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伊藤孝英
院長
ロイヤルメルボルン工科大学健康科学部カイロプラクティック学科日本校卒業。B.C.Sc(カイロプラクティック学士), B.App.Sc.(応用理学士)。従来の筋骨格系障害としての腰背部痛から生物社会心理的要因としての腰背部痛へとシフトチェンジ。鬱や不安障害にも着目したマルチモデルでヒューマンケアしています。
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はぎしり

歯ぎしりで奥歯が削れている方に向けて、現時点で医学が判っていることを皆さんと共有したくて、このページを書きました。

カイロプラクティックの臨床でも副次的に訴える事が多い「はぎしり」は何をすれば良くなるのか?歯医者さんでマウスピースを作る以外に方法はないのか?知りたい方も多いと思います。

現時点では確実に歯ぎしりを改善させる医学的方法は確立されていませんが、複数の要素を組み合わせることで今よりは歯ぎしりが減る可能性はあります。

最近の医学文献レビューから、助言できそうな事をピックアップしてみます。

目次

定義

そのまんま

まずはbruxism(ブラキシズム)と言うのですね。知らなかった。

専門家グループは、ブラキシズムを、歯を食いしばったり歯ぎしりしたり、下顎骨を装具や突き上げたりすることを特徴とする、顎と筋肉の反復的な活動と定義

Lobbezoo F, Ahlberg J, Glaros AG, Kato T, Koyano K, Lavigne GJ, de Leeuw R, Manfredini D, Svensson P, Winocur E. Bruxism defined and graded: an international consensus. J Oral Rehabil. 2013 Jan;40(1):2-4. doi: 10.1111/joor.12011. Epub 2012 Nov 4. PMID: 23121262.

その後、起きている時、寝ている時と2つのブラキシズムがあり、咀嚼筋の活動(反復的または持続的な歯の接触、および/または下顎骨の装具または突き上げによって特徴付けられる)としている。

睡眠時
覚醒時
  • 睡眠時ブラキシズム
  • sleep bruxism(SB)として知られる睡眠中
  • 覚醒時ブラキシズム
  • awake bruxism(AB)

これは健康な人でもある活動なので、判断が難しい。自己報告か筋電図によって診断するそうです。

そのまんま

日本だと筋電図までとってる人は少なそうだなあ。聞いたことないもん。

生活習慣で変化の可能性

生活習慣で影響している要因が幾つかあります。

1038件の研究から、41件のSRを組み入れた。これらのSRからの調査結果

(a)成人では、ABの有病率は22%-30%、SB(1%-15%)、および小児および青年のSB(3%-49%)であった。

(b)歯ぎしりに一貫して関連する要因は、アルコール、カフェイン、タバコ、いくつかの向精神薬の使用、食道の酸性化および受動喫煙であった。顎関節症の徴候および症状は、妥当な関連を示した。
Epub 2019年5月7日。歯ぎしり:システマティックレビューの包括的なレビュー

有病率は、年齢層とSB診断(可能、可能性、または確定的)に応じて5%から50%の範囲。
病態生理学は多因子であり、覚醒に関連し、危険因子として行動上の問題や睡眠障害(閉塞性睡眠時無呼吸、いびき、悪夢)、呼吸器疾患(アレルギー、口呼吸)と関連しています。
Epub 2023 年 9 月 24 日。小児および青年における睡眠時の歯ぎしり:スコーピングレビュー

そのまんま

以上の事から、個人で対策できるのは、

  • アルコール、カフェイン、タバコの嗜好品を見直す
  • 向精神薬を利用している方は見直す
  • 逆流性食道炎はないか?あれば食生活など見直す
  • 受動喫煙が多いようであれば環境を変える
  • 顎関節症(顎回りの筋肉のチェックなど)の有無を調べる
  • アレルギー症状が状態化しているなら抗アレルギー薬を利用する
  • 口呼吸の方は鼻呼吸に変えていく

現時点ではっきりとしたエビデンスがあるわけではないので、ご自身で組み合わせてやってみて、記録を付けてください。認知行動療法の観点からも記録して比較するのが重要です。

カイロプラクターとしてできること

先ずは簡単にできるカフェインやアルコールを減らすことで、歯ぎしりが減るかをチェックしたいところです。

口回りの筋操作や、モビリゼーション、TENSEを使っている治療院はTENSEを使ってみる(楽トレ)などもTENSEの一種だと思います。

すでに行っているであろう、マウスピースも継続してもらい、場合によっては上記の抗うつ薬を、かかりつけ医に相談して短期間処方してもらい、経過観察する。

行動療法は患者の日常行動に変化を与え、歯ぎしりに変化があるかを経過観察し、歯ぎしりが減る行動が見つかればその行動を増やします。逆に歯ぎしりが増える行動が見つかればその行動を減らします。

観察してメモを取っておくのが基本

いずれにせよ経過観察が必要で、できれば詳細に経過を記載していきます。

経過観察期間中は、パートナーに歯ぎしりのチェック、睡眠アプリで歯ぎしりのチェック、筋電図が取れれば毎晩とってみるのも良いでしょう。

また論文から察するにSBの場合、歯ぎしり時に血圧が上がるのでappleウォッチなどで血圧や自律神経の変化が判るのならば、それらの情報もあるに越したことはありません。

さらに夜間に寝相を撮影できるのなら、VIDEO撮影をして歯ぎしり前後と、四肢の動きとの関連についても相関があるのか?何か対策がとれるのかを照らし合わせ見てみたいものです。

これらは多大な労力を要しますが、それらの行動が未来の医療へと繋がっていきますので、行動してみてください。そして何か解れば教えてください。

どんな時に起きているのか?を知る

睡眠時ブラキシズム(SB)は、あるいみ健康な人の口腔行動であり、睡眠中の頻繁なリズミカルな咀嚼筋活動(rhythmical masticatory muscle activity)(RMMA)によって特徴付けられる。
RMMA/SBエピソードは、さまざまな睡眠段階(N1-N3および急速眼球運動(REM)、睡眠サイクル(ノンレムからレム)、および頻繁に微小覚醒を伴って発生する。

非SBおよびSB健常者では、RMMAエピソードは、特に睡眠サイクルの上昇期に、軽いノンレム睡眠ステージN1およびN2で最も頻繁に見られた。
健常者におけるRMMA/SBエピソードの発症は、自律神経心血管から皮質への活性化の生理的覚醒シーケンスによって先行。
それ以外は健康な人では、RMMA/SBエピソードの発生は、睡眠段階とサイクルの振動、および微小覚醒の発生に大きく影響。
さらに、睡眠の併存疾患の存在下では、特定の睡眠構造パターンを確認できない。SBのより正確な診断に寄与する睡眠構造の表現型候補と、標準化された革新的な方法論を用いた治療アプローチを明らかにするには、さらなる研究が必要。 – PubMed (nih.gov)

そのまんま

あまり個人の対策では参考になりませんが、脳波の変化があるのと、睡眠のパタンが違うそうです。

睡眠ポリグラフ検査を含むヒトの研究では、リズミカルな咀嚼筋活動(RMMA)が、正常な人よりもSBの健康な人でより頻繁に行われる。

RMMAは、一過性覚醒と周期的な睡眠プロセスに関連して、軽い非急速眼球運動(ノンレム)睡眠中に発生。SBの神経生理学的メカニズムをさらに解明するために、自然に眠っている動物における顎の運動活動が研究中。
これらの動物は、ヒトに見られるものと同様に、皮質および心臓の活性化に関連して非レム睡眠中に発生したリズミカルで反復的な咀嚼筋破裂のエピソードを含む、咀嚼筋のさまざまな収縮がある。

皮質球路の電気的微小刺激は、ノンレム睡眠中にリズミカルな咀嚼筋収縮を誘発する可能性もあり、咀嚼運動系が非レム睡眠中に、咀嚼中枢パターン発生器への興奮性入力によって活性化されることを示唆。 – PubMed (nih.gov)

そのまんま

もし咀嚼筋が何等かの脳への入力になっているなら、反射的にループが起きているのかもしれません。これは理学療法が功を奏する理由です。

睡眠サイクルでは、SB小児は対照群よりもすべてのセグメントでRMMAの頻度が高く、皮質および自律神経活動の周期的変化は2群間で有意差がなし。
SB小児では、RMMAはレム睡眠前の最後のノンレム群で最も頻度が高く、皮質ベータ活性および覚醒の増加と関連。RMMAの70%以上が時間依存的に皮質および運動覚醒で発生しました。.結論: RMMA発生の増強が、一次SBの子供たちの、「周期的な睡眠プロセスの下での一時的な覚醒」と関連していることを示唆 PubMed (nih.gov)

RMMAおよび非特異的咬筋活動(NSMA)は、筋電図検査およびビデオ録画を使用して、脚、腕、頭、および体幹の身体の動きに関連してスコアリング。口腔運動エピソードと身体運動の関係を、睡眠段階の分布と時間的関係の観点から評価。
N2期における口腔運動エピソードに先行する心臓の変化がある。
結果 RMMAおよびNSMAの約80%は、1つ以上の身体部位の動きに関連していた。RMMAとNSMAは、頭部(17-22%)と体幹(5-25%)の動きよりも、脚(70-75%)と腕(40-55%)の動きとより頻繁に関連。
口腔運動エピソードと身体運動の関係は、睡眠段階によって有意差はなかった。口腔運動エピソードと身体運動は、SB群と正常対象群で一貫した時間的パターンを示さなかった。
口腔運動エピソードと身体運動の時間的関係に関係なく、平均心拍数は口腔運動エピソードの開始前に5拍有意に増加。結論:RMMAとNSMAは、睡眠中の覚醒に関連する自律神経運動反応のレパートリーです

表現型睡眠ブラキシズムの候補としての睡眠アーキテクチャ:物語的生理学的レビュー – PubMed (nih.gov)

そのまんま

手足の運動が関連しているのは面白いです。

バイアスはあるものの、システマティックレビューによればSBの治療は、薬理学的治療、口腔リハビリテーション、およびその他の治療アプローチはBEに対して決定的でないまたは否定的な効果を示した。
口腔器具は議論の余地のある効果を示した。
バイオフィードバック、理学療法、レーザー療法、およびボツリヌス毒素は、BEの減少にプラスの効果を示した。
表現型睡眠ブラキシズムの候補としての睡眠アーキテクチャ:物語的生理学的レビュー – PubMed (nih.gov)

生物学的および心理的要因は、歯ぎしりの発症と強く相関しています•子供の6〜50%の範囲の歯ぎしりの有病率新機能•薬物療法(ヒドロキシジン/トラゾドン/フルラゼパム)、咬合スプリント、歯列矯正介入、心理的および理学療法的介入を使用した研究で、自己申告による歯ぎしりと歯ぎしりに関連する頭痛の減少が観察されました•リズミカルな咀嚼筋活動の低下が観察されました咬合スプリントの使用と歯列矯正の介入。代替治療(メリッサオフィシナリスLなどの薬用抽出物)は、歯ぎしりの減少に関して決定的な結果を示していません
小児および青年期の歯ぎしりを減らすための介入:体系的なスコーピングレビューと批判的考察 – PubMed (nih.gov)

マウスピーズもエビデンスが不十分

ご利用になっている方は体感的に解っていますが、マウスピース自体が食いしばり、歯ぎしりを少なくするわけではありません。

システマティックレビューは、ブラキシズムの治療における咬合スプリント(マウスピース)の有効性を明らかにすることを目的とした。咬合スプリント療法が、無治療、他の口腔器具、TENS、行動療法または薬理学的療法よりも有益であるかどうかを判断するには、エビデンスが不十分である。
結果、そのような器具を提供する可能性のある歯科臨床医に関連し、治療の提供において彼らに注意を喚起します ブラキシズムの治療における咬合スプリントの有効性:系統的レビュー – PubMed (nih.gov)

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