近年の画像研究で、非特異的腰痛いわゆる腰痛の原因の多くが「腰部多裂筋」であろうことが言われています。みなさんも動画やレッスンの中で「多裂筋が重要です」ということを聞いたことがある方も少なくないでしょう。
2016年の時点の系統的レビュー(最上級の研究)では、何らかの形で多裂筋の変化が腰痛に認められるので、腰痛治療や予防にいて今後重要だと言われています。
いきなりの余談ですが、再発性腰痛には、多裂筋に脂肪浸潤が起こらないという中程度の証拠、再発性腰痛の筋肉内脂質の相対量の増加を反映して、脊柱起立筋、多裂筋、および傍脊柱筋でより大きな筋肉脂肪指数が見つかるようです。
そして慢性腰痛では多裂筋委縮がみられるようですが、再発性腰痛と急性腰痛では多裂筋の萎縮は見られないようです。
多裂筋の解剖学
先ず多裂筋ですが、脊柱起立筋群=背骨の周りにある筋肉の1種類で、深部筋になります。よくある間違いが多裂筋は腰にしかない、と思われがちですが実際は胸部や頚部にもあります。
多裂筋は背骨2-4個分を繋いでる深層筋の事を言います。腰部多裂筋は腰椎または仙骨から出ている多裂筋を言います。
多裂筋の画像診断では腰痛予防できない
トレーナーなども含めた、フィジカルケアの方ならご存知の多裂筋へのMRI画像での腰痛予測。デンマーク人への5年、、9年の前向きコホート研究によると予測できることもあるが一貫性がなく、推奨できないようなのです。
コホート研究です。3つの連続した時点で腰部多裂筋(LM)筋肉内脂肪組織(IMAT)浸潤と腰痛(LBP)の間の断面関係を調査し、後の腰痛の発生を予測してみたが、5年、9年間追跡調査したが年齢とともに脂肪浸潤に変化もおき、腰痛や脚の痛みの予測に一貫性は見いだせなかった。
Hebert JJ, Kjaer P, Fritz JM, Walker BF. The relationship of lumbar multifidus muscle morphology to previous, current, and future low back pain: a 9-year population-based prospective cohort study. Spine (Phila Pa 1976). 2014 Aug 1;39(17):1417-25. doi: 10.1097/BRS.0000000000000424. PMID: 24859576.
基本的には腰部多裂筋への画像診断での腰痛予測はできないとのこと。臨床の現場では触診がものを言うとおもっているのですが、なかなかそのような研究は出しづらいですよね。ちなみにレントゲンやMRI自体ももちろん腰痛の予測はできません。
画像診断のあやうさと実際の判断
画像診断による判断は年々精度が上がってきており、より詳細な画像観察が可能になってきていると思われます。ただ画像とうのは一時の状態を映し出すものなので、注意が必要であることは分ると思います。
この多裂筋は画像にあるように深いところにある筋肉なので、しっかり使えているか、どうかという判断は難しくなります。熟練したカイロプラクターやヨガの先生だと、細やかな部分が機能しているか判断できるのではないかと思います。指でしっかり触れませんから触診で判断もできません。
マインドフルに生きる
いま分かっているのは、心理、社会的ストレスが重なると腰痛になるだろう、ということです。
腰への負担は腰痛の直接的な原因にはならないと統計的には言われています。マインドフルネスなど内観することが流行ってきていますが、腰痛に関しても有用であることが解ってきています。
単純に今ここにあることに集中するという方法でも良いと思いますし、腰の深部筋(多裂筋や回旋筋)がしっかり機能しているか、緩んでいるか、どのようになっているかに思いを巡らすのも良いと思います。
そのためにも多裂筋の解剖学をやんわりとでも頭に入れておくとイメージしやすいのではないかと思います。