肩こりの原因を探したり、その肩こり部分は組織学的にどうなっているのかを知りたい方は多いもの。
カイロプラクティックの臨床中でも肩こりが主訴の患者さんが「そこです、どうなっていますか?やっぱり硬いですか?凝っていますか?」と聞いてくることは多いです。
性格が素直なのか、ひねくれているのか私本人には解りませんが、その度に率直な意見をお伝えしています。
肩こりは筋膜は勿論、関節組織からも出る感覚
巷で流行っていてマーケティング用語にもなった筋膜。そこで言われているのは体中に張り巡らされているfascia(ファシア)の筋肉を覆っている「筋筋膜」、とくに浅筋膜のことを指して言っているのですが、実際のファシアは筋筋膜だけでなく、さまざまな組織と連結していて、例えば骨膜や関節包などと連結して互いに影響しています。
患者さんが座っている状態で肩の筋肉を触って、とても張っているのだが、うつ伏せでは張っていない患者さんもおります。座った状態だと筋肉が緊張して、それが関節包もひっぱり関節が硬くなっている場合、関節の動きを良くして、座っている状態で緊張しないコンディショニングが必要となります。
この対応が遅いと、緊張した筋肉を覆う筋膜は、線維化してきてしまいます。線維化した筋膜は元にもどりません。
このようなパタンの場合、患者さんがうつ伏せで肩を触ったときには「今は肩は張っていませんよ」と伝えると患者さんは何故かガッカリする方が多いです。
肩凝りが出てから3-6ヶ月以内にはケアを
肩凝りの感覚は突然やってくるものです。それは肉体的な要素もありますが、社会的な要素、心理的要素も加味されて出てくる感覚です。ストレスも含め、ある程度筋緊張がたまってから感覚として出てきます。
肩こりの出始めはそこまで深刻ではないと思いますが、早めに対応するのが一番よいです。なぜ早めがいいかというと、先述の通り筋膜の線維化が起きてしまうのが一つ、もう一つは半年以上になれば脳が記憶し、肩こりがある状態で安定していきます。これは身体のバランスもそうですし、認知的なバランスも含まれます。


具体的な変化
日本人には肩こりが非常に多いのですが、世界的にみると肩こりの研究は少ないです。生化学的な研究ではホルモンの影響を伴う全身性の慢性炎症が原因とされているようです。
2026年になると、さまざまな疾患の原因の背景に慢性炎症が上げられています。腰痛もそうですし、うつ病もそういわれ始めています。
炎症の原因はさまざまですが、基本的には規則正しい生活つまり①充分な睡眠と、②適度な運動、③栄養バランスのとれた食事からなるべく逸脱しないことが第一と言えます。
肩の凝りは、ホルモンの影響を伴う全身性の発症について議論されている。
Katthagen JC, Jensen G, Voigt C, Lill H. Schultersteife [Shoulder stiffness]. Unfallchirurg. 2012 Jun;115(6):527-38; quiz 539-40. German. doi: 10.1007/s00113-012-2234-8. PMID: 22674486.
線維芽細胞増殖を伴う慢性炎症の結果として、筋や関節包の線維がカプセル状になったり、靭帯の萎縮、筋肉のバランス消失がおこります。
組織学的なことはさておき、生活習慣として肩こりになる前には、常に肩に力が入っている生活であることが多い。
力が入っている状態は筋肉が収縮しているということです。かるい筋トレを46時中しているとも言えますから、肩の筋肉が分厚くなっていきます。よく中年以降の女性で肩の後ろが盛り上がっているような方を見かけますが、上部僧帽筋が分厚くなってしまっているのです。
医学的な処置としては、物理療法および理学療法をする、経口ステロイドなどが論文であげられています。最近は生理的食塩水を注射して肥厚した筋膜を剥がす方法が流行っているようですが、Easy come easy goのような感があります。
カイロプラクティックの臨床現場では、生活習慣を見直して、筋操作、アジャストメントといったパッシブケアとアクティブケアで肩の運動を促すこととなります。
西洋医学ではステロイド
治療法は、肩こりの段階と期間によって異なる。選択される一次治療は経口ステロイド療法であり、その後に理学療法と理学療法が続きます。
ステロイドを関節内に塗布することもできます。6か月後に保存的治療が失敗した場合は関節鏡による関節溶解が適応となります。
Katthagen JC, Jensen G, Voigt C, Lill H. Schultersteife [Shoulder stiffness]. Unfallchirurg. 2012 Jun;115(6):527-38; quiz 539-40. German. doi: 10.1007/s00113-012-2234-8. PMID: 22674486.(同上)
上記の研究はショルダスティフネスでも重症なもを対象にしたのだと思われます。日本では経口ステロイドは余程でない限り利用は無いと思います。
筋膜リリースの意味
最近メディアでも取り上げられている「筋膜リリース」。筋肉を覆っている膜組織の柔軟性を回復させるものです。皮膚と脂肪層や脂肪層と筋膜(浅筋膜)の癒着をとっていくことで、凝りや痛み、痺れを取っていきます。
図のように各組織の間にファシア(筋筋膜、結合組織)があるのですが、それらが硬くなってたり、癒着して遊びが少なくなってくるとさまざまな症状がでてくることが近年の研究で明らかになってきています。


先述した通りですが、一度線維化した筋膜は柔らかくなりません。写真は兎の浅筋膜の様子ですが、見るからに硬そうな組織であることが分ると思います。
筋膜リリーステクニックは、これを柔らかくするのではなく、何層にもなっている膜や筋肉どうしのスライドを作る方向で考えてあげてください。
ご自身で筋膜をリリースする道具も市場に沢山あります。そのようなアクティブケアで納得いくとろこまでリリースできれば、それが一番コストパフォーマンスが良いと思います。100均である道具もあればAmazonで筋膜ボールや筋膜ローラーなど数千円から数万円するものもあります。
高価であれば効果があるという訳でもないですが、いろいろと試されることをお勧めします。
筋膜リースはその方の健康状態、筋肉の状態にもよりますが、青いアザのようになることもあります。そしてその状態からの回復も年齢、状態によって違います。60歳代以降ですと場合によっては青アザが暫く残ることもあります。
ご自身でスタートを切るのが難しい場合や、取り切れない部分があればお近くの施術者にご相談ください。
マイオバイブや中国針で深い筋膜にアプローチ
写真で見たのは浅筋膜。筋肉は何層にもなっており、それぞれに固有の筋膜が包んでいると考えてください。これらの筋肉どうしの擦れをスムースにします。
市販の道具で届かない深さの筋膜に触りたい時は、中国針(長い鍼)やマイオセラピー®で刺激してもらうと到達する場合もあります。
この場合は施術で深部筋に到達すれば、患者さん自身が「そこが症状の芯です、まさにそこです!」と感激の声をあげられます。
関節が肩コリの原因の時
冒頭記しました通り、肩の筋肉がさほど硬くない場合、頚椎や胸椎の関節機能不全が肩コリの原因であるケースとなります。


関節からコリ感が出るのですが、何故出るかと言えば、やはりファシアの概念で説明するとわかりやすいです。
ファシアの概念でつなげますと、筋膜は連続して関節包につながり、関節包も骨膜へと繋がっていきます。組織的にはカルシウム成分が多くなれば、膜が硬くなり骨膜になります。この構造には知覚線維が多く存在し、動かないと潤滑駅である組織液がゲル状になりすべりが悪くなります。これの状態が痛みやコリ感の原因だと考えられています。
筋肉が柔らかい時に感じるコリ感は、関節を動かすことで解消されていきます。
この場合は筋操作もそこそこに、脊椎マニピュレーションや脊椎モビリゼーションをおこなって固まってる関節を動かしてあげると「とてもスッキリした」と患者さんは感激してくださいます。
意識状態が原因のことも
コリ感や痛みは最終的には『意識』が感じています。好きなことをやっているとコリを感じていないのに、仕事になるとすぐ肩こりになる方も多いです。これは肩コリが生物心理社会要因で起きていることを理解するのに良い例です。
楽しいことをしている時は快楽物質が放出されて、肩こりを感じづらい状態の時です。これらのことを鑑みるとある程度生活習慣を見直す必要もあります。
意識は記憶、言語、知覚と密接に関係していることが近年の研究で解かってきています。
認知行動療法も有効
この意識状態と肩こりの関連性を客観的に理解できるようになるのが認知行動療法です。上記の文脈で言えば、どのような行動をしている時に快楽物質が出やすいか、またそうでないかがハッキリ見えてきます。
現在ある視点を変化させていくような試みも認知行動療法によって行う場合もあります。肩こりの無かった頃の感覚を取り戻していきましょう。
この場合活動記録表の記入を通じて患者さんが日常生活の中で気づいていきます。この活動と肩こりが密接に関連しているのかと。必要ならば背景にあるスキーマ(心の癖)を同定して、お話合いをしていく時もあります。
肩こりは日本にしかない??
世界のどの言語にも、肩こりの直訳は無いといいます。英語で近いニュアンスのものはshoulder-stiffness というものがありますが、これは肩が強張っている、突っ張っていると日本語には直訳します。low back pain腰痛の論文は多いですが、shoulder-stiffnessの論文は少ないです。日本人からすると不思議な現象です。
ですから「肩こり」は「肩が強張っている」とは違う感覚なのかもしれません。そもそも外国映画やドラマで肩たたきや、肩を揉むシーンなど観たことがありません。
アジア圏にも 『katakori』 の直訳はない
よくモンゴリアンと、アングロサクソンは筋骨格系の形が違うから日本人は肩こりになる などとまことしやかに言われていますが、中国にも近隣の国にも『肩こり』はないのです(※韓国にはあるそうです)
中国語を勉強された方が、辞書で調べたら『肩酸-jian-suan』と辞書に載っていた。中国旅行に行ったとき、現地でこのような表現をして、塗り薬を購入したことがあるとわざわざ教えて下さった方がおりました。
たしかに中国語の『酸』には『スッパイ』という意味のほかに、『重だるい』や『だるい感じ』という感覚表現の意味があります。 日本語にも 『肩が重だるい』や『肩がだるい感じがする』という表現がありますから、『肩こり』とは違う表現であるとおもいます。
また以前職場の同僚であった中国人達も皆、口をそろえて「中国には肩こりはないです」と言っておりましたから、無いのでしょう。日本に来ると肩コリになると言っていました。ホントですか?と良く聞かれますが、本当です。(私が中国人に騙されているだけかもしれません)









