向精神薬は本来単剤処方

2021年7月30日

日本は3種ないし4種以上処方すると減算という形をとっている

昨年の記事になるそうですが、日本医師会雑誌2014年10月巻頭の樋口輝彦先生の言及によれば
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SSRIをはじめ新規抗うつ薬におけるアクチベーションや中止後症候群であり、また24歳以下の若年のうつ病患者において自殺関連行動が生じやすいことから、その使用にはリスクベネフィットを考慮すべきとされている点である。

薬の安全性の担保がきわめて重要なことは今さら述べるまでもないが、その反面使いやすくなることが安易な処方につながりかねないことは、われわれがベンゾジアゼピン系薬剤から得た教訓であり、今なお常用量依存が問題にされていることは真摯に受け止めなければならない。

わが国の向精神薬の使い方が多剤併用であることが指摘されて久しい。多剤併用から単剤中心の処方に向けての啓発、教育はこれまで関連学会においてまた医学部卒前、卒後教育におて行われながらも、依然として多剤併用の処方が多数を占めることが指摘され

ついには診療報州の縛りをかけることで解決を目指す状況に至った。すなわち、3種類以上の抗不安薬、3種類以上の睡眠薬、4種類以上の抗うつ薬または4種類以上の向精神病薬を投与した場合には、

精神科継続外来支援・指導料が算定できず、処方箋料、処方料、薬剤料は減算されるというものである。

精神科医師集団が自ら研修・教育を通じて多剤併用を克服することが本来の姿ではあるが、力及ばずであった。

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文章でお分かりのうように、科学的根拠において基本的には単剤の処方でないと良くないことが解っています。

日本的な折り合いの中で結局3種、ないし4種以上の薬を処方した場合に減算される

という処置になっている。

向精神薬や抗うつ薬、睡眠薬は 基本1種類でないとあとあと問題がおきやすいのです。

欲望を制する戦いは、精神科領域でも始まっている。
あまり悲観するつもりはないが、良心的な精神医療を行っていただけることを切に願います。

その後の京都大学の研究で外来患者に限ると、さほど悪い状況ではない

京都大学が2006~12年に、初めて抗精神病薬を処方された18歳以上の外来患者を評価。単剤処方、多剤併用処方、抗精神病薬の用量、向精神薬の併用処方について年間の傾向を分析した。

外来患者総計は、15万2,592例におよぶので大規模な研究です。

成人群における2006年と2012年の処方傾向は以下のとおりであった。

 ●第2世代抗精神病薬単剤処方:49%から71%へ増加
 ●第1世代抗精神病薬単剤処方:29%から14%へ減少
 ●抗精神病薬多剤併用処方:23%から15%へ減少

※第2世代抗精神病薬:リスペリドン(リスパダール)、オランザピン(ジプレキサ)、クエチアピン(セロクエル)、アリピプラゾール(エビリファイ)、ペロスピロン(ルーラン)、ブロナンセリン(ロナセン)、クロザピン(クロザリル)、パリペリドン(インヴェガ)、アセナピン(シクレスト)など(兵庫県保険医協会ホームページより)

高齢者群における2006年と2012年の処方傾向は以下のとおりであった。

 ●第2世代抗精神病薬単剤処方:64%から82%へ増加
 ●第1世代抗精神病薬単剤処方:29%から12%へ減少
 ●抗精神病薬多剤併用処方:7%から6%へ減少

研究期間中の抗精神病薬の用量は、成人群の80%超、高齢者群の90%超において、リスペリドン等価換算量6mg/日未満であった。

 等価換算量リスペリドン1㎎=セレネース2mg=エビリファイ4mg=ジプレキサ2.5mg=セロクエル66mg=ルーラン8mg=グラマリール100mg

各種向精神薬の併用処方率は以下のとおりであった。

 ●抗不安/鎮静薬:成人群70%、高齢者群43%
 ●抗うつ薬:成人群33%、高齢者群16%
 ●抗パーキンソン薬:成人群20%、高齢者群19%
 ●気分安定薬:成人群20%、高齢者群8%
 ●抗認知症薬:成人群0.3%、高齢者群16%

著者らは「大規模処方箋データより、日本の外来患者における抗精神病薬の高用量処方と多剤併用処方は、これまで考えられていたよりも広く行われていない」としている。

現在2021年ですから、また状況は刻刻と変化してきているとは思いますが、現状は酷くはないのかもしれません。また入院患者においては確実に多剤処方の率は高くなると思います。

2021年7月30日お薬

Posted by Takahide Itoh