サインバルタが腰痛治療に2016年から処方可能になりました。
世界的には議論の残るサインバルタの腰痛への適応ですが、決して万能ではないことをお伝えする必要を感じました。
この記事を読んでいる貴方も慢性腰痛に悩まされているのかもしれません。
カイロプラクティックの症例を通じて見ていきます。
目次
カイロプラクティック症例報告
さてタイトルのサインバルタが腰痛に万能ではないと感じた症例報告の理由は
当院へ慢性腰痛の治療へ来た方の中に、もともと抑鬱症状軽減の目的でサインバルタ服用をしていた方がおられました。
サインバルタが腰痛に効果があるのならば、なぜ腰痛治療に来る必要があるのか?
この方は別件で3年前からサインバルタを服用しているが2年前から腰痛になったままだ。
この方はサインバルタを3年間服用したまま、2年前からの慢性腰痛の治療でカイロプラクティックに来たことになります。
順を追ってみていきましょう。
初めての来院時の痛みと状態
- 以前鬱の診断を受けていて、サインバルタは3年前から服用している
- 3年前に抑鬱症状に対して認知行動療法も行っている
- 腰の上の方と、背中が張りやすい
- マッサージでは1.2日で症状は戻る
- 痛みとしては2/10くらい
- 首は重い感じで背中は硬く張ってくる感じ
- 不眠傾向にある
- 自転車通勤や自宅での腕立て伏せなど週200分の運動はしている
会社の保険制度がしっかりしていて、認知行動療法も受けられていました。
認知行動療法は腰痛にも効果がありますが、何故なのか?
検査では胸腰移行部の屈曲制限(体幹を曲げるのが苦手)
- FFDは-5cmと前屈の柔軟性は十分にある
- 筋肉に粘性がある
- 背骨の胸椎と腰椎の移行部付近に屈曲の制限がある。これは反りっぱなしの状態を意味します。
- 脊椎マニピュレーション
- Bigenu Sacral Deltoid Modified 脊柱全体の屈曲を促す
- ロールup、ロールdownの練習
- 猫のポーズとコロンコロンする運動を処方する
- 5回の来院で腰の状態は安定して快適な状態を維持できるレベルまで回復
この方は認知行動療法の経験があったから、運動療法を認知行動療法の枠組みで行っていきますという一言で、概略を理解してくれました。
宿題を考えて毎日行ってもらうことがすんなり実行できたということです。
状態としては最も多い腹筋群の筋力低下の結果、下部腰椎が伸展位で固定されてしまっている状態です。脊柱を一つ一つ動かす練習はピラティスでも行っていない限りなかなか行いません。
保険制度の中での認知行動療法は本気度が低い傾向にあるような気がします。
サインバルタが腰痛の予防になるとは思えませんが、少なくとも腰痛の改善には役立たなかった症例の一つだと言えます。
自分はどの状態かを把握する
サインバルタは「腰の痛みを拡大解釈している脳活動を抑える」ことを目的としています。
慢性腰痛は現在、脳が痛みを作りだしていて無限ループになってしまっていると医学では考えられています。
この理論では確かにもともと抗うつ薬であったサインバルタを服用すれば腰痛が減ることといえます。
実際に腰に問題はないのか?
しかし腰自体の侵害受容器(痛みを発する神経)が発動していることも確かであり、一般的に病院では腰の触診を行いません。
脳の過活動が原因なのか、それとも実際に腰が痛んでいるのが主な原因なのか、はたまたその両方が原因なのかは臨床現場の人間でないと判断できません。
- 脳の痛み領域が過活動で腰痛が繰り返されている場合はサインバルタや認知行動療法が有効
- 腰の侵害受容器の要因が高比重ならば、実際に腰の機能向上を行わないと脳へ行く痛み情報量は減らない
サインバルタに関する詳しい統計などを用いた考察はドクターシミズのひとりごとというブログをご一読されると良いとおもいます。
ヨーロッパでは腰痛への適応が見送り
サインバルタ(抗うつ薬)の慢性腰痛への適応が決定 | WHO基準カイロプラクターが伝える健康情報
欧州で承認が見送りになっているサインバルタ(デュロキセチン)という抗うつ薬(SNRI)が慢性腰痛の治療に厚生労働省が承認をしたようです。 サインバルタ(抗うつ薬)が…
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