言えるわけです。

ですから解剖学的な「ズレてる」ということではないです。

生体力学的 および 神経学的な統合に影響しうる。

生体力学的:人間や動物のからだは常に力学的環境下におかれており,その運動は体内の運動を含むすべてが力学の法則に従ってなされる。生体力学とは,このような生体の運動と運動に関係する生体の構造を,主として力学的な視点に立って研究する学問領域

および:は同格で 主に名詞相互をつなぎ、それらの指すものに一括して言及する意を表す。
「ならびに。かつ。…も…もみな。」と同じ意味

神経学的な統合とありますが、原文ではneural integrity となっているので、神経系の完全な状態に影響する というほうがいいかもしれません。

神経学:neurologyで:神経および神経系の科学、特にそれらに影響を与える疾患の科学 です。

「サブラクセーションと呼ばれる障害」は形態上(解剖学上)のものでなく、性質は役割り的なもので、人間が動く時の正常な関節運動に影響するし、神経系の完全な状態に影響するかもしれない、影響する可能性がある

と言っているわけです。

ふー。

この非常に解りづらい、場合によって条件が変わってくる(および、または、あるいはを使うので=後述します) 関節あるいは運動分節の障害 に 特に注目しているのがカイロプラクティックです。

これを踏まえてもう一度、定義を記します。

サブラクセーションにとは「関節面間の接触は保たれているが、アライメント、動きの統一性、および(あるいは)生理学的機能が変化している、関節あるいは運動分節の障害もしくは機能不全。これは本質として機能的なものであり、生体力学的および神経学的な統合に影響しうる。」

お疲れさまです。

このサブラクセーションという概念を無くせばいいという考えも歴史上ありましたが、そうするとカイロプラクティックという職業はなくても良くなります。だってオステオパスや理学療法士の先生方も、脊椎マニピュレーションをおこないます。

カイロプラクティックという職業を維持していく上でsublxationが重要なことが以下の論文からも伺えます。

脊椎亜脱臼に焦点を当ててカイロプラクティックの専門職を特定することは、他の医療専門職によって複製されない専門職の独自性を与え、したがって、医療専門職としてのカイロプラクティックの存在を正当化する可能性があります。

椎骨の亜脱臼に焦点を当てているアイデンティティは、カイロプラクティック専門職の創設の当初の意図とも一致します。

Analysis and Adjustment of Vertebral Subluxation as a Separate and Distinct Identity for the Chiropractic Profession: A Commentary,JohnHartDC, MHSc

しかしこのサブラクセーションという概念がどれだけカイロプラクターを苦しめ、嘲笑の的にされてきたことか…

さて次のページでは「昔は整形外科医がサブラクセーションが腰痛の原因と言っていた」「サブラクセーションの定義が変わる!?」と続けてお送りします。

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