肩のインピンジメント症候群への手術
肩のインピンジメント症候群(肩が上がらない時の診断の一つ)に関節鏡視下肩峰下減圧術という手術があるようです。
フィンランドの公立病院で210人を対照に3つのグループに分けたランダム化、2重盲検による疑似治療を含む比較対照試験が行われ、関節鏡視下肩峰下除圧術は臨床的な意義は無いという結論の論文がBMJに出されました。
患者は一貫して肩インピンジメント症候群と診断を受けた210人。
3グループは
①関節鏡下除圧術を受けたグループ
②肩に穴をあけて手術しないけど本人には手術しましたと伝えたプラセボグループ
③運動療法をしたグループ
です。
2年間のフォローアップした分かったこと
①関節鏡視下肩峰下減圧術を受けたグループは痛みが4ポイント下がった(15分の)ものの事前に設定してあった最低限必要な臨床的意義の有意差は無かった。
②運動療法は盲検法において欠陥があったものの、手術群でいい結果がでなかった患者は、運動療法に移行することをベースに考えたほうが良さそうだ。
当院の患者さんだった方も数回カイロプラクティック治療を受けた後、肩の手術を受けてその後数年リハビリされていましたが、大きな変化は感じらないようにお見受けしました。
これから関節鏡視下肩峰下除圧術を検討されている方は、考えなおしたほうが良さそうな研究結果ですね。
関節鏡視下肩峰下除圧術
腰の手術や膝の手術に効果がないことが多いことは何年も前から言われていますが、肩の手術に関しても言えるという研究結果です。
肩の痛みで一番多い「肩峰(けんぽう)」と呼ばれる部分の痛みへの手術と、手術と見せかけて手術しない偽手術、経過観察の3種類で6か月後、12か月後の回復率を比べても差がなかったようです。
実際の結果は6カ月後および12カ月後のいずれの時点においても、経過観察群を含む全ての群で肩の症状が改善していたのです。
肩峰の痛みの特徴
手術の種類は「関節鏡視下肩峰下除圧術」(かんせつきょうかけんぽうげんあつじゅつ)という手術で、イギリスではここ数年で手術数が増えている方法のようです。英国ではその実施件数は2000年の2,523件から2010年には2万1,355件に増加している模様。
日本ではどうなんでしょうね?
慌てて肩の手術をする必要はなさそうです。
ラドバウド大学医療センター(オランダ)のBerend Schreurs氏は、「信頼に足る研究グループによる今回の報告が、今後の日常診療に変化をもたらすことを期待している。合併症リスクが低くても得られるメリットがなければ高額な外科手術を実施すべきではない」としている。