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伊藤孝英
カイロプラクティックそのまんまサンシャイン院長
RMIT大学(ロイヤルメルボルン工科大学)日本校卒業。B.C.Sc(カイロプラクティック学士), B.App.Sc.(応用理学士)。従来の筋骨格系障害としての腰背部痛という観点から、生物社会心理的要因としての腰背部痛へとシフトチェンジしてマルチモデルで腰痛ケアをしています。鬱・不安などの気分障害で過度な薬物療法に疑問をお持ちの方もお気軽にお問い合わせください。
そのまんまサンシャイン公式ホームページ
筋骨格系の症状はもとより代替医療のセカンドオピニオンもお気軽に聞きにきてください。https://chirosonomanma.com

    脊柱管狭窄症の手術を考えよう

    痛んだ背骨のイメージ
    狭窄症の手術と保存療法の比較 イメージ

    脊柱管狭窄症は年齢を重ねると好発する、よくみられる状態です。

    みなさまの中には手術をするか判断するための基準が知りたい方もいらっしゃると思います。

    先ず、狭窄症が一番よくみられる年齢は60歳台または70歳台です。
    患者はしばしば、立ったり歩いたりすると悪化する足の痛み、けいれん、脱力感を持っています。

    ※この時期は2026年に加筆修正しています。10年前のデータと変化してきているものもあるので、整理しつつ、カイロプラクティックの仕事で得た経験を踏まえて解説していきます。

    目次

    脊柱管狭窄症の手術は必要か?考える情報

    まず1990年~2000年頃までのデータです。この頃ですと医療機関で手術を勧められている方も多いようです。

    ネット情報を探せるのは若い世代です。手術の種類によっては、無益な可能性が高いので、親戚家族に情報弱者の方があれば、セカンドオピニオンとして情報提供してあげると良いでしょう。

    椎弓切除術(ついきゅうせつじょじゅつ)は長期スパンで得策でない

    2026年にもなると選択は無いと思いますが、椎弓切除術という方法があります。この方法は特におススメできません。もしお医者様に何らかの理由でこの方法を勧められるようでしたら、改めて考える材料にしてみましょう。

    1991年の研究

    脊柱管狭窄症と診断された腰下肢痛患者88名を対象に減圧椎弓切除術の成績を6年間追跡した結果、1年後の改善率は89%だったが、6年後には57%に低下し17%は再手術を受けていたことから、これまで報告されていた成績より期待できない。

    (1991 Jul.Katz JN, Lipson SJ, Larson MG et al)

    2020年代になりますと、減圧術という方法がメインのようです。そちらはリスクは少ないです。

    カイロプラクターとしては保存療法をお勧めしますが、絶対的な効果が認められるわけではありません。

    施術と運動療法を続けて、地道に歩ける距離を増やすような地味な回復になることが多いです。

    椎弓切除手術を受けた場合の予後(10年後)

    1996年の研究

    腰部脊柱管狭窄症による椎弓切除術を受けた患者88名を約10年間追跡調査

    結果、75%が手術の結果に満足していたものの、23%が再手術を受け、33%が重度の腰痛を訴え、53%が2ブロック程度の距離も歩けないことが判明。

    Katz JN, Lipson SJ, Chang LC, Levine SA, Fossel AH, Liang MH. Seven- to 10-year outcome of decompressive surgery for degenerative lumbar spinal stenosis. Spine (Phila Pa 1976). 1996 Jan 1;21(1):92-8. doi: 10.1097/00007632-199601010-00022. PMID: 9122770.

    1991年と20年前の研究で、なおかつ椎弓切除術という背骨を切り取る手術なので、ちょっと古いやり方です。最近だと小さな穴をあけてドリルで穴を開ける手術なので手術成績も変わってきていると思います。

    脊柱管狭窄症の自然経過は比較的良好で、馬尾症候群の疑いがなければ手術を遅らせても問題ないことが明らかになっています。手術を決断する際、必ずしも全例が完治するわけではないことを知っておくべきです。

    脊椎の手術をされた後の傷跡は、かなり痛みを発しやすいという印象です。マイオセラピー®で施術をするとカチコチに固まっています。

    ‎2010年頃迄、充分な根拠のないまま手術件数はうなぎ昇り

    1996年研究、脊柱管狭窄症への手術の根拠は少ない

    65歳以上の脊柱管狭窄症による手術件数は1979年~1992年にかけて8倍に増加しており、地域によって5倍の差が生じている。

    手術成績に関する十分な情報がないまま、生死にかかわる治療を選択せざるを得ない状況は好ましくない。

    Ciol MA, Deyo RA, Howell E, Kreif S. An assessment of surgery for spinal stenosis: time trends, geographic variations, complications, and reoperations. J Am Geriatr Soc. 1996 Mar;44(3):285-90. doi: 10.1111/j.1532-5415.1996.tb00915.x. PMID: 8600197.

    手術の種類にもよりますが、そこそこのリスクがあります。

    エビデンスレベル
    上へいくほど質の高い研究

    2000年頃まで脊柱管狭窄症への手術の有効性は証明できていなかった

    脊柱管狭窄症への減圧椎弓切除術に関する論文74件を厳密に検討した結果、優または良と評価できたのは平均64%だったが、論文によっては26%~100%もの開きがあり、研究デザインにも不備が多いためその有効性は証明できない

    結果を予測する患者の特徴はほとんど見つかりませんでした。

    Turner JA, Ersek M, Herron L, Deyo R. Surgery for lumbar spinal stenosis. Attempted meta-analysis of the literature. Spine (Phila Pa 1976). 1992 Jan;17(1):1-8. doi: 10.1097/00007632-199201000-00001. PMID: 1531550.

    手術をしてもしばらくすると、まだ痛みが気になったり、あまり改善しなかったという方が居ることは、2000年頃までに証明されています。

    その後の研究では何が判ってきたのでしょうか?

    2018年の減圧術+固定術研究

    変性腰椎狭窄症に対する固定術の有無:メタアナリシスおよび系統的レビュー

    変性腰椎管狭窄症(DLSS)は高齢者の慢性腰痛の主な原因です。保存的治療に抵抗性がある場合、症状のある患者は一般的に手術を受けます。しかし、融合術が比較的優れた外科的選択肢かどうかは依然として不明なた体系的レビューを行った。

    減圧単独と脊椎固定術の有効性を変性腰椎菅狭窄症治療を比較した初めてのものです。

    結果は、減圧術に追加の固定手術が変性腰椎菅狭窄症患者に、より良い結果をもたらす可能性は低いです。リスクやコストが増加する可能性があることを示しています。手術手技に関するさらなる証拠を提供するためには、高品質で均質な研究が必要。

    Shen J, Xu S, Xu S, Ye S, Hao J. Fusion or Not for Degenerative Lumbar Spinal Stenosis: A Meta-Analysis and Systematic Review. Pain Physician. 2018 Jan;21(1):1-8. PMID: 29357326.

    長い目で見ると、固定する手術はそれほど有益ではないようです。

    脊柱管狭窄症はよく病態を表すことばで、文字通り脊柱管が狭くなっているという状態を表す言葉ではないと言われます。

    大掛かりな手術が良くないことは間違いなさそう

    背中を開いて、この背骨をドリルで削って縫い合わせるわけですから身体に良いわけありません。

    インストゥルメンテーション手術(金属のネジとプレートを使用)によって固定力を向上させても、それが臨床転帰(治療成績)の改善に繋がらないことを明らかにしました。

    これは国際腰椎学会でボルボ賞を受賞した研究です。

    脊柱管狭窄を伴う変性辷り症患者76名を対象に

    器具固定群
    骨移植固定群の術後成績

    を2年間追跡したRCT(比較研究)によると、器具固定によって骨癒合率の向上は認められるものの、それが必ずしも臨床症状の改善に結びつかないことが判明

    (1997 Dec,Fischgrund JS, Mackay M et al)

    脊柱管狭窄症の診断が出ていて手術を勧められている場合は、いろいろと考えて手術を選択する必要があります。エビデンスが示すものは必ずしも賢い選択ではないということです。

    脊柱管狭窄症で下肢症状がある場合

    エビデンス医療と言われますが、研究には莫大な資金が必要です。この資金がどこから出ているかで結果の見せ方が変わってくるのも事実。

    システマティックレビューを2つ

    先ずはヘルニアの手術関連会社からの資金提供がある論文から。

    腰部脊柱管狭窄症の管理
    腰部脊柱管狭窄症は、腰痛の有無にかかわらず、臀部または下肢の痛みの臨床症候群です。

    これは腰椎の神経と血管スペースの減少に関連しています。立ったり、歩いたり、腰を伸ばしたりすることで悪化し、前屈、座り、または横臥によって緩和されることがよくあります。

    腰部脊柱管狭窄症の臨床ケアと研究は、状態の不均一性、診断と研究への包含のための標準的な基準の欠如、および完全に症状がないが画像検査で狭窄箇所がある高齢者がかなりの率いることで複雑になっている。

    手術以外の管理オプションには、薬物、理学療法、脊椎注射、ライフスタイルの変更、および学際的なリハビリテーションが含まれます。

    しかし保守的な管理を検討した高品質のランダム化試験はほとんどありません。系統的レビューは、特定の種類の非外科的治療を推奨するには証拠が不十分であると結論。

    非手術療法で改善しない患者を治療するために、いくつかの異なる外科的処置が使用されます。

    急速な悪化はまれで、症状はしばしば衰弱するか徐々に改善することを考えると、手術はほとんど常に選択的であり、侵襲性の低い介入の試行にもかかわらず厄介な症状が続く場合にのみ考慮されます。

    脚の痛みと障害は、非手術的治療よりも手術の方が成績が良いようです。
    利益相反:この論文はNIAMS(P60-AR048094およびP60-AR062799)によって資金提供されている。

    Ciol MA, Deyo RA, Howell E, Kreif S. An assessment of surgery for spinal stenosis: time trends, geographic variations, complications, and reoperations. J Am Geriatr Soc. 1996 Mar;44(3):285-90. doi: 10.1111/j.1532-5415.1996.tb00915.x. PMID: 8600197.
    女性ドクター

    この2016年のレビューでは過去の手術成績に関するデータが乏しいことから、手術以外が基本推奨されていたが、非手術による脊柱管狭窄症管理のデータも充分ではないから、良くならない時のみ、手術を検討しましょうということです。
    あたり前かもしれませんが、大事なことです。
    ただしヘルニア手術に関する会社から資金提供されていることも注意。

    つぎに利益相反の無い論文です。同じ年に出されています。

    腰部脊柱管狭窄症は、加齢に伴う脊椎の変性に関連する衰弱状態である。研究目的は、幾つかある非外科的介入とさまざまな種類の手術の有効性を比較して評価すること。

    評価する事は、生活の質、生活の障害、機能、および痛みです。また合併症率と副作用を考慮し、短期、中期、および長期の結果 (6 か月、6 か月~ 2 年、5 年、5年以上) で計時的に各段階で評価。

    オスウェストリー障害指数(疼痛関連障害)を用いて、

    固定を伴うまたは伴わない直接減圧術と多剤併用非手術的ケア
    を比較した2件の試験で実施されたメタアナリシスからの低質エビデンスでは

    6ヵ月時点と1年時点では減圧術と多剤併用非手術ケアは有意差なし。24ヵ月では、有意差は減圧術に有利であった(平均差 -4.43、95%CI -7.91~-0.96).

    1件の小規模研究からの低質エビデンスでは

    3ヵ月(リスク比(RR)1.38、95%CI 0.22~8.59)
    4年(RR 7.50、95%CI 1.00~56.48)
    10年(RR 4.09、95%CI 0.95~17.58)

    において減圧と通常の保存療法(ブレースおよび運動)の間に痛みの転帰における差がないことが明らかになった。

    1件の小規模研究からの低質エビデンスは

    低侵襲性軽度減圧術を受けた患者
    硬膜外ステロイド注射を受けた患者

    の6週間後のオスウェストリーの障害指数に差がないことを示唆した(MD 5.70、95%CI 0.57~10.83;参加者38人)。

    Zurich Claudication Questionnaire(ZCQ)=間欠性跛行=かたいで歩く指標、の結果は6週間時点で硬膜外注射の方が良好(MD -0.60、95% CI -0.92~0.28 )

    視覚的アナログスケール(VAS)の改善は軽度減圧術群の方が良好だった(MD 2.40、95% CI 1.92~2.88 )。

    191人の参加者を含む1件の研究から得られた低質エビデンスは

    症状の重症度と身体機能に関して、6週間、6ヵ月、1年の時点で棘突起間スペーサーと通常の保存療法の間で有利であった。

    残りの研究はすべて、手術と保存療法の副作用に伴う合併症を報告している。

    2つの研究では、手術群に大きな合併症はなく、他の研究では、棘突起骨折、冠動脈虚血、呼吸困難、血腫、脳卒中、再手術のリスク、肺水腫による死亡など、参加者の10%と24%に合併症を報告。

    【結論】我々は腰部脊柱管狭窄症に対して手術療法と保存療法のどちらが優れているか結論づける自信はほとんどなく、臨床の指針となるような新たな推奨は示せない。

    ただし、副作用の発生率は手術例で10%~24%であり、保存的治療では副作用は報告されていないことに留意する必要がある。また、手術と非手術療法の比較では、明確な利点は認められませんでした。

    これらの知見は、特に保存的治療法では副作用が報告されていないことを考えると、臨床医が患者に可能性のある治療法について情報を提供する際に非常に慎重になるべきことを示唆している。腰部脊柱管狭窄症の患者に対して、手術と保存療法を比較するための質の高い研究が必要である。

    Zaina F, Tomkins-Lane C, Carragee E, Negrini S. Surgical versus non-surgical treatment for lumbar spinal stenosis. Cochrane Database Syst Rev. 2016 Jan 29;2016(1):CD010264. doi: 10.1002/14651858.CD010264.pub2. PMID: 26824399; PMCID: PMC6669253.
    女性ドクター

    この論文は利益相反がないせいか、同じ時期に出されたものでも臨床医は情報提供に慎重になるべきだと言っています。痛みや障害の減り方は期間、方法によってさまざまである事に留意してください。

    2017年のレビューでは

    先述の椎弓切除術とX-stopという椎弓を固定して、背骨のあなを広げっぱなしにする器具固定と、非手術群の差をレポート。

    腰部脊柱管狭窄症に対する手術と保存的治療の有効性:システムレビューとランダム化比較試験のメタアナリシス

    腰部脊柱管狭窄症は機能と生活の質に影響を与える一般的な変性疾患で、手術と保存的治療の両方で治療できます。この研究は手術と保存的治療の有効性を比較。

    9件のRCT(14件の記事)と1658人の患者が含まれ、そのうち3件は質の高い研究。

    ①治療後最初の6か月では、2つの治療グループ間でODIスコアに有意差はない※ODIは日常生活活動(ADL)の障害の程度を把握するための評価
    ②手術グループは1年と2年で有意に高いODIスコア(重傷度が増すほどODIスコア(%)は高くなるので手術群のほうが障害が大きい)
    ③2つの研究では、3か月、6か月、12か月、24か月の時点で身体機能は椎弓切除術と保存療法の間に有意差はない
    ④2つの研究では患者が6時に移植されたX-STOPに満足していると報告
    ⑤数週間、6か月、1年。手術群と非手術群の間で、手術中または72時間以内の有害事象の統計的差異はない
    ⑥サブグループ分析では、椎弓切除術と保存的治療、X-STOPと保存的治療の間に期間の初期段階で安全性の違いはないがフォローアップ期間中、手術群は非手術群よりも合併症の発生率が高い

    手術群は、治療後の最初の6か月で保存群と比較して有意差はなかったものの、1年後のより良い状況と2年間ではより高い合併症率を示しました。

    しかし、腰部脊柱管狭窄症患者に決定的な方法がしっかりと推奨されるという証拠はありませんでした。高品質で信頼できる結果を達成するには、さらなる研究が必要

    Ma XL, Zhao XW, Ma JX, Li F, Wang Y, Lu B. Effectiveness of surgery versus conservative treatment for lumbar spinal stenosis: A system review and meta-analysis of randomized controlled trials. Int J Surg. 2017 Aug;44:329-338. doi: 10.1016/j.ijsu.2017.07.032. Epub 2017 Jul 10. PMID: 28705591.

    2年の追跡なので、先述の論文に比べると追跡期間が短いです。これが6年後10年後になると、悪化する可能性は充分にあります、なぜならページ上の論文でも1年後の改善率は89%と良好だったから。

    あとX-stopなるものも器具固定の登録商標で、いくつか違う製品があるみたいです。
    この研究は利益相反はありません

    逆に言えば、保存療法で確実に回復するという根拠もないのが狭窄症の症状です。

    CORR®におけるコクラン:腰椎狭窄症の外科的治療と非外科的治療の比較

    このシステマティックレビューおよびメタアナリシスでは、手術と非手術治療の間に明確な利益は認められませんでした。

    治療後の分析では手術の早期効果が4年以内にあることが示されましたが、主要なアウトカムのいずれにおいても6年目から8年目には手術の有意な治療効果は認められませんでした。

    対照的に、観察コホートは8年までのすべてのアウトカムで手術の安定的な優位性を示しました。これは両グループ間の基準値差が大きいためと考えられます(手術に至るケースはかなり重症だから)。

    治療後の試験では、長期結果が基準値差によって混同されにくいため、手術の利点は時間とともに減少する可能性が示唆されています。

    このコクランレビューには限界がありますが、その分析は腰部脊柱管狭窄症の外科的治療の長期的有効性に疑問を投げかけています

    臨床医は、特に非手術治療で副作用が報告されていないことを踏まえ、腰部脊柱管狭窄症患者に手術の潜在的な制限について慎重に伝える必要があります。

    CORR®におけるコクラン:腰椎狭窄症(PMC)に対する外科的治療と非外科的治療

    まとめ

    見てきたように各年代に推奨される手術方法へいろいろと変化していきていますが、全ての年代においての質の高い研究で共通して言えるのは

    • 手術が絶対的に有益ではない
    • 長期的には保存療法と差は無い
    • 手術は合併症、副作用が保存療法よりも高い
    • 保存療法も絶対ではないが副作用はない

    ということです。ただ短期間でみると手術にもメリットがありますので、このことを考慮して手術を検討されると良いのではないかと思います。

    一番重要なことが、ここに述べてあることが手術を勧める医療提供者から説明があるかという事だと思います。

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