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伊藤孝英
院長
ロイヤルメルボルン工科大学健康科学部カイロプラクティック学科日本校卒業。B.C.Sc(カイロプラクティック学士), B.App.Sc.(応用理学士)。従来の筋骨格系障害としての腰背部痛から生物社会心理的要因としての腰背部痛へとシフトチェンジ。鬱や不安障害にも着目したマルチモデルでヒューマンケアしています。

老人の曲がった背骨(亀背)について

曲がった背骨 イメージ
曲がった背骨 イメージ

老人の極端に曲がった背骨は亀背(きはい)と呼ばれ、生活の質の低下、身体機能の低下、健康関連の質の低下を引き起こします。

医学的にはHyperkyphosis=ハイパー・カイホーシス=過後彎(かこうわん)という状態を指します。

加齢に伴うハイパー・カイホーシスは、一般に胸椎のコブ角の曲率が40度以上であると定義され、加齢とともに進行し、高齢者の最大40%に影響を及ぼします。

コブ角のレントゲン上での計測方法
体系 骨・関節の画像診断Ⅰ p156より抜粋 これは腰椎と胸椎が作るコブ角
目次

亀背について解っていること:それは生活の一部になっていること

老人の散歩
診断基準がない?

背の曲がった老人を見かけます。医学的には背骨の一部が台形に骨折する圧迫骨折が原因とする説がありますが、かならずしもそうではないようです。

このページではエビデンスを参照しながら、カイロプラクティック、運動療法、認知行動療法の臨床経験を基に考えられることを綴っていきます。

加齢後弯症の原因は不明だが幾つかの要因

加齢後弯症(亀背)の原因を書きだしたチャート
考えられている要因

胸椎後弯症の原因の一つに脊椎の圧迫骨折がありますが、60-70%の人には見つかりません。

高齢者は、加齢に伴う筋肉量の減少、筋力、筋質、骨ミネラル密度、結合組織の脆弱性の増加により、後弯症を発症するリスクが高くなる可能性があります。

さらに、女性は男性よりも早く後弯症を発症し、一般的に後弯症の程度が高くなります。

女性は、姿勢の悪さ、結合組織の変化、靭帯および筋緊張の喪失、背骨を反らす筋肉の質の低下、および強度の低下、骨塩密度の低下などの関連要因により、後弯症のリスクが高くなる可能性がある。

亀背のデメリット

  • 呼吸機能の低下
  • 背骨の機能低下による活動性の低下
  • 転倒骨折のリスクが高まるかも
  • 圧迫骨折のリスクが高まる
  • 生活の満足度が低くなる
  • 後弯症が大きくなると死亡率が高くなる

いま考えられている亀背になるリスク要因

  • 握力の低下があると後弯も大きくなる
  • 過去に骨折があると後弯が進行するリスク高くなる
  • 骨ミネラルが低いと後弯症の進行リスクあがる
  • 筋肉のパフォーマンスに影響している可能性大
  • 前縦靭帯の骨化が、より高度な後弯症と関連している
  • 骨粗鬆症のグループは、より高い後弯角とより低い背部伸筋強度。
  • 後弯角の度合いにより体幹の位置感覚が悪くなる
  • 背骨を反らす筋密度の低下は、脊柱後弯症のリスクの増加と関連
  • 脊椎伸筋の脂肪の増加は、筋肉の質と後弯の程度に影響を与えます

両親が後弯症を患っている高齢者は、家族歴のない人よりも統計的に後弯症を患う可能性が高かった。

不活性化、体調不良、脂肪塊の背筋への浸潤、背筋能力の低下、筋力の低下、脊椎安定性持久力など、筋肉にさまざまな有害な影響をもたらす可能性がある。

これらの要因はすべて負荷の負担と痛みの増加を引き起こし、後弯症のリスクを高めます。

また遺伝学、椎間板疾患、および骨粗鬆症によって、加齢に伴う後弯症にかかりやすくなる可能性があります。

脊柱後弯症の高齢者における筋電図を介して、脊椎伸筋の筋力と持久力、および脊椎伸筋の電気的活動との関連を調査するために、将来の研究が必要。

Roghani T, Zavieh MK, Manshadi FD, King N, Katzman W. Age-related hyperkyphosis: update of its potential causes and clinical impacts-narrative review. Aging Clin Exp Res. 2017 Aug;29(4):567-577. doi: 10.1007/s40520-016-0617-3. Epub 2016 Aug 18. PMID: 27538834; PMCID: PMC5316378.

診断基準はない… 2007年時点

脊柱の高度後湾(亀背)は高齢者の20~40%に見られると推計されるが、2007年現在では診断基準もなければ原因も転帰も明らかでない。

一部の医師は骨粗鬆症による椎体骨折が原因と考えていますし、骨粗鬆症に治療に終始しています。

しかし近年の研究で明らかにされたのは、高度後弯(亀背)の多くは椎体骨折が認められない。原因は不明であるためより高度な研究が必要である。

Kado DM, Prenovost K, Crandall C. Narrative review: hyperkyphosis in older persons. Ann Intern Med. 2007 Sep 4;147(5):330-8. doi: 10.7326/0003-4819-147-5-200709040-00008. PMID: 17785488.

亀背だけでなく腰痛疾患も多因子性の病態として扱うべきでしょう。考えてみればしごく当たり前のことですが、普段の姿勢や性格的に猫背気味の方が落ち着くとか、数値で測りづらい要因もあると思います。

医学は基本的には一部分を切り取って原因を探しますから、亀背のような生活習慣が大きく関わるものは、なかなか特定できないのは否めません。

医学的には未だに原因は不明 2009年の研究

普通に考えて、良くない姿勢の時間が長いからであろうことは予測できますが、医学は特定の原因を病気の原因として考えるので、原因が不明だという書き方になります。

複数のシステム障害の影響が蓄積され、環境変化への対応が困難になると発症

脊柱の高度後湾(亀背)は高齢者の不健康と関連がある。

したがって高度後湾を老年期症候群、すなわち人体の複数のシステムが障害され、その影響が蓄積されて環境の変化への対応が難しくなると発症する、多因子性の病態と認識すべきである。

(Ann Intern Med. 2009 May 19,Deborah M Kado, MD, MS,1 Li-Yung Lui, MA, MS,et at al) https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC2711520/?tool=pubmed

カイロプラクティックの概念ではサブラクセーションコンプレックスといいますが、さまざまな要因が複合的に絡み合って形成されています。

脊椎矯正で改善すると言うデーターはいまのところない

残念ながら脊椎マニピュレーションで亀背が回復するうというデーターはないです。ヨガなどを取り入れた運動療法を定期的に行い、カイロプラクティックでサポートしていけば回復していく可能性はあるとは言えますが、能動的なアクティブケアが大きなウエイトを占めるため本人の意思が大きく関わってきます。

2021年の比較研究 運動介入で変化はあるか?

2021年になると背骨が急速に曲がってきた高齢者を対象に運動介入が行われ変化があるのか観察されました。

この研究では特に低機能グループ、つまりもともと運動機能が低下したグループに特にメリットがあったよです。背骨の曲がりの改善の可能性はあります。

過脊柱症および低身体機能の高齢者における、運動介入後の身体機能の変化の二次分析
研究の主な目的は、身体機能が低く、後弯症が多い高齢者を対象に、
①3か月間の進行性の高強度の標的後弯運動と姿勢トレーニング介入後の身体機能の変化を調査
②健康関連QOL、脊椎の強さ、脊椎の湾曲の変化を調査

専門研究センター(SCOR)後弯ランダム化試験のこの二次分析では、介入を完了した後弯症の高齢男性と女性101人が低機能グループ(LFG)と高機能グループ(HFG)に分けた。
ベースライン特性を低機能グループと高機能グループで比較。

身体機能、生活関連QOL、脊椎強度および脊椎湾曲(脊柱後弯症および脊柱前弯症)の介入前後の変化スコアをグループ内およびグループ間で調査。患者が積極的に意思決定してプログラムに参加したか?有害事象があったか?は低機能グループと高機能グループでそれぞれ調べられた。

(26%)の高齢者は低機能グループであり、平均Short Phyiscal Performance Battery(SPPB)9.62(SD = 1.17)ポイントでした。
ベースラインでは、低機能グループは高機能グループより年上。低機能グループより多くの痛みを経験し、さらに悪い身体機能とHRQOL持っていた。および同等の後弯をもっていた。

Short Phyiscal Performance Batteryは、低機能グループで0.62ポイント、高機能グループで-0.04ポイントを変更しました。

歩行速度は低機能グループで0.04(95%CI:-0.02から0.10)m / s変化しました。
後弯症は両方のグループで等しく改善しました。
介入の遵守は、低機能グループで83%、高機能グループで79%でした。
どちらのグループにも有害事象はありませんでした。

身体機能が低く、後弯症のある高齢者は、後弯症を対象とした介入後に身体機能を改善する可能性があります。身体機能の低い高齢者は、対象を絞った高強度の後弯運動と姿勢トレーニングに安全に参加できます。
この観察結果は、より大規模で十分な能力を備えた研究で確認する必要があります。

Gladin, Amy et al. “Secondary analysis of change in physical function after exercise intervention in older adults with hyperkyphosis and low physical function.” BMC geriatrics vol. 21,1 133. 22 Feb. 2021, doi:10.1186/s12877-021-02062-8

健常者にも同じ割合で変形性脊椎症、骨粗しょう症、圧迫骨折

亀背の原因と考えられる、変形性脊椎症、圧迫骨折、骨粗鬆症も健常者に普通に存在する。

■腰痛患者200名と健常者200名のX線写真を比較した研究によると、両群間に変形性脊椎症、骨粗鬆症、椎体圧迫骨折などの異常検出率に差は認められなかった。したがって老化による解剖学的変化が腰痛の原因とは考えられないと結論。

椎体形成術を受けても受けなくても差は無い

ちなみになんですが、潰れた背骨にセメントを入れて、再形成する手術も、こと痛みに関しては保存療法と差はないです。

メディカルリバースが叫ばれるようになったキッカケの研究です。
骨粗鬆症で椎体が骨折した人達を椎体形成手術した群と、カイロプラクティックのような保存療法の群に分けて比較した統計研究です。

■有痛性の骨粗鬆症椎体骨折患者131名を対象としたRCT(ランダム化比較試験)によると、経皮的椎体形成術群と対照群(保存療法)を比較したところ、両群間の疼痛および活動障害に差は認められず、椎体形成術の適用を支持する結果は得られなかった。

脊椎疾患では手術というドラマ、手術という儀式が絶大な効果を発揮することが多々あります。骨セメント療法もそのひとつだったわけですが、ランダム化比較試験によって保存療法と同じ効果しか得られないことが明らかになった今、はたして貴重な医療費を費やしてまで続ける価値があるでしょうか?

健康保険料を支払っている国民一人ひとりが考えてみるべきだと思います。

先日湿布薬の外来渡しに制限がかかりましたが、いろいろなことに無駄が多い医療費。手術という面でも多々無駄があるのかもしれませんね。

手術はやはり、お金が沢山動く手法です。医療費や保険料が上がったと嘆いても遅いので、一つずつ無駄をなくしていく必要があると思います。

幾人か施術をさせていただいている施術者の感想

亀背はなおりますか?ときかれますが、少しずつ改善するとお答えしています

カウンセリングの様子

臨床的には運動療法は必須だと考えていますが、亀背の方に反る運動を毎日行ってもらうように提案しても、本人にとっては非常に無理のある姿勢ですから率先して運動療法を日々ご自身の意志で続ける方が少ないのが当院の現状です。

来院時に比較的疲労感が少ない場合は長い時には15分ほどの運動療法を加えます。50歳代以下では簡単な動きも80代、90代の方になると非常に難しいという感想を仰います。

亀背になるような動きを数十年かけて作って来たわけですから当然と言えば当然です。

2016年7月の時点では様々な方法で、治療院内では亀背から解放される方もおられます。繰り返し運動療法をしていくことで少しでも長い時間亀背から解放される姿勢を獲得していく必要があると思います。

個人差が大きいところだとおもいますが、このページの冒頭でお伝えした「亀背自体がその方の生活そのものである」ということが変化するのが難しいところだという印象です。

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