歯ぎしりのエビデンスと科学的対策

歯ぎしりで奥歯が削れている方に向けて、現時点で医学が判っていることを皆さんと共有したくて、このページを書きました。

カイロプラクティックの臨床でも副次的に訴える事が多い「はぎしり」は何をすれば良くなるのか?歯医者さんでマウスピースを作る以外に方法はないのか?知りたい方も多いと思います。

現時点では確実に歯ぎしりを改善させる医学的方法は確立されていませんが、複数の要素を組み合わせることで今よりは歯ぎしりが減る可能性はあります。

最近の医学文献レビューから、助言できそうな事をピックアップしてみます。

目次

【この記事の結論:歯ぎしりを減らすために大切なこと】

現時点で「これをすれば一発で歯ぎしりが治る」という確実な医学的治療法は確立されていません。しかし、最新の医学文献レビューから分かるように、歯ぎしりはストレス、生活習慣、睡眠障害、口呼吸、顎関節の緊張など複数の要因が絡み合って起きています。

そのため、歯科でのマウスピース治療を継続しつつ、**「生活習慣の見直し」「身体の緊張をゆるめるケア(カイロプラクティック等)」「行動の記録と変容」**を組み合わせていくことが、今できる最も現実的かつ効果的なアプローチとなります。

定義

そのまんま

まずはbruxism(ブラキシズム)と言うのですね。知らなかった。

専門家グループは、ブラキシズムを、歯を食いしばったり歯ぎしりしたり、下顎骨を装具や突き上げたりすることを特徴とする、顎と筋肉の反復的な活動と定義

Lobbezoo F, Ahlberg J, Glaros AG, Kato T, Koyano K, Lavigne GJ, de Leeuw R, Manfredini D, Svensson P, Winocur E. Bruxism defined and graded: an international consensus. J Oral Rehabil. 2013 Jan;40(1):2-4. doi: 10.1111/joor.12011. Epub 2012 Nov 4. PMID: 23121262.

睡眠時/覚醒時ブラキシズム 

その後、起きている時、寝ている時と2つのブラキシズムがあり、咀嚼筋の活動(反復的または持続的な歯の接触、および/または下顎骨の装具または突き上げによって特徴付けられる)としている。

睡眠時
覚醒時
  • 睡眠時ブラキシズム
  • sleep bruxism(SB)として知られる睡眠中
  • 覚醒時ブラキシズム
  • awake bruxism(AB)

これは健康な人でもある活動なので、判断が難しい。自己報告か筋電図によって診断するそうです。

そのまんま

日本だと筋電図までとってる人は少なそうだなあ。聞いたことないもん。

生活習慣で変化の可能性

生活習慣で影響している要因が幾つかあります。

1038件の研究から、41件のSRを組み入れた。これらのSRからの調査結果

(a)成人では、ABの有病率は22%-30%、SB(1%-15%)、および小児および青年のSB(3%-49%)であった。

(b)歯ぎしりに一貫して関連する要因は、アルコール、カフェイン、タバコ、いくつかの向精神薬の使用、食道の酸性化および受動喫煙であった。顎関節症の徴候および症状は、妥当な関連を示した。
Epub 2019年5月7日。歯ぎしり:システマティックレビューの包括的なレビュー

有病率は、年齢層とSB診断(可能、可能性、または確定的)に応じて5%から50%の範囲。
病態生理学は多因子であり、※覚醒に関連し、危険因子として行動上の問題や睡眠障害(閉塞性睡眠時無呼吸、いびき、悪夢)、呼吸器疾患(アレルギー、口呼吸)と関連しています。

Epub 2023 年 9 月 24 日。小児および青年における睡眠時の歯ぎしり:スコーピングレビュー

※覚醒時の行動の問題とは次の4つです。

多動性や不注意(ADHD傾向など)落ち着きのなさや衝動性、日中の集中力の低下など、神経発達や行動のコントロールに関連する問題。これらは自律神経の過緊張や脳の覚醒水準(アロスタティック負荷)を高め、睡眠中の歯ぎしりを引き起こしやすい土壌となります。
デジタルメディアやスマートフォンの過度な利用(長時間のスクリーンタイム):夜遅くまでのスマホやタブレット、ゲームの使用は、脳を過剰に興奮させるだけでなく、体内時計(生体リズム)を狂わせ、睡眠の質(浅い睡眠や中途覚醒)を悪化させます。
生活リズム・睡眠習慣の乱れ:就寝時間が不規則、夜更かし、睡眠不足など、生活のメリハリが失われた行動パターンです。
不適切な食習慣(砂糖の過剰摂取など):甘いものの頻繁な摂取や偏った食生活も、子どもの行動や睡眠のリズム、神経伝達物質(ドーパミンなど)の働きを介して睡眠障害や歯ぎしりと関連することが指摘されています。

そのまんま

以上の事から、個人で対策できるのは、

  • アルコール、カフェイン、タバコの嗜好品を見直す
  • 向精神薬を利用している方は種類を見直す
  • 逆流性食道炎はないか?あれば食生活など見直す
  • スクリーンタイムを減らす
  • 生活リズムを見なおす
  • 甘い食べ物をへらし適切な食習慣に切り替える
  • 受動喫煙が多いようであれば環境を変える
  • 顎関節症(顎回りの筋肉のチェックなど)の有無を調べる
  • アレルギー症状が状態化しているなら抗アレルギー薬を利用する
  • 口呼吸の方は鼻呼吸に変えていく

現時点ではっきりとしたエビデンスがあるわけではないので、生活習慣からブラキシズムを見なおす場合、ご自身で組み合わせてやってみて、記録を付けてください。認知行動療法の観点からも記録して比較するのが重要です。子供のADHD用行動は、スクリーンタイムや睡眠時間、生活リズムとも関連しているので、多くのことが関連していると言えます。

当院のYouTube動画です。22時前に寝ないとADHDに似た症状がでやすい

カイロプラクターとしてできること

先ずは簡単にできるカフェインやアルコールを減らすことで、歯ぎしりが減るかをチェックしたいところです。

口回りの筋操作や、モビリゼーション、ときにマニピュレーションといった理学療法、徒手療法をとことんやってみる。

TENSEを使っている治療院はTENSEを使ってみる(楽トレ)などもTENSEの一種だと思います。

すでに行っているであろう、マウスピースも継続してもらい、場合によっては上記の抗うつ薬を、かかりつけ医に相談して短期間処方してもらい、経過観察する。

認知行動療法的観点で言えば、患者の日常行動に変化を与え、歯ぎしりに変化があるかを経過観察し、歯ぎしりが減る行動が見つかればその行動を増やします。逆に歯ぎしりが増える行動が見つかればその行動を減らします。

観察してメモを取っておくのが基本

いずれにせよ経過観察が必要で、できれば詳細に経過を記載していきます。

経過観察期間中は、パートナーに歯ぎしりのチェック、睡眠アプリで歯ぎしりのチェック、筋電図が取れれば毎晩とってみるのも良いでしょう。

また論文から察するに睡眠時歯ぎしりの場合、歯ぎしり時に血圧が上がるのでappleウォッチなどで血圧や自律神経の変化が判るのならば、それらの情報もあるに越したことはありません。後にご紹介する論文でもでてきますが、脳波との関連がありますので、睡眠時の脳波変化がある時を予測できる可能性があります。

さらに夜間に寝相を撮影できるのなら、VIDEO撮影をして歯ぎしり前後と、四肢の動きとの関連についても相関があるのか?何か対策がとれるのかを照らし合わせ見てみたいものです。

これらは多大な労力を要しますが、それらの行動が未来の医療へと繋がっていきますので、行動してみてください。そして何か解れば教えてください。

どんな時に起きているのか?を知る

睡眠中の歯ぎしり(睡眠時ブラキシズム:SB)は、一晩中ずっと起きているわけではありません。多くは、浅い眠りの時や、睡眠中に脳が一時的にピクッと目覚める「微小覚醒(アロソル)」というタイミングに連動して発生します。

具体的には、以下のようなメカニズムで起きています。

  • 睡眠のサイクルと連動する
    • 浅いノンレム睡眠のステージ(N1やN2)や、睡眠サイクルが切り替わるタイミングで、リズミカルな咀嚼筋の活動(RMMA)が頻繁に見られます。
  • 自律神経や脳の活動が一時的に高まる
    • 歯ぎしりが起こる直前には、心拍数や血圧などの自律神経系や、脳の活動レベル(覚醒水準)がフワッと高まるサイン(生理的覚醒シーケンス)が先行することが分かっています。

つまり、歯ぎしりは単に「あごの筋肉が疲れている」だけでなく、「脳や自律神経が睡眠中にちょっとした覚醒・興奮状態になるスイッチ」と連動して引き起こされている現象です。。

https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/37114936/
そのまんま

あまり個人の対策では参考になりませんが、脳波の変化があるのと、睡眠のパタンが違うそうですし、睡眠の質とも関連してきそうですね。。

有病率と影響:睡眠時歯ぎしり(SB)は小児の約20%、成人の約10%に見られる一般的な睡眠障害であり、歯の摩耗、顎の痛み、側頭部の頭痛などを引き起こす。しかし、その病態生理メカニズムは未だに不明な点が多く、決定的な治療法は確立されていない。

ポリソムノグラフィー(PSG)による知見:ヒトの研究から、歯ぎしりの原因である咀嚼筋のリズム性活動(RMMA)は、浅いノンレム睡眠中に、一過性の「覚醒(アロソル)」や「周期的睡眠プロセス」と連動して発生することが示されている。

動物・ヒト研究の統合:さらに神経生理学的メカニズムを解明するため、自然睡眠中の動物を用いた研究なども行われており、睡眠時における運動活動の背景にある仕組みが多角的に検証されている。

Understanding the pathophysiology of sleep bruxism based on human and animal studies: A narrative review(ヒトおよび動物研究に基づく睡眠時歯ぎしりの病態生理の理解:ナラティブレビュー)著者:Takafumi Kato ほか(J Oral Biosci. 2023)
そのまんま

もし咀嚼筋が何等かの脳への入力になっているなら、反射的にループが起きているのかもしれません。これは理学療法が功を奏する理由です。

研究の目的:小児の睡眠時歯ぎしり(SB)において、歯ぎしりのもとになる顎の筋肉の活動(RMMA)が、睡眠中の脳波(大脳皮質)、心拍数などの自律神経(心臓)、そして身体が少し目覚める動き(覚醒運動活動)のサイクルの中で、どのように結びついて起きているのかを明らかにすることを目的としています。

背景:歯ぎしりが単なるあごの筋肉のトラブルではなく、睡眠中の脳の活動や自律神経の切り替わり、覚醒(浅い眠りへの移行)のメカニズムと密接に連動して発生していることを、小児の睡眠データ(ポリソムノグラフィーなど)を用いて詳細に解析・検証した研究です。

「小児の原発性睡眠時歯ぎしりにおける、睡眠サイクルを通じた咀嚼筋のリズム性活動(RMMA)の発生と、大脳皮質・心臓(自律神経)・覚醒運動活動との関係」

脳波の切り替えと連動している点は興味深いですねえ。

RMMAおよび非特異的咬筋活動(NSMA)は、筋電図検査およびビデオ録画を使用して、脚、腕、頭、および体幹の身体の動きに関連してスコアリング。口腔運動エピソードと身体運動の関係を、睡眠段階の分布と時間的関係の観点から評価。
N2期における口腔運動エピソードに先行する心臓の変化がある。
結果 RMMAおよびNSMAの約80%は、1つ以上の身体部位の動きに関連していた。RMMAとNSMAは、頭部(17-22%)と体幹(5-25%)の動きよりも、脚(70-75%)と腕(40-55%)の動きとより頻繁に関連。
口腔運動エピソードと身体運動の関係は、睡眠段階によって有意差はなかった。口腔運動エピソードと身体運動は、SB群と正常対象群で一貫した時間的パターンを示さなかった。
口腔運動エピソードと身体運動の時間的関係に関係なく、平均心拍数は口腔運動エピソードの開始前に5拍有意に増加。結論:RMMAとNSMAは、睡眠中の覚醒に関連する自律神経運動反応のレパートリーです

表現型睡眠ブラキシズムの候補としての睡眠アーキテクチャ:物語的生理学的レビュー – PubMed (nih.gov)

そのまんま

手足の運動が関連しているのは面白いです。当院の利用者で、腕に違和感がつよい方(コリがある)で、ブラキシズムもある方はおられます。関係あるかもしれません。

バイアスはあるものの、システマティックレビューによればSBの治療は、薬理学的治療、口腔リハビリテーション、およびその他の治療アプローチはBEに対して決定的でないまたは否定的な効果を示した。
口腔器具は議論の余地のある効果を示した。
バイオフィードバック、理学療法、レーザー療法、およびボツリヌス毒素は、BEの減少にプラスの効果を示した。
表現型睡眠ブラキシズムの候補としての睡眠アーキテクチャ:物語的生理学的レビュー – PubMed (nih.gov)

  • レーザー療法
  • ボツリヌス毒素

生物学的および心理的要因は、歯ぎしりの発症と強く相関しています•子供の6〜50%の範囲の歯ぎしりの有病率

薬物療法(ヒドロキシジン/トラゾドン/フルラゼパム※)、咬合スプリント、歯列矯正介入、心理的および理学療法的介入を使用した研究で、自己申告による歯ぎしりと歯ぎしりに関連する頭痛の減少が観察されました

リズミカルな咀嚼筋活動の低下が観察されました咬合スプリントの使用と歯列矯正の介入。代替治療(メリッサオフィシナリスLなどの薬用抽出物)は、歯ぎしりの減少に関して決定的な結果を示していません
小児および青年期の歯ぎしりを減らすための介入:体系的なスコーピングレビューと批判的考察 – PubMed (nih.gov)

  • ヒドロキシジン(商品名:アタラックスなど)は抗ヒスタミン薬で、抗不安、鎮静作用、抗アレルギー作用。
  • トラドゾン(商品名:レスリンなど)は、主に抗うつ薬(セロトニン再取り込み阻害・セロトニン受容体拮抗薬:SARI)として処方されるお薬です。
  • フルラゼパム(商品名:ダルメートなど)は、主にベンゾジアゼピン系の睡眠薬(抗不安薬・筋弛緩作用を伴う)

私自身は、薬物療法に行く前に、生活習慣を見直すことをお勧めしますが、選択肢としてはあります。

マウスピーズもエビデンスが不十分

ご利用になっている方は体感的に解っていますが、マウスピース自体が食いしばり、歯ぎしりを少なくするわけではありません。

システマティックレビューは、ブラキシズムの治療における咬合スプリント(マウスピース)の有効性を明らかにすることを目的とした。咬合スプリント療法が、無治療、他の口腔器具、TENS、行動療法または薬理学的療法よりも有益であるかどうかを判断するには、エビデンスが不十分である。
結果、そのような器具を提供する可能性のある歯科臨床医に関連し、治療の提供において彼らに注意を喚起します ブラキシズムの治療における咬合スプリントの有効性:系統的レビュー – PubMed (nih.gov)

まずはお気軽にご相談ください

※お身体の状態についての個別のご相談や詳細なカウンセリングは、対面での施術時にしっかりお時間を取ってお伺いします。まずはご予約の上、安心していらしてくださいね。

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