脳は身体の一部です
2017年現在、一般的に鬱病は脳の病気だと思われています。私はそう考えてはいません。
脳の前頭葉が機能低下しているのは確かなのですが、「脳機能が低下するように使っている」と考えている人間の一人です。
また脳は身体の一部分で、人間生活を送っていくにはとても大切な神経器官ではあるのですが、一部分であるということを強調しておきたいです。
人間関係を含めた環境の整備と、生活習慣、人生に対する考え方に変化を与えていけば鬱鬱としている気分の捉え方も変わってくるのではないでしょうか。
「鬱」漢字の語源は「エネルギーが立ち込めているさま」
白川静先生の字源辞典では「鬱」の由来は鬱蒼(うっそう)とした草むらという表現があるようにエネルギーが立ちこめているさまを表しているそうです。
考え方によっては、心の中に、いっぱいエネルギー含んでいる状態で吐き出し方が分からない状態だともいえます。
心身の不健康さも個人の選択なので良し悪しではないのですが、不健康な状態を脱する一つの方法として身体を温める習慣を作ることを以前からお勧めしています。
エビデンスという形で「入浴」にも効果があることが示されたのは嬉しいことです。
うつ症状軽減へ、入浴のすすめ
うつ病治療は進歩しているにもかかわらず、3分の1のうつ病患者は、従来の抗うつ薬では対応できていない。
副作用の少ない、より効果的な治療が求められている。ドイツ・フライブルク大学のJohannes Naumann氏らは、うつ病性障害を有する成人において温熱浴がうつ症状を軽減するかを検討。
ランダム化2アームプラセボ対照8週間。ハミルトンうつ病評価尺度で18点以上(中等度のうつ病)で安定したうつ病性障害の外来患者が対象
①週2回の温熱浴(40℃)群
②グリーンライトによる偽介入群に無作為に割り付け
4週間介入を行った後、さらに4週間フォローアップ【主な結果】
・対象患者36例は、温熱浴群17例、偽介入群19例に無作為に割り付け
・温熱浴群(温熱浴4回実施後)は、偽介入群と比較し、HAM-D総スコア3.14点の有意な差が認められた。著者らは「本パイロット試験で、温熱浴がうつ病患者において一般的に有用であることが示唆された」としている。
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/28351399
銭湯は裏切らない
故・立川談志は言ったといいます。「銭湯は裏切らない」。名言です。
少数でのランダム化比較対照試験だとおもいますが、こういう結果が出てくるのは嬉しいです。
健康を害している方の多くは入浴習慣がおろそかになっているように思えます。以外と簡単なところに答えは転がっているものです。薬だけで何とかしようなどとは考えずに、生活習慣を見直すところに戻ってみることをお勧めします。近くに銭湯やスーパー銭湯があるなら、足を運んでみてください。決して裏切られることはありませんから。
おまけ:鬱状態や疲労感は退職後に改善する
フランスで、退職前後7年間による体調の変化を、追跡調査した研究結果がだされました。
フランスの職業集団を対象に1989-2007までを調査。
対象11246男性と2858人の女性(いずれもフランス人)呼吸器疾患、糖尿病、冠状動脈性心臓病、気疲れ、および肉体的疲労は、15年間の観測の期間にわたって毎年自己レポートで測定
上記の慢性疾患の改善は、退職後に改善は見られなかったが、うつ状態や、疲労感は改善した。
http://www.bmj.com/content/341/bmj.c6149.abstract
とくに慢性疾患を持っている方ほど、身体・精神疲労の緩和、うつ症状の緩和が顕著であったようです。
引退後は明るいようですね。(そりゃそうか)