軽度の鬱病には効果が「ない」ことが判っている
うつ病の方でSSRIが効くと思って服用されている方も多いと思います。このお薬は大規模な研究でプラセボと差がないことが解っています。
大規模なメタ分析(=メタアナリシス=これまでの分析結果をさらに批判的に吟味して分析する超一級の論文のこと)で2008年と2010年に行われていて、海外では5年前にニュースになっていたようです。
諸外国のうつ病のガイドラインでは、軽症のうつ病では薬物療法を第一選択から外しているという。
軽度のうつ病は、ほとんどの場合が生活習慣病であると井原裕先生も著書「生活習慣病としてのうつ病」の中で仰っている。
薬に頼らないなら、週50時間の睡眠を確保せよ
取り敢えずお薬ではなく、適切な療養指導を行うということです。平均すると1日あたり約7.14時間の睡眠になります。これを毎日とってあげる。リハビリテーションの観点でいくと8週から12週続けていくと生活習慣になってきます。
抑鬱傾向の方は短眠志向であることが多く、お身体に相当な無理がかかっている場合が多いです。
人間は昔も今も
私はカイロプラクターなので精神科や心療内科の先生方とは違った見方をしているのですが、人を診るという観点では共通します。
診断名はあくまでもレッテルにすぎないので、狂気や落ち込みは「その方がそれまで生きてきた枠組みでは生きていけないよ」というサインだと考えることが大切です。
大切なのは立派なものでなくてもいいので何かを「創造」していくことです。小さな一歩を踏み出す。
われわれにできることは、その創造する行為の手助けや見守りだとおもいます。カイロプラクティックの構成要素に「芸術」と「哲学」があります。それぞれの患者さんの人生をみていくとき、このような要素が必要だということを経験を重ねるたびに思います。
正確な情報を得よう
ここで社会的な側面に目を向けてみます。
グーグル先生に「SSRI 効果」と聞いてみると、効果的であるという記事が上位をしめています。しかし医師が教えてくれると言われるサイトでも、参考文献がありません。
医師は参考文献なしでも発言してもいいけど、医師でないと発言できないのがGoogleの世界。現在では脳内セロトニンの不足という仮説は、この考え方を先ずは捨て去った方が良いというのが医学会の意見です。
(だいたい動物実験の結果です=エビデンスレベルは11/12)
社会の枠組みとして、これだけ薬剤師さんがいて、精神医療の産業が盛んになっていますと、その方々の生活を維持する必要があります。お薬の産業も消費社会の一部になっています。
中長期的に考えた場合、違う枠組みで考え方を組み立てていかないと損失が増大していきます。
精神を凌駕することのできるのは習慣という怪物だけ
三島由紀夫の名言
精神を凌駕することのできるのは習慣という怪物だけなのだ。※凌駕とは、他をしのいでその上に出ること
残念ながら「あなたは○○です」と適当なレッテルをお伝えして「この薬を飲めば楽になります」ということはありません。どうしようもない暴れん坊のその「精神」をしのいで、その上に出られるのは「習慣」だけです。
考え方によっては「薬を飲む」という新しい習慣があなたを楽にするのかもしれませんが…
WHOも世界で次に憂慮すべき疾患は「鬱病」であると警鐘を鳴らしています。日本もそうですが、世界的にうつ病が多いのは個人のせいなのでしょうか?地域レベル、市町村レベル、都道府県レベル、国家レベルで考える問題だと私は思います。身体は正直です。
人間の精神はお薬では治りません。また治す必要があるのか?という観点も必要です。1億総薬漬けで何とかなるか?その枠組みが変わる時が来ています。
おまけ:閉経後の火照りの緩和には効果があるSSRI
女性なら更年期障害の一つにほてり感があることをご存じかと思われます。
ほてりの症状軽減にSSRI(選択的セロトニン再取り込み阻害薬)のエスシタロプラムが効果的であるというデータが発表されたようです。
この薬は、当初うつ病の治療薬として開発されたのですが、その後腰痛などの筋骨格系の改善薬の一つとして短期間処方されると効果が見込めると考えられるようにになりました。
特に慢性痛がある人方で、ご自身でインターネットで調べて「うつじゃないのに、どうしてこの薬が処方されているのか、分からない」と疑問を持たれる方も多いようです。
具体的な作用は、脳の中のセロトニンという物質が再び脳脊髄液の中に戻るゲートを閉じて、脳内のセロトニン濃度を比較的上げた状態を保たせるものだと考えられています。