腰痛で医療機関を受診し、脊椎すべり症の診断を受ける方がいます。下記のガイドラインで確認できるように、腰椎のすべり症=腰痛 では無いこともあります。
どのように管理していくかを、カイロプラクティックの症例を通して確認していきましょう。
目次
就職してから腰痛が増してきた20代女性
- 1日の座り時間は7時間以上
- 腰から背中にかけて強い貼り感がある
- 少しずつ悪化してきているので心配
- 病院でレントゲン検査をしたら第5腰椎が5ミリほど滑っている
- 1ヶ月牽引治療と湿布治療を続けるが変化が無い為ネット検索で当院を見つけた
2021年現在、画像診断の結果で悩んでいる方は減ってきています。ただ過去に受けた診断が尾を引いている方は多いので、すべり症を苦にされている方はご参考ください。
痛みと状態
- 前屈は+20センチと柔軟性は少ない
- ペインスケールは7と痛みは大きい
- 夜眠る時、腰や背中が疼くことが増えて来た
柔軟性は直接腰痛と相関があるわけではありませんが、臨床上は気になるところ。
検査と施術
- 骨盤と第4腰椎の可動域の低下があるのでカイロプラクティック・アジャストメント
- 起立筋の浅筋膜の自由度が低下している。部分的にマイオバイブを使って自由度を付ける
- 運動不足が問診より伺えたので、自宅で出来る運動を指導
- 初めての来院後には痛みは2くらいまで下がっている
コメント
すべっている状態自体が腰痛とは関係ないことが体験的に分かった。しっかり運動をしていけば痛みが出ない気がする
院長コメント
多くのすべっている状態は痛みとは直接関係ありません。痛みを出している組織は膜組織です。
滑っている事で筋肉の配列に負担がかかっている事は確かなのですが、ゆるめたり調整することで物理的に負荷がかかる部分を逸らせると、痛みを軽減させることは可能です。
画像所見と非特異的腰痛に関する体系的レビューを実施した結果、X線撮影で確認できる異常所見(脊椎分離症・脊椎辷り症・潜在性二分脊椎・腰仙移行椎・変形性脊椎症・ショイエルマン病)と非特異的腰痛との間に関連性は認められない
最初に医療機関を受診することは常識として当然の選択肢かもしれませんが、カイロプラクターの立場としては、最初にカイロプラクティックに来て欲しいもの。
なぜならばたとえレントゲンを撮ってすべっている状態だと解かったとしても、臨床上は解決にならないことが多いです。
2021年追記:ガイドラインが出されたようです
腰椎すべり症のガイドライン
変性腰椎すべり症は腰痛の一般的な原因であり、米国の人口の約11.5%に影響を及ぼしています。症候性腰椎すべり症※の患者は
最初に、非麻薬性および麻薬性鎮痛薬、硬膜外ステロイド注射、経椎間孔注射、および理学療法を含むがこれらに限定されない保守的な管理戦略で治療することができます。
保守的な管理戦略に失敗した厳選された患者には、外科的管理が適切です
Chan AK, Sharma V, Robinson LC, Mummaneni PV. Summary of Guidelines for the Treatment of Lumbar Spondylolisthesis. Neurosurg Clin N Am. 2019 Jul;30(3):353-364. doi: 10.1016/j.nec.2019.02.009. PMID: 31078236.
※症候性としてあるのは、無症候性のすべり症もあるからです。
そんなことを言っても仕方ないかもしれませんが、この相談者のように1ヶ月しても痛みの変化が無い場合は、カイロプラクティック(上記のガイドラインで言うところの理学療法に限定されない保守的な管理戦略)に相談してみましょう。
大切なのは管理戦略 としてあるところです。滑っているのを戻すのではなく、症候、症状を管理するという目的が、いわゆる治療です。