日本での交通事故の減少から、むち打ち患者も減少してきているものと考えられます。
それでも必要な患者さんが居ることには変わりないので、記事にします。実は私がカイロプラクティックに興味を持ったきっかけの一つに、むち打ちがあります。
20代の頃交通事故を起こし、むち打ちになったことがあります。首の痛みを中心にさまざまな症状へ発展しうる様態です。
早期に少しでも改善できるように、分かることをカイロプラクターとして書いていきます。
むちうちにもアクティブ・ケア(自分で動かす)が有効
本当にキツイむち打ち症の時は、なかなか自分で動かそうなんて気になりませんが、方向性を認識しておくことも後々の手助けになるはずです。
基本は動かすこと
■急性むち打ち症患者97名を対象にしたランダム化比較試験によると、標準的治療(安静・頚椎カラー・漸進的活動再開)よりも、受傷後96時間以内(4日間)の積極的治療(緩やかな自動回旋運動を1時間おきに最高10回繰り返す)のほうがはるかに治療成績は良かった。
6ヵ月後の時点で比較すると積極的治療群の90%は『ほとんど痛みがない』か『軽い痛みしか残っていない』でした。
一方の標準的治療群では『ほとんど痛みがないか軽い痛みしか残っていない患者は47%』に過ぎませんでした。
私も事故の翌日から首が回らないようになりました。接骨院の先生が脊椎マニピュレーションをしてくれると、とても楽になるのですが、仕事で披露するととても張ってくるのを覚えています。その時もっと積極的に自分で動かしていれば、回復も早かったかもしれません。
1時間おきに「右、左」って首をゆっくり10回回すだけですからね。やらないと損ですよ。
『むち打ち関連障害の診療ガイドライン』
むち打ち症の度合いによって推奨される方法が変わってきます。先ずはどのグレードのむち打ち症なのかを見極める必要があります。
10,000件以上の研究で判った真実
ケベック特別調査委員会
カナダのケベック州もさまざまな取り組みをしていることで有名です。世界に先駆けて、むち打ちのガイドラインをだしました。
むち打ち関連障害をグレード0~4の5つに分類
- 【グレード0】頚部の症状がなく理学所見も異常なし。
- 【グレード1】 頚部痛・凝り・圧痛のみで理学所見に異常なし。
- 【グレード2】頚部の症状に加えて筋骨格系所見(可動域制限・圧痛点など)あり。
- 【グレード3】頚部の症状に加えて神経学的所見(深部腱反射の低下や消失・筋力低下・知覚障害など)あり。
- 【グレード4】頚部の 症状に加えて骨折か脱臼あり。
私はグレード2のむち打ちでした。可動制限はかなりありましたので、それなりにキツかったです。これ以上のグレードになると慎重にケアをしていく必要がると思います。グレード4は外科的処置が必要なケースもあるでしょう。
ムチ打ちへの各種療法
【マニピュレーション】(背骨の矯正)
はやめに施術を受けよう
Spitzer WO, Skovron ML, Salmi LR, Cassidy JD, Duranceau J, Suissa S, Zeiss E. Scientific monograph of the Quebec Task Force on Whiplash-Associated Disorders: redefining “whiplash” and its management. Spine (Phila Pa 1976). 1995 Apr 15;20(8 Suppl):1S-73S. Erratum in: Spine 1995 Nov 1;20(21):2372. PMID: 7604354.
長期間にわたる治療は正当化されないが、短期間ならむち打ち症の治療に脊椎マニピュレーションを用いることができる。ただしこのテクニックを行なうのは有資格者に制限すべきである。
私が受けていた療法で、いま提供している療法でもあります。確実に効果がある療法です。私は特に1か月目に週に2.3回のマニピュレーションを受けていました。仕事が忙しくて、3か月くらいでフェードアウトをしていきました。
【外科手術】
グレード1と2に外科手術の適応はない。外科手術は一部のグレード3、すなわち保存療法に反応しない持続的な腕の痛みか、急速に進行する神経麻痺があるWAD(むち打ち関連障害)患者に限定されるべきである。
そのまんま伊藤一般的にはグレード2くらいのむち打ち症が多いのではないでしょうか?
【お薬】
グレード1と2のWAD(むち打ち関連障害)患者に麻薬系鎮痛剤を処方すべきではないが、激しい痛みのある急性期のグレード3患者に限れば一時的に処方することができる。
急性期のむち打ち症患者に筋弛緩剤を処方してはならない。
どのグレードであってもWAD患者に向精神薬は勧められないが、急性期(3ヶ月以内)の不眠や緊張状態に対する補助手段として処方してもよい。慢性(3ヶ月以上)のむち打ち関連障害患者には抗不安剤と抗うつ剤を処方することができる。
Spitzer WO, Skovron ML, Salmi LR, Cassidy JD, Duranceau J, Suissa S, Zeiss E. Scientific monograph of the Quebec Task Force on Whiplash-Associated Disorders: redefining “whiplash” and its management. Spine (Phila Pa 1976). 1995 Apr 15;20(8 Suppl):1S-73S. Erratum in: Spine 1995 Nov 1;20(21):2372. PMID: 7604354.
抗不安薬や抗うつ薬はここでは推奨されていますが、依存症になりやすいので長期の服用はお勧めしません。短期間で痛みを軽減して、前向きになっていけるように、心理療法もふくめて検討すると良いでしょう。
【モビリゼーション】
モビリゼーションは関節をゆっくり動かす施術です。自分で「右左」と首を動かしていいですが、張りが強いときは、人に動かしてもらいたいものです。理学療法士の先生が日々行っている施術になります。勿論カイロプラクティックケアの中でも用いられます。
限られたエビデンスからモビリゼーション(瞬間的に外力を加えることなく可動制限がある関節の可動域を無理なく徐々に広げて行く他動的ストレッチ)はむち打ち関連障害の治療として用いることができる
Spitzer WO, Skovron ML, Salmi LR, Cassidy JD, Duranceau J, Suissa S, Zeiss E. Scientific monograph of the Quebec Task Force on Whiplash-Associated Disorders: redefining “whiplash” and its management. Spine (Phila Pa 1976). 1995 Apr 15;20(8 Suppl):1S-73S. Erratum in: Spine 1995 Nov 1;20(21):2372. PMID: 7604354.
事故の物理的な衝撃、仕事への影響などの社会的なストレスも多いです。仰向けになって先生に動かしてもらうことで、気持ちも楽になりますし可動域も広がります。
マニピュレーションがキツイとき、マニピュレーションが怖い方、むち打ち初期の頃には特におすすめします。
グ日常生活の維持
重症でなければ、日常生活に早く戻ることが重要です。もちろん日常生活で首は痛みますが、恐れずに無理のない範囲で動かしていくことが重要です。
積極治療に効果なしの研究も
英国の12の病院で、急性の頸椎捻挫症(むち打ち症)患者3851人を対象に、積極的管理と理学療法の効果を無作為化試験で検討。
通常診療と積極的管理の比較では、頸部機能障害指数(NDI)による差はなかった。対象者中599人による比較では、理学療法の治療パッケージは、理学療法的助言1回に比べ4カ月目にわずかな効果が見られた。
(The Lancet, Early Online Publication, 18 December 2012)
腰痛と同じで、日にち薬が一番大切なのかもしれません。ただ白衣を着た方に診てもらう、ケアしてもらうということが大切だともいえます。
ケアプラクティショナーと会話をすることで、短時間でも今おかれているご自身の状態を客観視できるようになります。
心理社会的要因も大きく関与
損害保険請求はしない方が良い??
自動車事故が起きてから出てきた疾患といわれています。自動車産業と共に発展してきた産業が「保険産業」。不思議ですが、事故後の保険診療適応で「むちうち」という損害保険適応が無い国では「むちうち症」が存在しないそうです 。事故保険の発達とともに、「むちうち症」患者も増えている背景があるようです。
むちうちの保険請求ができない北欧の国での研究ですが、症状の出やすそうな事故を想定した人為的な自動車衝突事故実験でも「むちうち患者は現れない」という研究結果もあるようです。
お金が絡むと複雑化する
不法行為等過失責任保険制度を実施中の6ヶ月間、無過失損害賠償制度に変更後の6ヶ月間、さらに次の6ヶ月間の保険請求終了日を比較。
【結果】痛みや苦悩に対する補償がなくなると、むち打ち症の発症率が低下し予後も改善される
(N Engl J Med. 2000 Apr 20)
小学生の時にお腹が痛いと『保健室で休める』と知ると、お腹が痛くなってくるのに似ているのかもしれません。これらのことは、とてもセンシティブな話題なので、簡単には言えないですが、人間社会の複雑さを表す事象の一つと言えます。
保険業界からも賠償の変更が考えられる
David Cassidy博士らによる保険給付金を受け取らない方がむち打ち症患者の予後は良好だという報告は、政策立案者に対して従来の生物学的なむち打ち症の定義に疑問を投げかけ、症状を長引かせないような損害賠償制度を推し進めるだろう
(N Engl J Med. 2000 Apr 20)
長期的な患者の健康面からみると自費診療になりますがカイロプラクティックを選択されることをおススメします。その理由として「ニュージーランド事故補償公団」の疫学調査から、事故保険の使用経験があると他の症状も含め、慢性痛化する可能性が高くなることがわかっているからです。
保険が絡むと、むちうち症状の改善率も低下しますし、その後の生活にも影響するようです。例えば数十年後に腰痛になったとしても事故保険の使用経験がある人の方が慢性化してしまう可能性が高いことが解っています。
人間は社会的な生き物とよく言われますよね。さまざまなことが社会的なことと関わっていることが最近解ってきました。痛みに関しても同様です。現代社会では資本を背景とした消費という行為で基本的には社会が回っている要素が多いです。むち打ち症についても資本が介入してくると状況が変わってくることをご理解いただけますと幸いです。
日本人への研究でも、長期化するむち打ちケアに心理的要因がかかわっていることが分かっています。
もし自分もむち打ちになって、相手の自動車保険でお金が貰える状況なら、症状を訴えて通院費等を「貰わないと損」と考えますもの。
人間は極めて、複雑な生き物ですね。









