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伊藤孝英
カイロプラクティックそのまんまサンシャイン院長
RMIT大学(ロイヤルメルボルン工科大学)日本校卒業。B.C.Sc(カイロプラクティック学士), B.App.Sc.(応用理学士)。従来の筋骨格系障害としての腰背部痛という観点から、生物社会心理的要因としての腰背部痛へとシフトチェンジしてマルチモデルで腰痛ケアをしています。鬱・不安などの気分障害で過度な薬物療法に疑問をお持ちの方もお気軽にお問い合わせください。
そのまんまサンシャイン公式ホームページ
筋骨格系の症状はもとより代替医療のセカンドオピニオンもお気軽に聞きにきてください。https://chirosonomanma.com

腰への負担は腰の構造を強くする

腰へ負担をかけよう
目次

腰への負担が大きいほうが実は腰痛は少ない

超一級の疫学調査での結果です。信じられないかもしれませんが…

腰へ負担が掛かるから腰痛になると考えていたのは妄想のようです。統計的にみると腰へ負担が掛かる仕事の方が腰痛の発症率は低いようなのです。

2003年の研究
農業従事者1,221名と非従事者1,130名を対象にした前向きコホート研究では、腰への負担が大きいほど腰痛発症率が低下。
腰痛の原因は「摩耗・損傷モデル」では説明不可能。腰の健康を保ちたいなら肉体労働を恐れてはならない。

(Ann Agric Environ Med. 2003)

皆さんきっかけは様々ですが、何しろ軽い何かを持ち上げた時とか、「いつもと少し違う体勢で動いた時に腰が変な感じがして…」というような訴えが多いです。

しかしよくよく考えてみると、いつもは腰痛発生した時よりも重いものを持っているわけで、たまたま何かを持った時に発症したというだけなのです。

重量挙げ
腰への負担が大きいほうが腰痛は少ない!

実際に体重があるほうが腰の構造は丈夫

■体重差のある(平均13Kg)一卵性双生児を対象にMRIで腰椎を比較した結果、体重が重い方が腰椎の骨密度が高く、椎間板の状態も良好だった。仕事やスポーツによる累積的かつ反復性の生体力学的負荷が椎間板にダメージを与えるわけではない。

椎間板の変性は遺伝的要因であることが解かっています。以上のことからどんどん腰に負担をかけた方がいいということです。

但し正しいフォームを身に着けることが大切。

腰痛発症とその後の経過は心理社会的要因が大きい
欧州リウマチ学会の特別委員会が行なった筋骨格系疾患と心理社会的因子に関する文献調査によると、多くの研究において心理社会的因子は力学的因子より筋骨格系の疼痛発症とその後の経過に大きな影響を与える強力な予測因子であることが判明した。

(Ann Rheum Dis 2009)
恵比寿さん
腰痛は心の問題がおおきのじゃ

腰痛のない25名の大学生を対象に腰椎への物理的負荷に対する心理的ストレスと性格特性の影響力を調べた結果、心理的ストレスは単独で腰痛の原因となり、特に内向型と直感型の性格特性は心理的ストレスで腰痛発症リスクが高くなるそうです。

こういう心理学的なことって、誰にでも当てはまることが多いですが、私も読んでいて「自分の事?」と思いました。でも内向型、直感型ってスピ系の方とも言えなくもないですね。

座り仕事だから腰痛になるというエビデンスはない?

臨床上「座りっぱなしだと、どうしても腰が固まってくる」というご説明をします。患者さんの訴えから推察していくと、そのような結論になりそのように説明しています。しかしビッグデータでは裏付けはないそうです。

死亡率は上げるが腰痛のリスクにはならない座業

座る男性
死亡率は確実にあがる座り姿勢

もう何を信じていいのやら… となっていまうのですが、カイロプラクティックが科学を標榜するのならば説明責任があります。こんな研究があるからです。

1985年~1997年に発表された座業と腰痛に関する論文の体系的レビューによると、座業が腰痛のリスクファクターであるというエビデンスは見出せなかった。座りっぱなしの仕事が腰痛と関連するという世論の裏付けは存在しない。

思い込みとは恐ろしいものですね。座りっぱなしの仕事だから腰痛になりやすいと誰もが信じていたはずです。ところが、厳密に調べてみるとそのような証拠は存在しなかったというのです。しかし近年の研究では座位は死亡率があがることが判っています。

2021.6追記:そうは言っても、ずっと座っていると腰が固まって腰痛になると私は思います。不快になったら直ぐに股関節を動かしたり、コモドストレッチをして血流を良くするように私はしています。

腰痛にコルセットは有効か?

コルセットも多い質問です。本人の好みにもよりますが、ある程度楽にしてくれるものでありそうです。機能的観点からみると、体幹の余分な屈曲動作を制限してくれるので、腰部筋肉群への刺激が動作時に減るのだろうと思います。言い方を変えると、体幹の使い方を習得できればコルセットは必要ないでしょうが、腰が痛い時に「さあ体幹筋を鍛えていきましょう!」とはなりづらいですから、圧程度痛みが減ってくるまでは必要なのかもしれません。

コルセットは欠勤日数は減らすかも

当たり前のように行われているコルセットや機械による牽引治療。なんとなく効きそうな気がしますが、統計学でみるとどうなのでしょうか?

急性腰痛に対する腰部コルセットとサポートベルトの有効性は証明されていない(確証度D)。

腰部コルセットは荷役作業従事者の腰痛による欠勤日数を減少させる可能性がある(確証度C)。

最新の腰痛診療ガイドラインでは、腰部コルセットもサポートベルトも腰痛の治療や予防に効果なしという勧告が出ています。ぎっくり腰の時に治療目的でコルセットはありませんが、職場復帰を早めるものとしては有りのようです。

※2021年に加筆修正していますので、その後いろいろな論文が出てきているようです。急性腰痛には推奨されないが、慢性腰痛にはどうか?などいろいろありますので見ていきましょう。

慢性腰痛には効果が有る

慢性腰痛に対する長期コルセット着用の効果を評価し、椎前筋の筋電活動を調べた。
慢性腰痛の40人の被験者がランダムに2つのグループに分けた。
①6か月間コルセットを着用しているグループ
②コルセットを着用していないグループ
結果:慢性腰痛のコルセット治療は、短期間で腰痛を改善し、筋肉の耐久性を高めました。慢性腰痛のための長期コルセット着用では椎前筋疲労は増加せず、コルセット着用開始後6ヶ月までは椎前筋の衰弱は観察されなかった。

Sato N, Sekiguchi M, Kikuchi S, Shishido H, Sato K, Konno S. Effects of long-term corset wearing on chronic low back pain. Fukushima J Med Sci. 2012;58(1):60-5. doi: 10.5387/fms.58.60. PMID: 22790893.
ドクター

福島県立医大の研究です。慢性腰痛の方がなんだかんだいってコルセットを手放せないのは、筋肉の耐久性を高めているのかもしれません。

理学療法は筋肉の状態異常のリスクを減らします。骨粗鬆症の集団では理学療法はさらにその後の骨折を防ぐのに役立ちます。
骨粗鬆症の患者とは異なり、脊椎骨折のある骨の健康な患者はコルセット/装具の治療を受けるべきではありません。

Yildiz U, Schleicher P, Castein J, Kandziora F. Konservative Behandlung von Wirbelfrakturen in BWS und LWS – was geht wie? [Conservative Treatment of Thoracic and Lumbar Vertebral Fractures – what’s it all about?]. Z Orthop Unfall. 2019 Oct;157(5):574-596. German. doi: 10.1055/a-0824-8692. Epub 2019 Oct 8. PMID: 31594004.

椎体骨折の既往があっても、健康な骨の方はコルセット使わないほうがいいようです。あらためて勉強になります。また気が向いたら更新します。

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