MENU
伊藤孝英
カイロプラクティックそのまんまサンシャイン院長
RMIT大学(ロイヤルメルボルン工科大学)日本校卒業。B.C.Sc(カイロプラクティック学士), B.App.Sc.(応用理学士)。従来の筋骨格系障害としての腰背部痛という観点から、生物社会心理的要因としての腰背部痛へとシフトチェンジしてマルチモデルで腰痛ケアをしています。鬱・不安などの気分障害で過度な薬物療法に疑問をお持ちの方もお気軽にお問い合わせください。
そのまんまサンシャイン公式ホームページ
筋骨格系の症状はもとより代替医療のセカンドオピニオンもお気軽に聞きにきてください。https://chirosonomanma.com

腰部硬膜外ステロイド注射は背骨骨折リスクが増加

背骨と注射器

日本の医療機関で下肢の痺れや腰痛で行われる腰部硬膜外ステロイド注射。腰痛が酷い患者さんからも何回かお話を伺ったことがあります。

この硬膜外ステロイド注射は、どうやら椎体骨折のリスクが有意に上がっていくようなので、何回か注入している腰痛患者さんは参考にしてみてください。

目次

ステロイドが骨の形成の邪魔をする

看護師と注射器 イメージ
1本ごとに椎体骨折のリスクがあがる

米国・ヘンリーフォードウェストブルームフィールド病院のShlomo Mandel氏らの研究。

腰部硬膜外ステロイド注射が椎体骨折の増加と関連 1本ごとに1.21倍リスク増える
対象となった患者さんは、ヘンリーフォード ウェストブルームフィールド病院における椎間板障害などの症例5万345例(うち1回以上の腰部硬膜外ステロイド注射を受けていた患者は3,415例)
【分析した結果】
・生存時間分析の結果、注射回数の増加は骨折リスクの増加と関連していた。
注射が1回増えるごとに、骨折リスクは1.21倍増加した

Mandel S, Schilling J, Peterson E, Rao DS, Sanders W. A retrospective analysis of vertebral body fractures following epidural steroid injections. J Bone Joint Surg Am. 2013 Jun 5;95(11):961-4. doi: 10.2106/JBJS.L.00844. PMID: 23780532.

全身にある「骨」ですが体の組織ですから日々コツコツと生まれ変わっています。造骨細胞(ぞうこつさいぼう)が骨を新しく作り、古い骨を破骨細胞(はこつさいぼう)がお掃除していきます。このバランスがとれているので、われわれは丈夫な骨を維持できているのですが、ステロイド剤が造骨細胞の活動を邪魔してることが指摘されています。

ステロイドが骨形成を阻害することは以前から示唆されていたようで、今回のこの研究も、骨形成阻害仮説を裏付けるものだとしています。

短期的には効果が望める硬膜外ステロイド注射

スケルトンが頬をもたげる
だとすると腰痛だけの問題でなくなってくるね?よーく考えよう。

硬膜外ステロイド注射は、腰椎には6週間以内の短期的な効果は期待できるものの、長期的な緩和の証拠は限られている。頸部および腰部の経椎間孔硬膜外ステロイド注射のエビデンスは、神経根の痛み(手足の痛みがある時)の管理における長期的な改善については中程度信頼できる。

Abdi S, Datta S, Trescot AM, Schultz DM, Adlaka R, Atluri SL, Smith HS, Manchikanti L. Epidural steroids in the management of chronic spinal pain: a systematic review. Pain Physician. 2007 Jan;10(1):185-212. PMID: 17256030.

ある程度短期的な痛みのコントロールは期待してもいい硬膜外ステロイド注射ですが、1.5か月以上効果は期待しないようにしましょう。

特に繰り返して腰痛になっている方、痺れが出ている方は、前回痛みが簡単にコントロールできたからといって、何度も硬膜外ステロイド注射に頼ろうとする姿勢は疑問です。

オーストラリアでは使用を見合わせている

硬膜外ステロイド注射は坐骨神経痛患者の費用対効果の高い治療法とされてきたが腰椎や仙骨への硬膜外ステロイド注射に関する二重盲検比較試験はなく、坐骨神経痛に対して有効性を示す根拠がないためオーストラリアでは使用制限を検討。

局所麻酔剤を使うにしろステロイドを使うにしろ、現時点では硬膜外ブロックが有効だという明確なエビデンスは存在しませんので、この事実を基に皆さんが判断していくことが賢明です。なかなか難しいけど。

代替医療の立場としては、地道に背骨、骨盤、脚などのリハビリテーションを行い、どの部分の使い方に癖があるのかを理解しておくことが、再発予防には必要だということを強調しておきます。

そのまんまサンシャインにおとづれる人も、ステロイド注射を何本かうち込んでからいらっしゃる方がおられます。3本くらい打っている方も少なくないです。注射を繰りかえしていたとしても、将来絶対に椎体骨折になるわけではありませんが、リスクが上がることはなるべく避けた方が賢明です。

ステロイドはなくても回復していきますから、ご安心ください。適切な関節運動、適切な筋の張り、適切な運動を取り戻す必要があります。その動きを取り戻していくことが、他の部分、社会面への影響もあるものだと私は思います。

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!
目次