私、カイロプラクティックの臨床で筋操作をたっぷり行うタイプのカイロプラクターです。尚且つ認知行動療法、マイオセラピー®も提供している立場から言えば、筋膜はおおいに腰痛に関わっていると思います。
ただし生物心理社会要因のなかの生物要因の主たる原因であります。心理要因、社会要因は別のページで解説しています。
このページではカイロプラクティックの一臨床家としての経験から筋膜がどのように腰痛に関わっているか、言えることを書いていきます。
筋膜なんだけど定量化するのが困難
腰痛の原因が筋膜だ、経絡で治療しているは筋膜だ、筋膜をリリースすれば楽になる、などなど、筋膜が腰痛の原因ということが近年よく言われていいます。
このブログや「そのまんまサンシャイン」のホームページでは今確実に言えるエビデンスしか載せていないので筋膜と腰痛の関連の質の高いエビデンスはありません。
だからといって私個人がどれくらい筋膜が原因だと考えているかは別の話で、私個人はかなりの比重を筋膜が占めていると考えている臨床家の一人です。
腰痛業界、世界のトップ、菊池臣一先生のお話し


2018年末に幸運にも故・菊池臣一教授のお話しを拝聴することができました。腰痛に関して世界のトップを走ってきた先生です。メディアでもご覧になったかたも多いと思います。
その講演会で、聴衆のお一方であった鍼灸師の先生から「筋膜が腰痛の原因ではないか?」との質問に菊池先生は「これから間違いなく筋膜は来るでしょう、ただ現段階ではどれくらいの硬さの筋を筋硬結と定義するのかができない。それは年齢によっても変えていかなくてはいけないかもしれない。だからまず筋硬結の定義づけをする必要がある」とご回答されていました。
医学的に定義するのは時間が必要
そのお話を聞いて「医学的に定義するのは本当に困難なのだなあ」と心服しました。
そうですね、われわれ臨床家は単純に触って経験上硬いとか、柔らかいを判断します。
これを数値化したり、性差、年齢などを考慮して定義するのは骨の折れる作業です。もしかしたらAIの発達で、そのようなことも正確に判断できる時代が来るのかもしれませんね。
手の感触を信じている施術家は、そもそも患者さんに機械を使って、この筋肉の硬さを計りますっていうのも違和感があるとおもいます。筋硬度計を購入しようか考えていますが、未だ購入していません。
これを数値化したり、性差、年齢などを考慮して定義するのは骨の折れる作業です。 言い切るには証拠が必要なわけで、これからその定義づけがされていくということです。
ですから現段階で「心理的要因」で腰痛になることが明らかだと言って、心理的要因に拘りすぎるのはあまり良くないのではないか思いますが、関わっている事は間違いありません。
Fascia (ファシア)という概念
日々臨床をしていますと多くの場合筋肉、筋膜が張っています。これもイメージ化すると解かりやすいのですが、筋膜というとサランラップの膜のように表面にスラーっと張っている膜というイメージを持ちやすいのですが、実際はタンパク質がメッシュ状にあるというイメージの方が近いようです。
私は臨床家で解剖学者ではないので、どこかで読んだ話を繋げてお伝えしているのですが、筋膜は実際にはファシアというタンパク質構造そのものを言います。
下のオレンジを見て頂くとイメージしやすいのですが、果肉を包んでいる白い部分がファシアです。オレンジの皮の真下にある分厚いのもファシアですが、果肉を隔てている部分もファシア、果肉を包んでいる薄い皮もファシアです。


2026年にもなるとNHKもファシアという言葉を使い始めましたが、番組の内容は真新しいものではありませんでした。ファシアを筋肉という言葉に置き換えても成立する内容です。
さて、オレンジの構造の話にもどりますが、これらすべてがいわゆる筋筋膜で、言ってみれば人体構造すべてがファシア(筋膜)とも言えます。
厄介なのがこのメッシュ構造のどこが硬くなっても痛みやコリ感が出るということです。
腰痛への研究で仙腸関節や椎間関節症候群というのは曖昧な根拠しかなくて関節由来の腰痛が否定されていますが、関節を包んでいる膜や周囲にある筋肉、靭帯も結局ファシアなんですね。その部分が痛みをだしている可能性は充分にあります。
そうすると椎間関節や仙腸関節をアジャストメントすることで筋膜が引き延ばされてリリースされるということも当然あり得るわけです。
■椎間関節症候群への注射療法に関する論文を厳密に分析した結果、椎間関節内へのプラシーボ(生理食塩水)注射は、ステロイド剤や局所麻酔剤と同等の改善効果があることから、椎間関節症候群という病名自体が神話の可能性がある。AHCPRの『成人の急性腰痛診療ガイドライン』では根拠のない診断名として、線維輪断裂・成人の腰椎分離症・筋筋膜炎・線維筋痛症・椎間板症候群・挫傷・脊椎分離症・腰部椎間板症・椎間関節症候群・変性関節症・捻挫・変形性脊椎症・椎間板障害/裂傷・脱臼・亜脱臼(サブラクセーション)の15を挙げています。


生理的食塩水で興味深いのは、その後筋膜への生理的食塩水の注入が流行るようになり、それで一時的に痛みが無くなることがわかってきました。NHKの腰痛関連番組でも取り上げられて、一世風靡をしました。
ですから、椎間関節内が炎症しているのではなく、ファシアの粘性が高まってしまっている可能性が考えられます。この場合は関節漿液になります。(ファシアの理解範疇は広く、血液やリンパ液を含めるのかまで議論されています。)
筋膜(ファシア)をどう柔らかくするか
腰痛の原因の多くは筋膜だとしてもタンパク質構造ですから、年月をかけてかたくなっているファシアは簡単にはリリースませんし、2026年時点での最新の研究でも、施術で柔らかくならないことを前提に最善を尽くすように勧められています。
イメージ的には硬くなった筋膜(線維化した筋膜)を柔らかくするのではなく、周辺の筋膜との癒着を剥がし、筋膜同士の擦れをスムースにしていくのが正しい理解となります。
腰痛で考えた場合、筋膜の硬化に加え心理的な要因や、社会的な要因、脳の状態が絡んでくるわけですから管理に手間がかかるのが分ると思います。
浅筋膜だけでも柔らかくする
ですから市販のストレッチポールなどで表面の筋膜(オレンジの皮の下の部分)、浅筋膜の癒着を剥がしても症状がのこってしまうのは深いところの筋膜を剥がすのが困難であることが理解してもらえると思います。
しかし痛みの感覚器が最も多いのが浅筋膜とも言われておりますので、浅筋膜を入念にケアするのはとても重要です。
針治療を超音波撮影で剥がしている模様を動画で見ることもできますが、あれくらいで痛みがどれくらい取れるかは、冒頭申しました通り科学的には確かなことは言えない、ということです。
ですから筋膜がエビデンスとして腰痛の原因だと言い切れるようになるには、まだまだ時間が必要なようですが、おそかれ早かれその日はやってくるだろうと思います。
おまけ:マイオバイブ駆使する
「そのまんまサンシャイン」ではマイオバイブという特殊な振動器具を使用してファシアを極力リリースしていきます。これもエビデンスがある訳ではないのですが、臨床上かなりの効果を期待して頂いても構いません。


マイオバイブは筋肉が弛緩しやすい低周波の振動を筋肉に当てていきます。表層の筋肉が緩むのでより深い部分のファシアを刺激してリリース(遊びを作る)ことが出来ます。
針治療ほど深い部分を押すことはできませんが、より広い部分を持続的に刺激することができます。慢性腰痛などにお悩みの方はお近くの施設を検索してみてください。おススメですよ。
カイロプラクティックの立場で言えること
ちなみにカイロプラクターは椎間関節症候群 という おおざっぱなカテゴリーで椎間関節異常を考えます。関節機能を改善させることで症状の改善を試みるのですが、ここの関節に動きがでくれば劇的に症状が改善するケースも珍しくはありません。
おそらく関節を構成する靭帯や深層筋の(ファシア)筋膜などの結合組織が痛み直接を出していると私は考えています。近年のドイツでの研究で明らかにされていることです。
筋膜が骨や関節包に連結して、タンパク質の構造体として膜組織が体中に張り巡らされています。関節も筋肉も互いに影響しあうので、いわゆる筋膜はどこにでも存在するという意味では、腰痛の原因は筋膜だともいえます。
そして筋膜組織がどうなっていようと、忘れてならないのはその腰痛は社会的、心理的状況、精神状態が少なからず関与しています。その度合いが大きければ慢性化の要因にもなっています。
最近来られている患者さんで、慢性腰痛の回復がいまいち芳しくない方がいて、よくよくストレスについてお伺いしてみると、「実はギクシャクしていることがあって…」と打ち明ける方もおられます。
筋膜は腰痛の大きな要素であることは間違いありませんが、心理的なことや社会環境も含めて、複合的な要因をみていく必要があるケースも多いこと間違いなく言えることです。












