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はじめに:慢性痛と心の関係をどう捉えるか

慢性的な痛みを抱える方の多くは、抑うつや不安といった精神的な症状も併せ持っていることが少なくありません。 本記事では、「心身一如(しんしんいちにょ)」という視点から、痛みと心の関係性を見つめ直し、施術にどう活かしていくかを考えていきます。

当院「WHO基準カイロプラクティックそのまんまサンシャイン」は、2010年に『心身一如』をモットーに設立されました。 西洋医学のように心と身体を分けて考えるのではなく、人間をひとつのまとまりとして捉えることが自然であると私たちは考えています。

人間は、概念や感情の理解も身体感覚を通じて行っています。 運動器や内臓の感覚、機能性の向上を通じて「こころ」を捉え直すことが、痛みや不調から抜け出す糸口になるのではないかと、私たちは日々の臨床で感じています。

こころの痛みと身体の痛みは繋がっている

横顔と脳
社会的な痛みと身体の痛みは同じ部位が活動する

カイロプラクティックは背骨を通して人間を診るという代替医療です。
西洋医学と東洋医学の中間に位置すると言われるカイロプラクティックですが、心と体の世界に一石を投じられたらと感じ活動しています。

社会的拒絶と身体的痛みの脳活動の共通点

「社会的なことの拒否」と「身体的な痛み」について新しい研究が行われており、脳の同じ部分が活動していることがわかってきました。

研究は、最近本人が望まない別れを経験した人達に、元パートナーの写真を見せて脳のどの部分が反応しているのかをファンクションMRIで撮影したもの。

痛みを感じる第二次体性感覚野(大脳皮質の一部分)と島と呼ばれる部分(外側溝の奥深く)に存在する、痛みの感覚を支える要素の部分で、別れたパートナーの写真を見せた時と、身体の痛みを経験するときと同じ反応をすることがわかってきました。

この研究は社会的な拒絶と肉体的苦痛の間のオーバラップを示します。500の研究データベースによると、この痛みの感覚を支える要素の部分領域が発動していて肉体的な苦痛があったひとは88%と非常に高かった。

これらの結果は拒絶が「痛む」という考えに新しい意味を与えます。

『社会的なことの感情的な拒絶』と『肉体的苦痛』が単にともに痛ましくないという点において同様であることを示します。
彼らはまた、ストレス感と一般的な体性知覚表現(痛み)は共有するものがあると結論している。

うつ病と身体症状の関連(WHOデータ)

1999年のWHOの国際調査では、身体症状を主訴とする抑うつ患者が多いことが報告されています(詳細はページ下部の参考文献をご覧ください)。

身体症状が主訴になる傾向

25年前のデータなのですが、いったい本邦で知っている方はどれくらいいるのでしょうか?勿論身体の痛みを診させていただくことは大切ですが背景にこのような状況があるということが大切なのです。

社会精神医学的な視点(うつは病気ではなく反応)

そして抑鬱状態自体は私は病気というよりは、社会的な問題だと考える社会精神医学的な立場に立っています。人生の危機に面したときに現れる正常な反応という立場です。

問題を広い視点でみるとグローバル化によって人間の仕事が効率性のみを重視して、非人間的(機械的)な仕事が増えているというのも背景にはあると思います。当院に来院する多くの方も、お身体の痛みを主訴として来院なさいますが背景に大きなストレスを抱えていることも少なくありません。

抑うつ状態への対応は、薬物療法を選ぶ方もいれば、身体からのアプローチを通じて回復を目指す方もいらっしゃいます。どちらを選ぶかは、ご自身の価値観や状況に応じた大切な選択です。

慢性腰痛と抑うつの併存(米国研究)

座って悩む男性
身体の痛みをとるには、心の痛みを和らげることが必要

アメリカのノースカロライナで、2009年の研究

慢性腰痛の治療は今も薬物中心で、運動療法や抑うつへの対応が不足していることが示されています。(詳細はページ下部の参考文献をご覧ください)。

多くの慢性腰痛の方は医療機関では無意味な治療を受けているのが現状ではないでしょうか?一部の研究では、湿布やコルセット、牽引治療などが慢性腰痛に対して十分な効果を示さないケースも報告されています。

症状が慢性化すればそれだけ人生における創造的な時間は減ります。それは人間性を奪われるということを意味します。

そのまんま

慢性痛の期間が長い方ほど、抑うつ症状が併存していることが多く、問診時に集中が難しい状態や、感情的な反応が強く出ることもあります。
感情的で被創造的、被害者意識という状態です。

無理もありません、慢性腰痛の状態は脳内は鬱状態ですし脳細胞の一部の縮小してきているというデータもあるのですから。

まとめ

カイロプラクターとして感じるのは、気分の落ち込みや痛み、不安、身体機能の低下は、個別に見るのではなく並列に捉えるべきだということです。 慢性痛に抑うつや不安障害が併存する場合、痛みの重症度が高くなる傾向があり、身体のケアだけでは十分な改善が得られないこともあります。 心身を統合的にケアするホリスティックな視点が、回復への大切な鍵になると考えています。

2008年の精神医学の研究では、慢性筋骨格系の痛みに抑うつや不安障害が併存する場合、痛みの重症度が高くなる傾向があることが示されています。 一部の医師は、痛みの治療によって気分の落ち込みも改善すると考えていますが、痛みだけに集中した治療では、誤診や過少な対応につながる可能性があると指摘されています。(詳細はページ下部の参考文献をご覧ください)。

相談者は「痛みをどうにかしてほしい、痛みだけ何とかしてくれたらいい」という言い方をしますが、痛みだけ見ていても仕方ないのが解るとおもいます。

臨床心理士や精神科の医師は施術業を羨ましと思うこともあるそうです。遠慮せずに触診をしてあげましょう。

参考文献・研究リンク

身体症状とうつ病の関連(1999年 WHO調査)

著者:Simon GE, VonKorff M, Piccinelli M, Fullerton C, Ormel J
原題:An international study of the relation between somatic symptoms and depression 掲載誌:New England Journal of Medicine(1999年10月28日発行)341巻18号、1329–1335ページ
PubMedリンク:▶ PubMedで詳細を見る

WHOの心理的問題に関するデータを用いて14ヶ国の患者25,916名を分析した結果、プライマリ-ケアを訪れる気分の落ち込み患者の約70%は身体症状を主訴として受診しており、最も一般的な症状は痛みに関連するものであることが判明。

慢性腰痛の治療実態と課題(2009年 米国調査)

著者:Carey TS, Freburger JK, Holmes GM, 他
研究タイトル:A long way to go: practice patterns and evidence in chronic low back pain care
掲載誌:Spine(Phila Pa 1976)2009年4月1日発行、34巻7号、718–724ページ
PubMedリンク:▶ PubMedで詳細を見る

WHOの国際調査では、抑うつ状態の方の約70%が身体症状を主訴として医療機関を訪れていたことが報告されています。

慢性腰痛のための薬物処置や無意味な通院が過剰であることは、以前とあまり変わらない。
慢性腰痛の治療には「運動療法」や「うつ治療」が必要であるが、現在の慢性腰痛に対する治療処置パターンは、従来通りの薬物療法と医療機関の過剰利用であることが調査で判明

慢性筋骨格系疼痛と抑うつ・不安障害の関連(2008年 米国調査)

著者:Bair MJ, Wu J, Damush TM, 他
研究タイトル:Association of depression and anxiety alone and in combination with chronic musculoskeletal pain in primary care patients
掲載誌:Psychosomatic Medicine(2008年10月発行)70巻8号、890–897ページ
PubMedリンク:▶ PubMedで詳細を見る

この研究では、慢性筋骨格系疼痛に抑うつや不安障害が併存する患者は、疼痛の重症度が高くなる傾向があることが示されています。疼痛だけに焦点を当てた治療では、誤診や過少治療につながる可能性があると指摘されています。

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