腰痛を繰り返す人、何度か患って恐怖のある方、諦めている方など腰痛を予防したいと考えている方は多いです。エビデンスでは何をすると予防できると語っているのか。
エビデンスのある腰痛予防
さて皆さんが本当に知りたい腰痛予防について、エビデンスではどうなっているか見ていきましょう。
しかしかつての私がそうであったように、エビデンスに囚われてしまうと俗にいうエビ中(エビデンス中毒で枠外の事を考えられない)エビ固め(エビデンスで頭が固くなって使えない人間)になってしまうので、参考にしつつ注意点なんかも書いておきました。
まず2010年あたりの論文ですと以下のようになっています。
■健常者402名を腹筋強化運動+教育プログラム群と教育プログラム群の2群に割り付けて2年間追跡したRCTによると、両群間の腰痛発症率には差が認められなかったことから、腹筋強化運動は腰痛を予防できないことが判明。
■軍隊内での研究によるとコアの安定化より、簡単な心理社会教育の方が腰痛予防にすぐれている
心理教育や社会教育とは一言でいえばストレス管理でしょうか。意外なところに腰痛予防のヒントがあります。
ヒント:気になるこんな患者さんが過去に
当院に腰痛ケアで来院してくれた方で、過去に何度も腰痛を繰り返しており、コアトレーニングが必要だとういうことでピラティスの個人レッスンを数年受けていた方でした。
当然必要な背骨のコントロールが出来ていると思っていましたが、検査をすると基本のコアの動きが身についていませんでした。
得手不得手がありますから、それが絶対に悪いことではりませんし、ピラティスの教室もご商売でやっていらっしゃるので、出来ていないことをあまりしつこく正そうとするのも居心地の良い空間づくりの邪魔になるのも分かります。
ただ腰痛の再発防止を考えた場合、考えなくてはならない問題です。


簡単な心理教育って何かというと、一言で言えば「腰痛はストレスが関わっていることを理解する」ということです。単純に腰の生物的な問題だと捉えていると、物事の半分しか見ていないことになります。
腰痛予防のメタアナリシス 2016年


メタアナリシスは過去に提出された世界中の論文を、専門家が批判的吟味をして出す厳しい答えです。
2016年に初めて「腰痛予防」という観点でメタアナリシスが行われました。
この論文では5つの答えが出されています。
目的:既存のガイドラインと系統的レビューには、腰痛(LBP)の予防に関する明確な推奨事項がないため有効な腰痛予防を調査するためにを調査。
文献検索により、6133の適格な研究を特定。これらのうち23の公開されたレポート(30,850のユニークな参加者を含む21の異なるランダム化臨床試験)が選択基準を満た。
【結果】相対リスクとして提示
Steffens D, Maher CG, Pereira LS, Stevens ML, Oliveira VC, Chapple M, Teixeira-Salmela LF, Hancock MJ. Prevention of Low Back Pain: A Systematic Review and Meta-analysis. JAMA Intern Med. 2016 Feb;176(2):199-208. doi: 10.1001/jamainternmed.2015.7431. PMID: 26752509.
①教育と組み合わせた運動が腰痛エピソードのリスクを低減するという中程度の質のエビデンス(0.55倍)と、病欠に影響がないという質の低いエビデンス( 0.74倍)
②低品質から非常に低品質のエビデンスで、運動だけで腰痛エピソード(0.65 倍)と病欠の使用(0.22倍)の両方のリスクを減らす可能性があることを示唆。
③教育のみの場合は腰痛(1.03倍)病欠(0.87倍)に影響がないという中程度から非常に質の低いエビデンス
④バックベルトが腰痛エピソード(1.01倍)または病欠(0.87倍)のリスク低下させないという低品質から非常に低品質のエビデンス。
⑤腰痛に対する靴の中敷きの保護効果がないという低品質のエビデンスがありました(1.01倍)
⑥ 人間工学的プログラム(中程度の質のエビデンス)は、短期追跡時のLBPエピソード減少において対照群よりも効果的ではなかった(オッズ比1.23)
臨床経験上、注意が必要だと気づいたこと


またイスラエルの徴兵制度の中の厳しい訓練を受けている女性が来院したときも、軍隊の中でピラティスなどのコアトレーニングはあるのだそうですが、実際の動きの中でコアの動きが活かされていませんでした。
ぎっくり腰の来院時に、その女性に再教育をしたこともあります。ぎっくり腰の痛みのコントロールが、その場で理解でき、過去の軍隊での訓練の記憶と繋がり、ようやく意味を体得できた印象でした。
結果的に腰痛はなくなりました。但し言えることはピラティスのトレーニングをしたことがある人は、そうでない方と比べて習得が早いので決して無駄ではありません。
トレーニングを頭で理解して行っているか?身についているか?外見の形、回数をこなしただけか?に分かれます。森有正氏の著書が参考になります。
この統計的なデータは形だけを真似して行ったケースでもカウントされています。上記の森有正氏の解説では、「体験」だけを繰り返しているケースです。
私がそのような判別、判断、つなげて考えることに長けているのか、どの臨床家でも理解できていることなのかすら解かりませんが臨床歴が長くなることで見えてきた事実です。
ですからケースバイケースで考えた方が良いと私は思います。
腰痛を予防するには?とよく質問を受ける。残念ながらカイロプラクティック・アジャストメントだけでは腰痛予防にはならない。ただしアジャストメントを受けていれば次に腰痛になった時に軽くて済む、ということだけは確実に言える。
それでは、予防自体はどうしたら良いか?さらに最近の論文を見ていきましょう。
個別化した運動療法が腰痛予防につながる2020年の論文
科学的根拠ではカイロプラクティックアジャストメントだけで腰痛を予防しているカイロプラクターはいるのかもしれないが、残念ながら私はそのように自信を持って言えない。


むしろ受け身のカイロ治療だけでは予防は出来ないと、来院者にはっきりと伝えています。
今科学的に言えるのは、カイロプラクティックのアジャストメントは腰痛が再発するときの痛みの度合いを下げることができるという事です。
慢性腰痛の悪化・再発を防ぐには、機能的活動の改善が重要
慢性腰痛の主訴の多くが「日常の機能的活動の困難」である。(例:立つ・座る・持ち上げる・前屈など)これらの動作を改善することが、長期的な経過に大きく影響する。
慢性腰痛の人は、他の疾患よりも「単純・複雑な動作で痛みや制限が出やすい」、そのため、痛みを誘発する動作パターンを変えることが論理的な治療戦略。
個別化された運動スキルトレーニング(MST)” は長期的な改善を維持する。腰に負担をかける動作パターンを修正し、代わりに痛みの出ない動作を学習する というアプローチ。これにより治療後だけでなく 6か月・12か月でも改善が維持、SFE(筋力・柔軟性運動)よりも 長期的な機能改善が大きいため長期的な再発予防につながるエビデンス と言える。
自己管理(セルフマネジメント)がしやすく日常生活の中で正しい動作を繰り返すことで改善が維持される。自己管理は「1日の中で繰り返し練習できる=自己管理手段になる」
国際的ガイドラインの推奨も引用しながら、
慢性腰痛患者における機能活動における運動技能訓練と筋力・柔軟性運動の機能への影響:ランダム化臨床試験 |神経学 |JAMA 神経学 |JAMA ネットワーク
- 慢性腰痛では「機能改善を優先する治療」が重要
- 個別化された動作学習は、他の治療より効果が高い可能性
「この研究は“予防”という言葉を使っていないが、慢性腰痛の長期的な悪化や再発を防ぐために重要なポイントを明確に示している」
こちらの論文では、週6回の1時間のセッション、個別化した運動プログラムで6か月後、12か月後の状態が、そうでないグループと比べて改善具合が良いみたい。これも勘違いしてほしくないのは「完璧に良くなるわけではない」ということです。
個別化した運動って?
個別化した運動って、いわゆるパーソナルトレーニングですがその方の必要な運動を伝えれるかどうかだと思います。腰痛に関する運動で個々に見極めるのは、それなりに熟練度が必要ですし、しばらくは機械やAIで代用できないでしょう。
単純に歩いてください、スクワットしてくださいと指導は誰にでもできますが、痛みが出る動きを分析して、そうでない動きをするためにどこをどう鍛えるのか?代償運動が何処で起きているのか?その代償運動はどうしておきているのか?などを見極める眼力が必要です。
オンラインヨガやストリーミング再生でのレッスンもコロナ窩で飛躍的に拡大しましたが、いまのところ私がおもうに、個別化できないから、対面のレッスンに比べて確実に劣るものだと理解しています。










