カイロプラクティックを生業にして、こういうタイトルの記事を書くと「とんでも系」扱いされると思いますが、このような統計があるというお話です。
緊急性のない状況で、なんだか府に落ちない感覚があるヘルニア患者さんの、こころの安心に少しでもなれば良いです。
先ず確認しておく必要があることは、ヘルニアの定義はMRIを撮影し椎間板(Disk)が突出(Herniation)している状態を表す言葉(痛みを表す言葉ではない)です。
椎間板ヘルニアの診断を受けてこのタイトルは最初意味が判らないと思います。書き間違いでもありません。もう一度いいます。
「ヘルニアがあった方が腰痛は少ない」です。じっくりエビデンスを見ていきましょう。
椎間板ヘルニアがあると腰痛は少ない

2017年現在、痺れがある時に「椎間板ヘルニアという考え方をしない」が世界的なコンセンサスです。
いま足に症状がある時は「神経根症状」といいます。この状態は発症してから4週間以内は専門医に紹介する必要がない(MRIは不要)で経過は良好なことが多い。心配ないのです。
6週間以内に50%の患者が回復するグリーンライト(自己限定性疾患)です。緑色は万国共通のゴーサインですから画像検査は必要ありません。もし画像診断するなら1カ月以降です。
「椎間板ヘルニア」に必要な情報
とても大切な情報なので、いろいろ綴っていきます。
エビデンスレベルの高いものばかりですから、ひとつひとつ確認してください。
1990年3月の医学論文
だれでも椎間板ヘルニア、椎間板の膨らみがある。ヘルニアがあって普通20~80歳までの腰痛未経験者67名を対象にMRIで腰部椎間板を分析した。【結果】21~36%に椎間板ヘルニアが、50~79%に椎間板膨隆が、34~93%に椎間板変性が確認されたことから、手術の選択は慎重にすべきと結論。ヘルニアは老化現象の一つで誰にでも起こります。
ドクターいいですか、ヘルニアというのは冒頭に書いたように飛び出ている状態を表すことばです。この研究のように腰痛の無い人にも多くの割合で、椎間板が飛び出ている状態が撮影されます。
カイロプラクティックを利用になる方でも「ヘルニア持ちで」という表現をする方が後を絶ちません。
これは日本の医療制度の問題なので、お医者さまは悪くないのですが、枠組みが変わっていませんので、2026年でも同じ状況が続いています。このblogでも再三指摘していますが、状況は変わっていません。
1984年発表の医学論文
21~80歳までの腰痛未経験者52名を対象にCATスキャンで腰部椎間板を分析【結果】
年齢に関わらず35.4%に何らかの異常が検出され、40歳未満の19.5%に、40歳以上の26.9%に無症候性椎間板ヘルニアを確認。
症状が無い人にもヘルニアはあるのです。バブル真っ盛りの1980年代に既に解っていたことです。一体それ以降何人の方が不必要な手術を受けてきたのでしょうか。とても大きな問題だと私は思います。
別の業界でも、変化しづらい国だとは聞いているので、20年臨床をやってきて、ここまで変化しないのは、精神的に欠陥があるのでは?と考えるように私はなっています。
椎間板ヘルニアがある人の方が腰痛が少ない!!
タイトルになっている研究です。
2002年1月の医学論文
Brinjikji W, Luetmer PH, Comstock B, et al.
健常者41名(腰痛の全くない方々)を対象に腰部椎間板を5年間にわたってMRIで追跡調査した結果、
物理的負荷(重量物の挙上や運搬・腰の回転や屈曲等)という従来の危険因子は椎間板変性とは無関係で、腰痛発症率はむしろ椎間板変性のある方が低かった。
MRIで腰痛の人に膨隆や突出が発見されるのは、しばしば偶然であることが多い
腰痛のない人の腰椎磁気共鳴画像検査 – PubMed
多くの人に椎間板ヘルニアは自然発生的にあって、腰痛になった時に撮影するとヘルニアが発見されるので因果関係は必ずしもあるわけではないということです。
たまたまこの調査で皮肉にも腰痛発症率は椎間板変性があった人の方が多かったみたいで、滑稽な内容になってしまっています。
カイロプラクティックの臨床上、この話をしても聞く耳を持つ方も、持たない方もおられます。私が個人的に言っているんじゃないんだけどね。
カイロプラクティックの面白い所は「耳が聞こえないひとが聞こえるようになった」という奇跡から始まっています。私は臨床を馬鹿正直に行ってきたことで、この奇跡の解釈を「人の話が聞けるひと」という意味でもあると広げました。
エビデンスに沿ったお話をしているだけなので、素直にお話を聞いてくれる方は、回復に向かうことが多いです。
椎間板ヘルニアは手術の対象ではない
もう20年も前のガイドラインになるんですね。今となっては。ヨーロッパで初めて出されたガイドラインです。
~2004年発表のヨーロッパの腰痛診療ガイドライン~ 手術は2年後に検討すべき手段の一つ
「痺れも含めたすべての慢性的な腰痛に対する外科的な手術は適切な保存療法を行っても2年間行って変化が無かった場合に、幾つかある方法の選択肢の一つとして行うものです」ヘルニアの手術が長期的に見て効果的という証拠はない
「しかし現時点では手術をすることが長期的にみて効果的であるという証拠はどこにも無い。どういった手術が失敗に終わったかを考慮にいれて見当する必要がある。」
「また腰痛への外科的手術の結果がどのようになるのかについては、今までより精度の高い研究をする必要がある」
(European COST for chronic non-specific low back pain2004)
ヨーロッパでは常識なのですが、未だにご存じない方が多いのが日本です。経済活動の一つになってしまった医療問題の一つです。
このような問題をクリアして新しく医療体制をつくったのがオーストラリアです。建設的な思考なので、その後経済もグンと伸びました。


手術はリハビリと同じ結果になる
「椎間板ヘルニアや椎間板変性に対する手術による治療成績は、集学的リハビリテーションと同等の結果になる」(Fairbank J et al BMJ2005)(Brox jl et al Pain2006)
基本的にはリハビリテーションをしていけば大丈夫な話です。手術後に大幅に腰痛が減ったという声も聞きますが、徐々に非手術群と差は無くなっていくという研究もあります。
期待効果、プラシーボ効果、儀式効果と呼ばれる効果だそうです。期待値が大きいので、脳内麻薬がいっぱいでるそうです。膝での研究ですが、偽手術で同等の効果があるという研究もあります。膝の変形性関節症に対する関節鏡手術の対照試験 – PubMed
双子の追跡調査で明らかになるヘルニア
冒頭のYouTube動画です。まだ若い時の自分です。もうそれだけ時間が経過しているのか。他業界でもそうだから、それでも言い続けるしかないね。
椎間板は負荷を掛けるほど強くなる組織だそうです。
重いものを持つと椎間板の高さは少し低くなるが密度が濃くなる
Videman T, Levälahti E, Battié MC. The effects of anthropometrics, lifting strength, and physical activities in disc degeneration. Spine (Phila Pa 1976). 2007 Jun 1;32(13):1406-13. doi: 10.1097/BRS.0b013e31806011fa. PMID: 17545908.
一卵生双生児を対照にした比較検査(フィンランド・600例)では、BMIが高値、引き上げ筋力が強い、作業強度が高いといった従来考えられていた椎間板損傷危険因子は、すべて椎間板変性を遅らせる。
以前は、重い荷物をもったり、こしに負担のかかる仕事をしている人がよく椎間板が潰れてしまうということが、まことしやかに言われていました。
実際には白髪になったり、皺が出来たりするのと同じで遺伝情報により椎間板が飛び出すことのようです。そして先述のように決して痛みと直結しません。
白髪が生えて痛みますか?という質問に似ています。(勿論痛い時もありますけどね)
1995年の国際腰椎学会 Volvo Award に輝いた論文
国際腰椎研究学会
男性の一卵性双生児115組を対象にMRIで椎間板変性を促進させる危険因子を調査した結果、椎間板変性は仕事やレジャーによる身体的負担、車の運転、喫煙習慣といった物理的因子より、遺伝的因子の影響を強く受けていることが判明。
まとめ
ここまで読んできた方は、ただのとんでも系ではなさそうだね、と少し考えて考えてくださるキッカケになれば嬉しいです。
この腰痛の問題は、長引くと脳が委縮するという研究もあって、人間の創造性に関わることだと私は思っています。
いま日本人は生産性が悪いと言われていますが、これだけ腰痛患者が多ければ創造的になれないですよ。
だから医療制度改革で腰痛診療にメスを入れる事が、強い日本を取り戻す入り口になると私は思います。
こんなバカバカしい話はないですよ、ほんまに。








