2023年のコクランレビューでデュロキセチン(日本ではサインバルタ)は慢性疼痛治療に唯一安全で、効果的であるという証拠を見いだしている、という趣旨の内容の記事が発表されました。
これについて解説と私見を述べています。
小さな改善が期待できる
- オッズ比0.91 →「痛みが強いまま残る人が、デュロキセチンを飲むと 少し減る」 → 効果は大きくはないが、小さな改善が期待できる。
- SMD −0.31 →「痛みの強さが やや下がる 程度の効果」 → 小〜中等度の改善。
デュロキセチン(サインバルタ)は、痛みを完全に取る薬ではないものの、痛みを“少し和らげる”効果があることが示されています。
科学的概要 – 慢性疼痛を持つ成人の痛み管理のための抗うつ薬:ネットワークメタアナリシス – NCBI Bookshelf
ヨーロッパとの差
このblogでも以前サインバルタの慢性腰痛適応に対してカイロプラクターの立場からの意見を投稿しました。
数年経て、別の角度から結果が出てきたようです。
コクランレビュー(2023)でデュロキセチンの小〜中等度の効果が示されたものの、欧州では慢性腰痛への適応は依然として認められていません。過去に適応が見送られた経緯もあり、現時点で方針に変化はありません
欧州医薬品庁(EMA)は、 慢性腰痛に対するデュロキセチンの適応追加を認めなかった 過去がある。
理由は:
- 効果が小さい
- 臨床的意義が不十分
- 副作用リスクとのバランスが取れない
コクランレビュー(2023)も「効果は小さい」これでは規制当局は動かない。欧州は慢性痛の薬物療法に非常に慎重で、特に抗うつ薬は「痛みの一次治療」としては推奨されにくい傾向にあります。
このデュロキセチン(サインバルタ)は長期的な有効性・安全性の確実な証拠がありません。
“現在、いかなる抗うつ薬の長期的な有効性や安全性について信頼できる証拠はありません。”
多くの研究が短期(平均10週間)であることも指摘しておく必要があります。
また精神疾患のある患者が除外されている(実臨床と乖離)こと、繰り返すと、効果は「小さい」ため、 欧州の規制当局が適応追加を判断するには弱い。
カイロプラクターの意見
各国の人権意識、社会状況、医療システム、医療資源の差があるので一概には言えないことを前提として。
私個人は欧州医薬品庁(EMA= European Medicines Agency)と同じ立場で、副作用と効果のバランスが取れていないので否定派です。
カイロプラクティックの臨床経験上でもサインバルタを服用中の腰痛患者のケアをしたこともあり、疑問に思っていました。
抑うつと痛みは関連しています。カイロプラクターになるための教育の中で、人間そのものを診る、全体を診ることの重要性は終始教えて貰ってきました。
カイロプラクティック臨床を続ける中で、腰痛のケアを考えてもエビデンスがその必要性を裏付けていきました。
慢性疼痛がある方をケアするには、肉体的なこと、心理的なこと、社会的なこと、人間関係、文脈を統合的にケアする必要があります。
サインバルタの効果は全身性に受容体があるのですが、痛みとの関連では脊髄後角に作用して痛みが脳に伝わることにブレーキを掛ける役割です。


このブレーキ装置は人間が痛みをコントロールする上で必要な装置で、痛みをさほど感じていない方はしっかり働いている装置です。
このブレーキ装置を補強する役目がデュロキセチン(サインバルタ)です。
根本解決には
言うなればサインバルタは対処療法の一部と言えます。
根本的解決する問題は
- 末梢で起きている痛み(例えば腰の筋肉)の痛みの発生は押さえない
- 本来のブレーキ機能の中枢、青斑核、縫線核の活動を高めていない
- 痛みが発生する動作が改善されていない
- なぜブレーキ中枢の活動が落ちているのかが不明
これらのことは、社会的なこと、心理的なこと、精神的な事、どうとらえているか?などの結果おきている人間の状態です。
私は、人間が持っている正常な反応として慢性疼痛が出ていると感じています。
人間の回復は、社会の回復にも繋がっていると信じてカイロプラクティックの臨床を続けています。













