うつ病を長く患っていると、薬では一定以上改善しないこともあります。
また最近では鬱の背景にそこで視点を変えてさまざまなアプローチを試みてはいかがでしょうか?
鬱をいろいろな角度から考えよう
薬物療法以外の視点
うつ病を薬でなんとかしようとするのはナンセンス。お薬は一時の手助けにはなるものの、根本的には楽しい生活を掴んでいくことが根本治療だとおもいます。
そのような意味で、落ち込んでいる人が自ら何ができるか?世界ではさまざまな角度から脱鬱を図ろうとしています。
何があるのかを見ていきましょう。
青少年の鬱病へのゲーム治療
認知行動療法的手法を用いた3Dゲーム(SPARX)が、青少年のうつ病に有効であることが報告されました。
うつ症状を呈する思春期(12-19歳)の187人を対象に、対面治療に対するコンピュータ認知行動療法プログラムがニュージーランドで行われ、従来通りの対面による認知行動療法と比較。
このSPARXは対話型ファンタジーゲームで、従来の対面療法とくらべ、3ヶ月間のフォローアップでみてみると最初は対面療法におとりますが、中間点以降で従来の療法より治療成績が良い。
小児うつ病評価尺度はSPARX群で10.32低下、通常治療群(対面カウンセリング)で7.59低下した。
Merry SN, Stasiak K, Shepherd M, Frampton C, Fleming T, Lucassen MF. The effectiveness of SPARX, a computerised self help intervention for adolescents seeking help for depression: randomised controlled non-inferiority trial. BMJ. 2012 Apr 18;344:e2598. doi: 10.1136/bmj.e2598. PMID: 22517917; PMCID: PMC3330131.
ゲームの方が成績が良いとは驚きの結果。
時代の変化とともに以前では考えられないような取り組みが行われてきています。なおこのSPARXは購入できます。英語版ですが非常に優しい英語ですし、英語の勉強にもなるのでは? 一度試してみるのも良いでしょう。
珈琲を飲む女性は鬱になりにくい
ハーバード・メディカル・スクール・チームは1996年から2006年まで10年の間の追跡調査を行い女性の健康を調査。
彼女らのコーヒー摂取の記録をアンケートにより行いました。
それによると50,000人以上の米国の女性看護婦の研究から、1日2杯以上の珈琲が『鬱』を予防するかもしれないとのこと。
日に2~3つのカップを消費した女性は、抑うつの発症を15%を減少し 4杯以上のカップを1日飲んだ女性は、抑うつの危険を20%削減した。
研究者らは、カフェインが脳のドーパミン系を活性化させるからであろうと推測しています。
注意点としてカフェインで眠れなくなる可能性があるから、慎重に
人間の幸福感の尺度
抑うつの時は誰をみても幸せそうに見えるもの。鬱の対局にあるのが幸福感です。
最近ではポジティブ心理学なるものが主流でいかに幸せでいられるかを考えたほうが、抑うつになりにくいという発想が主流です。
そこで、現状を肯定的に見るために、幸福感の尺度を経済的なもの以外に目を向けるよう心掛けましょう。
人間の幸福感は経済的なものだけでは測れないのです。
アメリカでの調査です。1990年のドル為替レートで計算された調査によると、税引き後の平均所得が$7500を境に幸福と答える人の率に変化はない。
2010年10月28日.中日新聞.【朝刊】【静岡】
これが今の日本の所得で、どれくらいが境になるか。2012年の上半期で年収800万円が境になっているそうです。
年収800万までいくのが簡単ではない日本。あまり参考にならないかも。
スピリチュアリティ(霊性)が精神的健康を向上させる可能性
日本ではスピリチュアルというと何やら怪しげなイメージを持つ方も多くおりますが、海外では宗教観があることは当たり前で、むしろ宗教観の無い人間のほうが少ないと良くいわれます。
このタイトル自体が変っていえば変ですが、精神的ってスピリットの事ですから…
昨今では御朱印集めがブームになってきていますが、これも人間の霊性を呼び起こす活動の一つだと私は考えています。人間らしいブームですね。
霊性が精神的、身体的な健康を増進させる
米ミズーリ大学宗教学教育専門助教授のDan Cohen氏らの研究で、 「Journal of Religion and Health」に掲載された内容が興味深い。
仏教徒、カトリック教徒、ユダヤ教徒、イスラム教徒、プロテスタントを対象に、 人格、精神性のレベル、身体的および精神的健康について尋ねた3件の調査結果を検討
結果:5つの信仰すべてにおいてスピリチュアリティが高い人ほど精神的健康が良好であり、特に神経症的傾向が低く、外向性が強かった。
人格に関する変数を考慮後、【寛容性】が精神的健康を予測する唯一の精神性の特性であると結論。
個人の信念に合わせた治療も大事
研究者いわく「スピリチュアリティは自己中心的な考えを抑制し、より大きな世界に属する感覚を育てることで、精神的健康の助けになる可能性がある。この研究結果はスピリチュアリティが多くの点で人格特性として機能するという意見を裏付けている。」
興味深いのは①宗教的活動への参加頻度などが人格、精神性、信仰、健康間の関係において重要でなかった点。
②精神的信念はストレスを主情的に処理するうえで役立つ対処法と思われる点。
Cohen氏らは、治療やリハビリテーションプログラムを個人の精神的信念に合わせるなど、スピリチュアリティと健康の関係が医療の一助になるのを証明できることを示唆。
信じるものは救われる。非常に面白い研究です。 薬物療法が中心の日本では毛嫌いされるかもしれませんが、私はこのような研究がさらに薦められることを期待します。
うつ病にボルダリングも効果的
東京オリンピックで新種目になった一つ、スポーツクライミング。その一分野のボルダリングですが、見てて面白かった通り、うつ病にも効果があるという研究です。
週に1回3時間を8週実施
中等軽度のうつ病には運動が有効である研究は以前からあります。
運動療法自体をガイドラインに盛り込んでいるのは英国だけ?のようですが基本的に身体にいいことは、鬱にも良い効果があるのだろうと私は考えています。
ドイツのフリードリヒ・アレクサンダー大学においてうつ病患者への8週間ボルダリング・プログラムの成果はあったようです。
ボルダリング介入8週間後、うつ病の指標でプラスの効果が認められた(BDI-II:Cohen’s d=0.77)
本知見は、ボルダリング介入がうつ病の効果的な治療法である可能性を示す最初の報告であり、さらなる研究が必要である。
Luttenberger K, Stelzer EM, Först S, Schopper M, Kornhuber J, Book S. Indoor rock climbing (bouldering) as a new treatment for depression: study design of a waitlist-controlled randomized group pilot study and the first results. BMC Psychiatry. 2015 Aug 25;15:201. doi: 10.1186/s12888-015-0585-8. PMID: 26302900; PMCID: PMC4548691.
ただ単に行う単調な運動よりも、ボルダリングのように運動強度もたかく「どの岩をつかも?」「次の右足はどうおこうか?」など考えながら動くことは前頭葉を活性化させること間違いなしです。日本のボルダリングブームもなんとなく納得がいきます。面白いのです。
その後も多くの研究でボルダリングの効果が立証されています。
引きこもり等で運動機能が著しく低下している場合はくれぐれも気を付けて無理のない範囲で楽しんでいきましょう。
トライ無き所にゴールなし。いろいろトライしてみるものですね。